小さなお猪口(ちょこ)の内側に塗られた、玉虫色に光る絵の具のようなもの。これは、江戸時代の女性たちが主に口紅として化粧に使っていた、伝統の「本紅(ほんべに)」です。紅(べに)なのに赤ではなく、玉虫色に見えますが、これは純度が高い赤の色素が光を吸収してしまい、反対色である緑色の輝きを放つから。不思議なことに、水を含ませた筆で溶くと、鮮やかな赤色に一瞬で変わります。
本紅は、紅花の花びらから赤の色素だけを抽出し、ていねいに精製されて作られます。もともと紅花に含まれている色素は、99パーセントが黄色です。わずか1パーセントの赤の色素を取り出すためには、驚くほどの手間と時間がかかります。今では、江戸時代と同じ製法で本紅を作る職人は、日本にたったひとり。180年以上の歴史を持つ紅屋・伊勢半本店が、その技術を伝えています。
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玉虫色に光る「本紅」 |
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純度の高い赤の色素が光を吸収してしまうため、反対色の緑色の輝きが浮かび上がる。 |
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紅の採取 |
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紅の濃縮液に酸を加え、赤の色素を分離して沈殿させる。それをせいろに流し込み、水分を切る。 |
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