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株式会社TBSアクト 様
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2024年ニューイヤー駅伝 『NXL-ME80』ご活用事例

2024年1月1日、群馬で行われたニューイヤー駅伝(TBS系列生放送)で、低遅延・高画質・高圧縮を実現したIP伝送装置であるメディア・エッジプロセッサー『NXL-ME80』をご使用いただきました。当初は予備機としての運用予定でしたが、現場で実際の伝送回線に通してみたところ、通信状態もよく、『NXL-ME80』の画質や性能面からも優れているという判断から、本線としてご活用いただきました。

株式会社 TBSアクト
マネジメント本部
コンテンツプロデュース部
副部長 兼 中継本部 中継映像部
石川浩之 様

株式会社 TBSアクト
中継本部 中継映像部
伊深拓也 様

低遅延と画質の良さから急遽、本線で採用

ニューイヤー駅伝では一部の中継所において、出先中継車で現場制作するのではなく、中継所のカメラとマイクの信号を全て放送センターに集約してスイッチングやミキシングを行うリモートプロダクション方式をとっています。そのためには多くの信号をやり取りする必要があり、出先カメラの映像、音声信号、カメラのリターン信号(放送センターでスイッチングした結果の送り返し)など、ダークファイバーを引ける箇所はCWDM(光多重伝送)機材を主に使用しています。但し、中継所の移転などでダークファイバーの引き込みに工事が間に合わない現場では、100Mbpsの広域イーサネット回線を敷設しIP伝送装置にて信号の送受をしています。昨年、その回線と他社海外製IP伝送装置の組み合わせで伝送したのですが、更に遅延量が少ない方が良いと感じたことに加え、機器の仕様で単方向のみの伝送だったため、送り返し映像の構築に別のIP伝送装置を用いることとなり、出先に負担をかける結果となってしまいました。もっとシンプルにできる機材が無いかと探している中で、ソニーの『NXL-ME80』(以下ME80)が我々の要求する内容に合致したため、ニューイヤー駅伝で是非とも使用してみたいと思いました。

当初のプランでは昨年と同じ機材構成を本線で用い、ME80は予備回線の構想だったのですが、現場で繋げてみるとME80の方が遅延量も少なく、放送センターから折り返している映像を含めて画質も良いということで、現場で急遽ME80を本線で使用することになりました。

特に画質は、木の葉の揺れなど細かなものの動きやにじみ、カメラを大きく振った際のちらつきなど圧縮に厳しい状況で画質の違いが出ました。加えて、遅延量が少ないという点からも番組制作上、運用しやすいと判断しました。

放送センター、群馬県庁前ステージ設営風景
群馬県庁の一番上階、展望ホールに仮設の放送センターを設営

群馬県庁展望スペースの放送センターの様子

放送センター内 VE卓

西久保中継所 中継カメラ

実際、今回は、第六中継所である西久保中継所からカメラ映像3回線を放送センターへ送り、放送センターからは2回線を送り返しました。各信号は全てビットレート20Mbps設定、ジッターバッファーは100msecで行いました。一方の他社製品は、いわゆるSRTバッファーが100msec、ビットレート20Mbps、圧縮コーデックは同じH.265で、ME80と同程度の設定にしたのですが、コーデック遅延量の調整ができないため、ME80の低遅延モードと比べてディレイがありました。

西久保中継所中継車内
左上が放送センターからの2回線、
右下3画面が中継所からのカメラ映像 3回線

放送センターのマルチビュー画面
赤枠が西久保中継所からの映像、黄色が送り返し

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送受信の状況
左:放送センター、右:西久保中継所

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西久保中継所〜放送センターの系統図

一番の印象は、スムーズに繋がったこと

我々も不安だったのが、ME80は伝送路にギガビットの専用線を推奨されていた点でした。ニューイヤー駅伝に持ち込むにあたり、費用面から確保できたのが100Mbpsのイーサネット回線であり、机上では問題ないという想定の中、実際の現場に持ち込んでみないと分からない点は不安がありました。計算上では、総ビットレートを帯域幅の半分ぐらいに収めるようにし、余裕を持たせるようにしています。今回は双方向のうち片方向を60Mbps程度に設定しての運用で具合を見たところ、それが思ったよりスムーズに繋がってしまったというのが驚きでした。エラー訂正で補償されたかどうかは判断できないのですが、実際に映像や音声の破綻は全くなく、「あっけなく繋がったのが凄いな」と感じています。

今回、100Mbpsという回線の中で使えるということが実証できたことも大きな収穫です。我々も海外を含めて使い勝手があるよね、と。NXL-IP55だとギガビットになってしまい回線費用の面や物理的に帯域を確保することが難しい場合もあり、使える環境が限られてしまいます。接続に苦労することで達成感を得るという場合もありますが、今回は逆に苦労なく「あっけなく繋がっちゃった」というのが、本当に一番の印象です。

設置においては、筐体が小さいので場所を取らない点、背面がシンプルで分かりやすい点が良かったです。逆に小さすぎると背面の結線が乱雑となり、設置場所に苦労します。本機は箱型で他の機材とも重ねやすく、サイズも丁度良いですね。我々の現場はオペレーションと機器が同居しているので、そういう点でもME80は比較的動作音が小さいので助かります。また、仮設ということもあり機材をきちんと冷却できる環境ではありませんでしたが、問題なく使用できた点も良かったです。

IP伝送装置
『NXL-ME80』は1台でENC/DEC、双方向伝送を担う

海外中継でハイフレームレートも活用したい

近年、海外でのスポーツ大型番組でもコスト面をかなり意識せざるを得ません。通常はIBCと呼ばれるような放送センター、ベニューと呼ばれる競技会場があり、その間の映像・音声回線をブッキングしますが、大会によっては費用が高額で、何回線もやり取りしようとすると膨大な金額となってしまいます。最近だとイーサネット回線での構築の方が安価な場合があり、100Mbps程度でIP化して送ることも多くなってきています。そのような場面ではこういった機材がより活用できると思います。双方向で送れること、遅延量が少ないこと、今まで使用していたエンコーダー/デコーダー機材と比較してメリットは大きいと感じました。

それからハイフレームレート60pで2/3/4倍速が送れることもいいですよね。我々もソニーのハイフレームレートのカメラを多く導入し運用しています。ハイフレームレートを圧縮して同期して送ることを保証している製品はME80の他に見られないので、そういった伝送用途でもぜひ使ってみたいです。

スポーツの国際大会で、ユニカメラと国際映像を東京に送り、本社のサブでスイッチング、スロー出しを行うことがあります。そういった場面でも、例えばハイフレームレート1回線と通常のHD×4回線を送ることが可能となると、計5カメ分、その伝送ができるだけでもメリットがありますね。ユニカメ1台をハイフレームレート化することで、高品質なスロー映像が出せると番組制作の演出幅が広がります。サッカーやバレーボールなど、日本が盛り上がりそうなスポーツは試してみたいですね。近年、リモートプロダクションにより、現地に行くスタッフ数を減らしたいという制作側の要望があります。簡易的なものだとモバイルIP装置を使用していますが、ある程度帯域の確保が可能であれば、こういった形を取ることで運用面での幅が広がると感じました。

取材:2024年2月

メディア・エッジプロセッサー
NXL-ME80

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