Xperia Z1(エクスぺリア ゼットワン)は、先端の技術と思わず手にとってみたくなる魅力を注ぎ込んだソニーのフラッグシップスマートフォンです。携帯端末という枠を超えて感性を刺激する製品はどのようにして生み出されたのか。開発者の言葉からXperia Z1の秘密と魅力を解き明かします。
2013年春に登場したXperia Zのコンセプトを受け継ぎつつ、大幅な進化を遂げたXperia Z1。ソニーのフラッグシップスマートフォンに求められる性能、美しさとは?ソニーモバイルのXperia Z1開発者に話を聞きました。
──「X-Reality™ for mobile(エックスリアリティ フォーモバイル)」や「BIONZ®(ビオンズ) for mobile」など、Xperia Z1はソニーを代表するさまざまな技術を搭載しています。新たに搭載された技術はXperia Z1の体験に何をもたらすのでしょう。
松村:Xperia Z1はXperia Zのコンセプトを継承し、スマートフォンの次のステージを目指したプレミアムフラッグシップモデルです。スマートフォンは通話だけでなくカメラ、映像、ゲーム、音楽といろいろな楽しみかたがあります。その一つひとつで今までのスマートフォンの枠を超えた体験を実現するために、根元を見つめ直して機能の原点に立ち返ることから開発がスタートしました。ソニーには映像、音、カメラ、小型化とさまざまな分野の先端技術があります。液晶テレビ ブラビアで磨きあげた超解像技術を備えた「X-Reality for mobile」、デジタルスチルカメラ サイバーショット™やデジタル一眼カメラ α™の表現力を支える画像処理エンジン「BIONZ® for mobile」、そして多彩な音楽体験をクリアな音質で提供するWalkman アプリ。Xperia Z1には、ソニーがもつ技術のエッセンスを注ぎ込んでいます。
──Xperia Z1は機器のジャンルを越えて、ソニーの総力を結集して作りあげたスマートフォンなんですね。
松村:朝起きてメールやニュースをチェックしたり、移動中には昨晩録画しておいた番組を見たりと、スマートフォンは朝起きてから寝るまで、いつも身近にある手放せないツールになっています。手元にあってすぐにいろいろなことができるからこそ、スマートフォンの体験は上質なものでなければならないと思っています。端的な表現なのですが、Xperia Z1は「すごいスマートフォン」を目指しました(笑)。「すごい」にはさまざまな意味が込められていますが、暗い室内でも思いどおりの写真が撮れる、見慣れた映像だけど精細な表現でつい見入ってしまうなど、“今まで”を超える体験を通じて「すごい」と思わず声を出していただける。性能面で最高峰なのはもちろんですが、使ったときに笑顔になってもらえる、そんなスマートフォンでありたいという意味を込めています。
──Xperia Z1は、一枚板を連想するXperia Zのデザイン継承しつつも、独特の個性が印象的です。
日比:Xperia Zの「すべてにバランスがとれたデザイン」“オムニバランスデザイン”とシンプルな“板”のフォルム。それらのコンセプトは引き続きXperia Z1でも採用しています。重心のないデザインによって、縦・横と持ちかたを変えても、常に違和感なく操作できます。その考えかたは継続しつつ、デザイン的な表現においてはジャンプアップを目指しました。
そのシンボルとなるのが側面を囲むアルミフレームです。アルミをはじめとする金属は電波をさえぎる性質があるため、通信機器で全周を囲む構造は不可能とされていました。じつは以前から全周フレームをセルラーアンテナとする研究を社内でおこなっており、今回のタイミングでそれがついに実現しました。アルミフレームはXperia Z1のデザインを構成する大事な要素のひとつですが、アルミフレームのアンテナが技術的に可能になったからこそ、Xperia Z1のデザインが生まれたと言っても過言ではありません。強固な金属製フレーム兼アンテナが全周を囲むことで、頑丈さ、デザイン性だけでなく、電波通信が安定するという効果もあります。
片山:カラーリングもXperia Zで好評だったブラック・ホワイト・パープルの3色を採用しています。もちろんまったく同じ色調というわけではなくXperia Z1のデザインコンセプトに合わせた表現としています。「光が作り出す情景」をカラーコンセプトに、ブラックは無限に広がる宇宙の中で浮かび上がる惑星の陰影を、ホワイトは光を柔らかく反射する雪や氷の輝きを、パープルは夜から朝へと移り変わる時間、マジックアワーと呼ばれる空の色を表現しています。
