———『Once Upon a Time -キボウノウタ-』はディズニーの海外ドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』日本語版のエンディングテーマ。こちらはまさにディズニーの世界を表現したミュージカルを見ているような印象の楽曲ですね。
ワルツのリズムは初めてなんですけど、童話を一冊読んだような重厚感があって、難易度の高い曲でありながら、歌うのがすごく楽しいですね。私はアニソンやロックを歌って、コンサートで経験値を積んで、もっと愛を知り、愛に傷つき、カッコいい熟女になったときに、シャンソン歌手になるのが夢なんです。そう心のなかでひそやかに夢の柱をたてていたんですけど、そんなときにこの曲との出会いがあって、びっくりしました。だから、まさにシャンソン歌手の夢への第一歩になるような気がして、熟女になればなるほど深みを増して説得力のある人にならなきゃいけないなって思わせてくれる曲ですね。
———とても壮大なテーマのラブソングですが、「愛してる」という歌詞は自分史上初だとか?
そうなんです。こういう恋愛の曲自体も初めてなんですけど、いろんなものを飛び越えて思いっきり「愛してる」って歌ってます(笑)。20代前半のときだったら、この曲の持ってるすごさには触れられなかったかもしれなくて、2年前、3年前の自分には歌えなかったと思うので、今はただただ感動していて。この曲をさらにカッコよく歌いこなせるような立派な熟女を目指そうと、修業が始まった感じがしています。
私は20代前半の頃、10代の過去に悩んでたことを黒歴史だったなって思ったり、そんな悲しんでいたことよりも楽しいことを見つけなきゃって焦ったりしてたんですけど、今こうしてレベル28になってみると、そうじゃなくて、過去のすべてが自分の経験値となっているからこそ、今や未来があるんだなぁとか、ひとりでぐるぐる考えてたんですよ。この曲はそんな自分の堂々めぐりの答えを、こういうことだよって歌詞にしてもらえたような感じなんです。過去のいろんな先祖たちが歴史を積み重ねて、その誰かの選択が違っていたら今はないし、今の自分も何気なく生きてるけど、その自分の一瞬一瞬によって未来の子孫たちの運命が大きく変わるのだとしたら、ちゃんと生きなくちゃって思う。もちろんどんな生き方が正しいかなんて誰にもわからないけど、確かなのは、それぞれ誰かを愛したり愛されたり、そういう気持ちがあって今の私たちがあるっていうこと。そういう大切なことが、歌うたびにじわりと心に染みてくるんですよね。
———ファンの方たちとの出会いも、過去の積み重ねがあってこそですもんね。
それはすごく感じています。歳をとったからだなとは思うんですけど、今やっと過去の自分と握手できるようになってきたので、お仕事するのがすごく楽しいし、ちゃんと過去と握手をしながら、未来につなげるための生きた証を残したいって思えるようになってきたんですよ。ステージで歌うことも、CDを出せることも生きた証だし、絵を描くことも、ブログでもTwitterでも、いろんなかたちで残せることがいっぱいあるので、ちゃんと重みを感じて生きようって。ときには自分がダラダラしたくて寝不足になったりもするけど、今は寝る時間も大切にしようって思うようにもなってきたので。
———大好きなゲームも、寝る時間を惜しんでまではやらない?
前はやってました(笑)。やりたいことがいっぱいありすぎて、寝るのがもったいないと思ってたんですよね。でも、水木しげるさんにお会いしたときに「睡眠こそ黄金の時間」だと、自分が考えていたこととまったく逆の素晴らしい答えをいただいて。それと同時に、自分に足りないもの、子孫につなげていくために大事にしなきゃいけないものはいっぱいあると気づいたんです。それぐらいの人にならないとシャンソンは歌えないし、まだ何も始まってないんだなって。