AIBOの歴史は1993年に試作された「6足の昆虫タイプロボット」からはじまります。現在のAIBOとは似ても似つかない姿ですが、すべてはこの試作機からスタートしました。この試作機が作られた背景には、1980年代後半に世界的な盛り上がりをみせた、人工知能(AI)研究のブームがあります。1980年代は人工知能研究の黎明期と呼べる時期で、世界各国の研究機関で、人工知能の持つさまざまな可能性が模索されました。そして、1990年代に入ってブームがひと段落した後に出てきたのが、「人工知能を使って何を実現するのか?」というテーマだったのです。
人工知能を使って何を実現するか。この問いの前に、ひとつの大きな壁が存在していました。それは、人工知能がはじまったばかりの研究分野であり、発展途上ゆえに、できることよりもできないことの方が多いということ。人工知能を使って、実用的で有用なものを作るには、技術的に未開拓な部分が多いうえに、制限や制約がたくさんあるため、すぐに成果を出すのが困難だったのです。
そこでソニーが考えたのが発想の転換でした。人工知能を動かすプラットフォームとしてはロボットがあります。ならば、そのロボットを人間のそばで動かして、コミュニケーションをとったり、遊ばせたりしたらどうだろう?実用性や有用性を追求するのではなく、楽しさを追求したロボットなら、発展途上の人工知能を、逆に活かすことができるのではないだろうか……。そんな発想から、“ザ・エンターテインメント・カンパニー”を標榜するソニーならではの、エンターテインメントロボットへのアプローチが生まれたのです。
最初の試作機は、1人のエンジニアが秋葉原で買い求めた電子部品を使って、わずか2週間で作りあげたものでした。それを使って、社内でデモを行ったところ、「これは面白い」という声があがり、エンターテインメントロボットの製品化に向けて、その可能性と存在意義を確認することができました。ここから、本格的な開発に向けての準備段階に入り、1994年に「エンターテインメントロボット研究プロジェクト」が発足。4年後にAIBOを生みだすことになる、本格的なロボット開発がスタートしたのです。
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1993年 |
初めての試作機(6足の昆虫タイプロボット)を製作 |
1994年 |
エンターテインメントロボット研究プロジェクト発足 |
1996年 |
社外公開試作機完成 |
1997年 |
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1月 |
「Autonomous Agent'97」にて試作機公開「OPEN-R」論文発表 |
3月 |
OPEN-Rアーキテクチャーに準拠したロボットの試作開始 |
8月 |
ロボットのサッカーワールドカップ「第1回 ロボカップ」(名古屋)にて試作機のデモを行う |
1998年 |
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1月 |
エンターテインメントロボットプロジェクトが社内で正式に承認 |
4月 |
空山基氏デザインスケッチ完成 |
6月 |
OPEN-Rアーキテクチャーを発表 |
7月 |
「第2回
ロボカップ」(パリ)にて6号試作機を公開 |
10月 |
名称を「AIBO」に決定 |
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1999年 |
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5月11日 |
「ERS-110」発表 |
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