「RX1R IIは、撮りたい気持ちに呼応する」 RX1R IIは、これだけ小さいカメラなのに35mmフルサイズセンサーを搭載して約4240万画素の解像感が得られる。本当に唯一無二の存在ですよね。さらにオートフォーカスも速くなって、ファインダーまで内蔵した。僕がまっさきに進化を感じたのがこのAFの速さと正確さ。意識せずともピントを小気味良く合わせてくれるから、テンポ良く撮れる。RX1R IIは軽いのでバッグに入れるよりも常に首にぶら下げて、被写体と出会った瞬間、撮りたい気持ちの鮮度が高いうちに撮れるのが魅力だと思います。そんな時にAFが速いと、自分の気持ちとうまく呼応して撮れる。だからスナップがすごく撮りやすくなっています。
そしてファインダー。これがあるのとないのとでは全然違いますね。今回のEVF(電子ビューファインダー)は性能が高いので、クリアですごく見やすい。よくこのサイズに収めたというすごさもあるけれど、想像以上にしっかりしていてぐらつきがない。その信頼性の高さにまず感心しました。僕はいつもアイピースカップを付けてファインダーを出しっ放しで持ち歩いています。アイピースカップがあったほうが周りの光を遮断でき、密着感も増し、ファインダーに集中しやすいと思います。あと可動式液晶モニターも結構活用しています。ローポジションやハイポジションでの撮影で、液晶モニターが見づらくて正直これまで二の足を踏んでいたシーンもRX1R IIなら踏み込んで行けますから。ちょっとしたことですけど、クリエイティブな表現により積極的になれます。
「20年前やっとの思いで買ったカメラを思い出す」 そして僕が何よりも気に入っているのは、道具としての上質感です。ずっしりとした心地いい重たさ。カメラらしい直線的な佇まいがすごくいいですよね。チープなところが微塵も無く、一つ一つの素材が厳選されているのが分かります。RX1シリーズはこれで2世代目ですが、ベースとなる形の秀逸さを改めて感じました。機能も含めてこれ以上なにを求めるのかというくらい完成度が高い。写真をはじめてから20年くらい経ちますが、最初の頃にアルバイトしてお金を貯めて、やっとの思いで買ったカメラに似ているんですよね。ボディの薄さとか雰囲気が。巡り巡って、一つの道具として愛着がわくものに再び出会えたという感じです。撮る楽しみももちろんありますが、ダイヤルを回したり道具を繰る楽しさにも夢中になれるカメラですよね。
「極めて細密、ここまで写っていたのかという驚き」 描写で特筆すべきはやはり解像感。極めて細密だと思います。渓流を写した写真も、残りもみじの一枚一枚までしっかり描写されていますし、臨場感や立体感が違います。風景だと遠くの山々や木々の様子まで克明に写せます。撮影後に拡大して見ると、ここまで写っていたのかと驚きました。また解像感が高いので、質感の表現もすごい。江ノ島で撮った灯台の写真では、濡れたデッキの木の質感がよく分かります。デジタルを感じさせるようなにじみもありません。大画面の4Kテレビで見ても迫力十分ですし、プリントしてもその違いは表れると思います。
よく4240万画素の高画素だとブレが顕著なんじゃないかと思われますが、そんなことはないです。ブレる原因の多くはシャッター速度だと思うので、適正のシャッター速度でしっかり構えて撮れば、手持ちでもブレることなく充分威力を発揮できます。あとはストラップを使っていれば首からピンと張ってカメラを固定する方法もあります。また僕の場合はローパスフィルターを使うことはほとんどありませんね。自然風景の場合はモアレがでることもあまりないので、基本はなしでがんがん撮っています。ただ、都市風景や人物撮影などではビルの壁面や服の編み目などにモアレが出やすいのでシーンを選んで意図的に使うという感じでいいと思います。どこまでこだわるか、撮影者の好みの問題ですね。
「高画素でありながら
ノイズが少ないことのすごさ」 高感度での撮影については、普通に考えれば4240万画素の超高画素になったのだからノイズが出やすくなるのは当たり前。でもRX1R IIは、感度が上がってもノイズがとても少ない。ノイズの許容範囲は人によって変わってくると思いますが、僕はISO3200やISO6400くらいまでよく使いますし、充分なクオリティを保っていると思います。夜の路地を写した写真はISO6400で、手持ちで撮っています。シャドー部はノイズが目立ちやすいものですが、ざわざわした感じがあまりしないですよね。小径を歩く二人の女性を捉えた作品は、シャッター速度を上げるためにISO3200で撮っていますがこれもノイズがほとんど気になりません。壁の木目や質感までしっかり伝わってきますし、シャドーからハイライトまでの表現が豊かです。感度領域が広いこのカメラは、ある程度どんなシーンも対応できてしまう。だからこそ撮影者は露出補正とかをシビアに突き詰める必要があります。自分の目指すイメージに近づくように、自分自身で露出をコントロールして撮る。EVFを使えば調整しやすいですし、そこを楽しんでほしいですね。
「空気感とか、現実にそこに漂っていた気配」 RX1R IIは、ダイナミックレンジもとても広い。浜辺の写真は、空の階調表現がポイントです。最も明るい部分の空は、白ではなくちゃんと暖色のトーンがでています。こうした微妙な階調再現は難しいもので、妥協してしまうところではある。でもこれは豊かに表現できています。なんとも懐が深いというか、空気感や現実にそこに漂っていた気配、そういったものを写してくれるカメラだと思います。
