SとVシリーズは、ある意味兄弟モデルとも言える関係にある。デザイン的には全く異なるが、映像部分では両者とも同じ作りとなっているからだ。Sシリーズはこれまでの液晶テレビのイメージを継承したデザインで、幅広い層に受け入れられやすい。一方のVシリーズはブラックを基調にしたシックなデザインで、今までテレビになかった「若さ」を感じさせる。
まずは特徴的であるVシリーズのデザインコンセプトについて、企画担当のテレビ事業本部・FTV商品企画課の佐久間大二郎氏にお話しを伺った。
「今までテレビというのはシルバーのものが多く、液晶=シルバーというイメージの商品が多くなっています。その背景というのは、テレビは元々大きいものだから、部屋の中でなるべくその存在感を消したいという意向からどんどん明るい色になっていったところもあります。ですが最近多くの人の生活スタイルの中で、自分の部屋のインテリアや、色を意識し始めている。その中で存在感を消すシルバーよりも、敢えてテレビの存在感、所有者の個性やこだわりという部分を表現できるようなテレビを、と考えたんです。」
Vシリーズのブラックフェイスは、単純な黒ではない。青色の顔料や微細なガラス粉末を混ぜることで、非常に深みのある、主張する黒なのだ。そして回りを柔らかくシルバーで囲むという手法は、QUALIA
005に通じるものがある。
だが、闇雲に目立とうとするわけではない。何を主張し、何を主張しないか。その選択をシビアに行なうからこそ、ソニーデザインなのだ。
「画面下にあるシルバーのラインがアクセントになっているわけですが、リモコン受光部など"こちらの都合"の部分は、極力その存在をなくしました。通常この部分は黒い穴になったりするわけですが、それではこのデザインが台無しになってしまいます。ですからシルバーのラインに合わせて、白いパネルを透過するような構造にしました。」
確かに手前から見ると、テレビの都合で付けられた「穴」がほとんど見えない。すっきりしたシルバーのラインとスタンド部のシルバーが一体となって、重心が低く落ち着いたイメージがある。
「実はスピーカー部の構造も、Sシリーズとは大きく違っています。これまでのアンダースピーカーって、出っ張ったり膨らんだりして存在感たっぷりじゃないですか。ですがVシリーズでは、逆にスピーカー部を薄くすることで、存在感をなくしているわけです。」
詳しくは実機を見ていただきたいのだが、Vシリーズのスピーカー部は、若干上向きに角度が付けられている。これは音の出方が、アンダースピーカーであるということを意識せず、画面のセンターで音を感じさせるための工夫だという。また表面のパンチングメタル部も極小穴で開口率を上げ、スピーカーもグリル面より奥に離して設置することで、グリル全体から音が放出されるように工夫されている。
「シックでありながら重くない。細かいデザインセンスをVシリーズで感じていただければと思います。」
Sシリーズのデザインも見ていこう。Vが黒で主張するモデルとするならば、シルバーを基調としたSは、オーソドックスなエントリーモデルとなる。
「Sシリーズはハッピーベガのデザインを継承して、若い方から高齢の方まで、どの部屋でもマッチするような製品にしました。下部にあった黒いラインを廃して全体的に明るくまとめて、画面に集中できるような方向ですね。」
Sシリーズは、40V型モデルでも横幅999ミリという、幅をとらないテレビでもある。4:3のブラウン管テレビから16:9が主流の液晶テレビへの買い換えを考えると気になるのは横幅である。Sシリーズの40V型モデルならブラウン管テレビの29型のスペースにすっきり収まる。
「しかし本体だけをいくら薄くしてもダメで、問題は足の奥行き。本体の重心が低ければ、足を前後に長くしなくても転倒しにくくなります。ここまでスタンドの奥行きをコンパクトにできたというのは、本体設計で重心をなるべく低くしたからなんです。」
スタンドの奥行きが短ければ、テレビの置き場所も部屋の角ではなく、部屋の壁にくっつけて配置することができる。薄型テレビに買い換えるということは、単にテレビを交換するのでなく、インテリアも含めて部屋の使い方を根本から見直す、1つのチャンスでもあるわけだ。 |