3つのカラーリングはアルミとガラスが持つ素材の質感とXperia Z1の形状をプレーンな状態で味わってもらうため、できるだけピュアな色味と発色を追求しました。ブラックは余分なエフェクトを排除し、吸い込まれるような宇宙のように深い黒色を。ホワイトは雪が光をフワッと反射するような純粋さのある白色を追求して、フレーム部分はアルミならではの質感をできるだけそのまま活かした素材の色としています。パープルはアルミフレームと質感をそろえるために、背面のガラスに微細な金属粒子を薄く塗装して深みを与えています。そのうえで金属特有の冷たい輝きとの相性もよく、男女問わず使っていただけるようにわずかに青みがかったパープルとしました。
──アルミというと金属特有の硬質な雰囲気を思い浮かべますが、Xperia Z1はシャープさだけでなく見る角度によっては柔らかなイメージもあります。角度ごとにたくさんの表情が感じられるユニークなデザインはどのように実現したのでしょう。
日比:アルミフレームは削り出し加工をおこなうことで、イメージしていた形をそのまま立体化することができました。これが樹脂製のパーツですと、型を使う成形加工の関係で、ぐるっと回り込む形状のものはひとつのパーツで製作することが困難なんです。しかし、彫刻のようにアウトラインを整えていくアルミの削り出し加工によって、側面を断ち落としたソリッドな風合いと、ボディの四隅のエッジ部分を完全な球体のラインに仕上げることができました。このエッジ部分だけを見ても、Xperia Z1のアイデンティティーになっていると思います。
片山:カラーリングについて言うと、アルミフレーム部分は「ダブルアルマイト加工」を施しています。アルマイト処理は化学反応のひとつで、アルミの表面を酸化(錆び)から守ると同時に、ミクロン単位での精密な着色が可能です。異なる色と質感をシームレスに加工でき、それでいてシャープな色調の変化は、金属であるアルミならではの表現とも言えますね。また、アルミの地色を活かしたホワイトモデルのフレームは、微細な粒子で艶を消すサンドブラスト加工と艶を残すなめらかな加工とを併用することで、エッジ部分と平面とで輝きに違う表情をつけました。着色とは違うフワッとした光のイメージをあらわせたと思います。
日比:アルミの頑丈さは毎日持ち歩く道具にぴったりなだけでなく、金属ならではの質感と高い造形精度を追求することが可能です。Xperia Z1の全周を囲むアルミフレームはアンテナという必要不可欠なパーツであるとともに装飾性もあります。アルミの削り出しフレームを採用したことで、Xperia Z1は意匠が機能の一部となり、ハイエンドカメラのような、道具のたたずまいとも言えるものを表現することができました。Xperia Z1を一度手にとって、オムニバランスデザインとアルミの質感を肌で感じてみてください。余分な要素をなくしたシャープな造形と金属独特のなめらかな手ざわりから、 Xperia Z1のもつ安心と性能を実感することができるでしょう。
Xperia Z1は1/2.3型の“Exmor RS™ for mobile”センサーやF2.0の明るいソニーGレンズを備え、最新のコンパクトデジタルカメラに匹敵する高い表現力を備えています。高性能なカメラ機能はどんなコンセプトから生み出されたのでしょう。
亀崎:“写真”にはいろいろな種類がある、と思っています。たとえば高性能なカメラの表現力を駆使して景色に心情を写しこんだ“作品”、特別なイベントやシーンを記録した“思い出”、そして身近な変化やふだんの日常を保存した“毎日の記録”といったように。スマートフォンでは、いつも身近にあることから“毎日の記録、ライフログ”として撮影することが多いですが、“思い出”の写真もきちんと美しく撮れるようにすることがXperia Z1で目指したコンセプトです。
色あせない思い出を残すためには、数年後にもう一度見ても満足できる性能の「カメラ」が必要になります。動きの激しい被写体をとらえてもブレず、暗い室内でも明るく自然な発色を再現できる。そしてノイズが少なくシャープな画質のズーム。これらを実現するためにXperia Z1はカメラ設計の原点に立ち返りました。ソニーにはαやサイバーショット、デジタルビデオカメラ ハンディカム™と最先端のカメラ技術があります。スマートフォンの枠を超えたカメラを実現するためにXperia Z1はソニーの総力を結集しました。スマートフォンとカメラの技術交流は以前からありました。しかし設計の前段階から、レンズ、イメージセンサー、画像処理とカメラの根本部分からコラボレーションをするのはXperia Z1が初めてになります。
──スマートフォンとデジタルカメラのコラボレーションは、ともにカメラの開発をおこなう人間どうしとはいえ、開発手法やバックボーンの違いなど、苦労もあったのではないですか?
