──ではここから、ニュー・アルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』についてお聞きしたいと思います。2年ぶりの新作となりますが、制作を始めるときにテーマやコンセプトなどはあったのでしょうか。
中野いや、まったくなかったです。川島君が2012年のはじめに脳腫瘍の手術をして、その後はまず音楽制作ができるかどうか、確認しながらの作業だったので。あまり深く考えず、歌ってみるとか弾いてみるとか、自由に思いつくままにやるような感じでした。
──川島さんの体調面でも決してラクな制作ではなかったと思います。でも、冒頭の「SHINE」からまぶしい光が差し込むような、あたたかさと力強さを感じました。
中野それは僕たちが求めているもの、願望ですよね。川島くんの生命がどうなるのかもわからない状況で、これが最後かもしれないとか、アルバムを最後まで作りきれるのかっていうさまざまな不安が根深くあったけど、そこで暗く重い音楽を作りたいとは思わなかった。
川島この世には人が見てはいけない深い溝があって、それを見たら吸い込まれて抜け出せなくなってしまう気がするんです。僕は病気のこともあり、その深い溝を身近に感じる日常を過ごしていたので、そこで逆に目線をあげることで“空”や“太陽”のような表現が出てきたんだと思います。
中野そうやって曲をいくつか作っている途中で、“花”という今作のモチーフが生まれてきました。花というのはその姿形に生殖器をはじめとするさまざまな機能を持っていて、比較的短い時間に生まれて死んでいく姿を人に見せてくれる。そこには儚さや美しさ、力強さなど、いろんな摂理を見いだすことができると思うんです。その生命のありようをアートフォームとして描ききりたいという思いがありました。
──確かに、どの曲も命のきらめきを謳っているように感じます。このアルバムを作り終えた今、どんな未来を思い描いていますか。
川島まだ見えない部分も多いですけど、それは自分が切り拓いていくものなので。まずはこのアルバムをみんなに聴いてもらって、ツアーで体験してほしいですね。僕の人生はこのバンドが半分以上を占めていますし、この先も自分たちがいるということを音楽で証明して、聴いてくれる人たちに報告していきたいと思います。それが僕の生きてきた理由、自分たちの使命だと思っています。
中野僕らの音楽を聴いてくれる人に何を与えられるのか、ということは常に考えていて、「創りたいものを創って終わり」ではなく、受け手の気持ちというものを大事にしているつもりなんです。100人いれば100通りの感じ方があると思うので少しでも多くの人に聴いてもらいたいし、そんな僕らの想いも合わせて聴いてもらいたいですね。