AFの進化で撮りやすくなったシーンも多くあります。花の写真はしべ部にピントを合わせているのですが、画面の隅にあって従来であればピントが合わせにくい構図。今回はフレーミングを決めてからフレキシブルスポットでフォーカスエリアを選択して撮っています。AFエリアが広がっているので隅でもしっかりピントが合ってくれる。たとえばマクロモードにしてもオートフォーカスの精度が高いので、MFで追い込んで撮るようなシーンはほとんどありませんでした。ネコの写真は、見つけた瞬間に撮らないとシャッターチャンスを逃してしまう状況。レンズ開放でもシャープですし、AFも素早く合わせてくれました。AFがもたつくということはなかったですね。本当に機敏に撮れるカメラに仕上がっていると思います。
「カメラのクセを知り、写真の腕を磨く」 シーンによってはピクチャーエフェクト機能をよく使っています。この写真なんかは「トイカメラ」を選択して周辺部をあえて暗くしました。35mmの単焦点レンズなので、ズームして寄ることはできません。だから必然的に自分自身が動くことになりますが、状況によっては手前にロープがあったり崖があったり、どうしてもその場から撮らないといけないこともあります。そうすると画角に余計なものが入ってくる。そういう時に、トイカメラで周辺部を暗くするのも一つの手です。周辺部は青白っぽく変えているので、中央の赤が映えて見えますよね。RX1R IIの撮影の自由度が高まっているので、自分の中にあった制約も開放されてこういう撮りかたならどうなるかなと、違う操作や設定に挑戦したくなるんですよね。
この作品は「ソフトフォーカス」を効かせて撮りました。実際にはこのようには見えていないのですが、EVFでホワイトバランスや露出補正を確認しながら、その場で画づくりをしました。伸びやかな竹林の中を一台の人力車が通過する、その夢心地のようなファンタジーの世界に誘うイメージです。太い竹のところに来たときにシャッターを切ってしまうと人力車が隠れてしまうので、予め細い竹の隙間に来た瞬間を狙っていました。ここでもAFの速さに助けられましたが、若干のシャッタータイムラグはどうしてもあります。そこは撮影者の腕。タイミングを予測してシャッターを切る。何でもオールマイティにカメラ任せで撮れてしまうものもありますが、RX1R IIは違います。カメラのクセを知って、自分でコントロールして撮る。その上で撮影を楽しんでもらいたいですね。
色づくりでは、クリエイティブスタイルも使います。砂浜の夕日の写真はホワイトバランスをオートにして「夕景」を選択しました。このモードだと暖色を美しく表現できて、きらびやかな世界をうまく演出できます。この作品に限らずですが、実はレンズの優秀さにもすごく助けられています。フレアやゴーストがなくてとてもクリアに描写できる。夕方のこうした逆光シーンはもちろん、フラットで低照度な環境でもみずみずしさ、透明感を表現してくれる。それは出したくても出せない領域。ひとえにレンズの素性の良さだと思います。レンズ一体型だからこそ実現できているこのクリアな描写にも惚れてほしいですね。
「自分自身がどの間合いで向き合いたいのかを探る」 結局、4240万画素の高精細な描写は間違いなくだれでも撮れるわけです。そこにこだわるというよりも、このカメラはいかに距離をコントロールするかだと思います。単焦点レンズなので、画角の調整は寄ったり引いたり、フットワークを軽くして自分で動く必要があります。でも35mmという焦点距離は自分の視界に近いので、なにか気になったポイントでさっと撮ってあげるとそのまま写ってくれる。24mmだと自分の見ている範囲よりも広く、レンズの目になって計算しないといけない。ごくごく自然体で撮れるのが35mmの良さだと思います。和室の写真も、ファインダーをのぞく前になんとなく素敵だと感じたポジションで撮っただけです。何も奇をてらった撮りかたはしていません。
自分の感情によって被写体との距離は変わっていくものだと思います。それは単に写す範囲を調整するだけではなくて、心惹かれた光景を自分自身がどの間合いで向き合いたいのか。それを探ってほしいカメラなんです。興味引かれるままにぐっと寄るときもあれば、そっと気配を消して見つめてみるときもある。RX1R IIは本当に作者の心情の揺れ具合が写真に表れてくれるので、そこを意識すればまた一歩違った写真が生まれて来ると思います。
「いいカメラだからこそ自分好みにしたい」 RX1R IIはシャッターボタンにケーブルレリーズの穴があったりと、どこか古き良きカメラをにおわせるものがあります。そんなアナログ感も気に入っていて、すごくいいカメラなので自分好みにカスタマイズしたくなるんですよね。撮影を重ねていけばもっとこうしたいというポイントは出てくると思います。僕の場合はサムグリップは真っ先に装着しました。手ブレを気にする人には特におすすめですが、やはり親指をぐっと押さえ込めるスペースがあった方がしっかり握れるので安定性は上がります。一度なにもつけずに握ってみて、ちょっとホールディングが心もとないと感じたら付けてみるといいと思います。専用のソフトキャリングケースもホールド性を高めるのにはおすすめです。持ち運びする際にカメラを保護できる面もありますが、ボディケースを付けるとグリップの厚みが増すので、僕はこのケースだけ付けたまま撮影しています。
あとはレンズフード。高価なカメラなので、もし落としたときにレンズ側からいって割れてしまうのは避けたい。専用のレンズフードは金属製なので堅牢性が高くて保護としても使える。高級感も維持していて格好いいですよね。ストラップは好みによりますが、同梱されているストラップも悪くないんですよね。すごく革のしなりもいいし、裏側がすべり止めになっていて、よくできたストラップなので使っています。
RX1R IIをサブカメラに使う人もいるかもしれませんが、時にはこれ一台で散策しながら、琴線にふれた情景をさりげなく撮る楽しみをぜひ味わってほしいですね。がっちり撮影するというよりも、呼吸するように、自分自身とともに歩んでいくのにぴったりのカメラだと思います。一日一日、一瞬一瞬を記録するお供に、ぜひRX1R II連れて行ってあげてください。