松下:私は今までサイバーショットとハンディカムでレンズと画像処理の設計を担当していました。Xperiaの開発にはXperia Zから携わり、Xperia Z1では、レンズやセンサーを新規開発する段階から一緒に議論しています。サイバーショットもハンディカムも誕生してから長い年月が経過した成熟した機器で、カメラに投入する技術やカメラそのものの開発は年単位の大きなスパンで作成されたロードマップに沿って計画的におこなわれます。
亀崎:スマートフォンの開発は計画の立てかた、プロセスが異なります。技術の進化はとても速く、求められる機能もダイナミックに変化します。最初にテーマやコンセプトを決めて、後は状況や機能のニーズに変化のあるたびに臨機応変に対応しつつ、開発を進めます。ソフトウェアの世界でよく「アジャイル」(agile=機敏な、俊敏な、という意)と呼ばれる開発手法です。開発チーム内の意思の疎通は相手の目を見ればわかるというようなレベルで、進化のスピードに合った高い機動性をもっています。
松下:チームに加わった当初は時間の流れの違いにあぜんとしましたね。開発計画の変更は文字どおりの日常茶飯事で、今日決定したことを明日またアップデートするというくらいで(笑)。この2つの文化が歩調をあわせて緊密に連携できるように、スマートフォンとカメラの開発の良いとこ取りともいえる体制を作り上げることができたのが、Xperia Z1のカメラ機能開発における鍵になりました。
開発の最中からよくチームの仲間に言っていたんですが、開発計画というのはドライブ旅行の計画に似ているんです。たとえば、デジタルスチルカメラの開発では、出発前にどの交差点で曲がるのか、どこから高速道路に乗るのかお昼はどこで食べるのか、までを緻密(ちみつ)に計画します。スマートフォンの場合は走りながら道の混雑具合を見て、臨機応変にルートを変えます。Xperia Z1のカメラ機能の開発にあたっては両者の長所を取り、最終目的地である開発コンセプトを定めると同時に、そのコンセプトを実現するために必要な機能、技術の完成を小さな目的地としてロードマップの要所要所に置きました。
もっとも大事なのは、目標となる地点はどんな状況においても変えない、ということ。今回の開発で言えば「ブレない」、「ズーム機能」、「暗所でも綺麗」、という3点です。この3つのコンセプトをキープし、そのために何が必要か、という考えかたで開発を進めました。
亀崎:2つの異なる文化が歩み寄った中間的手法を採り、チームが進むべき方向を明確にしたことで、ジャンプアップと言えるほどに進化したXperia Z1のカメラ機能が生まれました。よく「ソニーのカメラ技術の結集」と表現していますが、技術だけではなく、カメラ開発の緻密さとスマートフォン開発のスピードが合わさった開発体制だから実現できたものです。進化した開発体制はXperia Z1だけでなく、今後のXperiaのカメラ開発にとって大きな財産となるでしょう。
もっとも大事なのは、目標となる地点はどんな状況においても変えない、ということ。今回の開発で言えば「ブレない」、「ズーム機能」、「暗所でも綺麗」、という3点です。この3つのコンセプトをキープし、そのために何が必要か、という考えかたで開発を進めました。
亀崎:2つの異なる文化が歩み寄った中間的手法を採り、チームが進むべき方向を明確にしたことで、ジャンプアップと言えるほどに進化したXperia Z1のカメラ機能が生まれました。よく「ソニーのカメラ技術の結集」と表現していますが、技術だけではなく、カメラ開発の緻密さとスマートフォン開発のスピードが合わさった開発体制だから実現できたものです。進化した開発体制はXperia Z1だけでなく、今後のXperiaのカメラ開発にとって大きな財産となるでしょう。
──思い出画質での撮影にくわえて、Facebookと連携して視聴者とコミュニケーションをとりながら動画配信ができる“Social live”、動くオブジェクトが楽しい“AR エフェクト”など、Xperia Z1にはユニークな撮影機能が豊富にあります。
天野:スマートフォンはカメラという“目”だけでなく、高性能なCPU“頭脳”とネット接続機能“口と耳”を備えています。これらを組み合わせた「スマートフォンならではの撮影体験ってなんだろう?」と考えたことが、新しい撮影機能の出発点でした。検索機能と組み合わせて「見るを超えた知ること」を実現した“Info-eye”。シャッターを切る前後1秒を記録することで、決定的瞬間を確実に写真にできる“タイムシフト連写”など、技術上の課題から何年も温めていたまさしく夢のアイデアや、何気なく「こんなことができれば楽しいな」と思っていたようなものまで、両手からあふれるほどの数のアイデアを検討して一つひとつ形にしていきました。
スマートフォンとカメラが手を取り合うことで、写真の楽しみかたには新しい大きな変化が生まれつつあります。なかでもFacebookをはじめとするSNSと連携して「いいね」やコメントをもらうことで、現在進行中のイベントでコミュニケーションの輪を広げていくことが、今、大きな注目を集めていると感じています。“Social live”では遠くにいる友だちも、動画とコメントの投稿を通じてイベントをいっしょに楽しむことができます。こういったスマートフォンならではの撮影体験は、これからもっと広がっていくと感じています。
──Xperia Z1は新たな映像処理技術「X-Reality for mobile」を搭載しました。「X-Reality for mobile」とはいったいどんな技術なのでしょうか。これまでの「モバイルブラビアエンジン2」とのちがいを教えてください。
伊藤:「X-Reality for mobile」はノイズリダクション、コントラスト拡張、カラーマネジメント、シャープネスの4つの技術を備える「モバイルブラビアエンジン2」に、データベース型全画素超解像技術をプラスしたものです。超解像技術は液晶テレビ ブラビアが搭載するものと同じ仕組みで、Xperia Z1の5インチフルHDディスプレイと視聴距離に合わせて画質調整効果を最適化しています。データベース型全画素超解像は映像を1フレームごとに解析し、映像データの圧縮などで失われた情報を推測、補完すると同時にフレームごとにふさわしい映像処理を組み合わせて適用します。この映像処理のパターンをデータベースとして貯え、映画やアニメなど映像の種類ごとシーンごとに最適なパターンをそのなかから適用することで、マニュアル操作のチューニングなら数日かかるような映像調整を一瞬で画面へと映し出すことができます。
──データベース型全画素超解像技術にくわえて「トリルミナス®ディスプレイ for mobile」などXperia Z1はソニーが培ってきた多彩な映像技術を備えています。
伊藤:映像の美しさは「X-Reality for mobile」をはじめとするハードウェアだけで実現できるものではありません。発色や精細感といった画質のチューニングを追求することで、初めて美しい映像を生み出すことができます。スマートフォンは動画だけでなくゲームや写真といろいろなコンテンツを再生します。画質の方向性を決定づけるチューニングは、開発の初期段階でXperiaはもちろん、プレイステーション、ブラビア、サイバーショットとソニーの映像にかかわる機器のエンジニアが一堂に会してミーティングをおこない、独自に培ってきた画質調整の技術をたがいに交換するとともに、ソニー画質とも言える画質調整の指針を作成しました。Xperia Z1はその指針を適用した初めてのスマートフォンです。
Xperia Z1ではSDやHDと解像度や、シーンごとにノイズの量がまちまちの動画も「X-Reality for mobile」でひとつひとつ解析して最適な超解像処理と画質調整をおこなうことで、見なれた映像も一皮むけたような精細で鮮やかな表現になります。また、「トリルミナス®ディスプレイ for mobile」はテレビ放送で表現できる以上の色彩をあらわすことができ、豊かな色彩から青空の抜けるような奥行きや柔らかなフルーツを立体的に表現します。私が初めてXperia Z1の映像を見たときは、鮮烈な印象に思わず「ワオ!」と声が出てしまいました。Xperia Z1が映し出す映像は「X-Reality for mobile」とソニー画質とも言える画質チューニングで、ハードとソフトの両面で進化しました。肉眼で直接見ているかのように鮮やかなXperia Z1の映像をぜひ体験してみてください。思わず声が出てしまうことうけあいです。
Xperia Z1はいつも身近にあるスマートフォンだからこそ、性能はもちろん使いやすさと細部にこだわりました。アルミとガラスでできた独特な質感のボディや長い年月を経ても色あせない画質の写真、ためらうことなく水辺へと持って行ける防水・防じん性能。こだわりぬき、磨きあげた機能には使うたびに新しい発見があります。ソニーのすべてが結集したXperia Z1には、機能の枠を超えたXperia Z1だから味わえる体験と感動があります。
※ “SONY”、“make.believe”はソニー株式会社の商標です
※ Xperia、info-eyeはSony Mobile Communications AB の商標または登録商標です
※ サイバーショット、α、“WALKMAN”、“BRAVIA”、ハンディカム、Exmor、Exmor RS、Gレンズ、BIONZ、トリルミナス、X-Realityはソニー株式会社の登録商標です
※ SmartARは、ソニー株式会社が開発した拡張現実技術で、同社の日本国内及びその他の国における登録商標または商標です
※ Facebookは、Facebook,Inc.の商標または登録商標です
※ NFC(Near Field Communication)は近距離無線通信技術の国際標準規格です
※ 本ページに掲載している情報は2013年9月19日現在の情報であり、予告なく変更される場合がございます