ソニーの放送業務用制作機材の歴史は、1958年2インチテープを用いた白黒VTRの国産第一号を発表した時に始まりました。その後世界中の放送局で採用されたベータカムフォーマットが誕生し、これにより今日の放送局での運用スタイルの基礎が完成されると同時に、放送機器におけるソニーのブランドが確立されました。また、放送用機器の設計部があるソニー厚木テクノロジーセンターは「ATSUGI」として世界中の映像制作関係者からの注目を集めるようになったのです。 そして、ソニーは放送用機器で培った知識・技術を活かし、業務用映像制作機器というカテゴリーを創造。街やオフィス、学校やインターネットなどで流れるコンテンツを支えています。 「未来は歴史と伝統から創造される」 ソニーは40年以上に渡って磨き上げてきた技術力と信頼を活かし、新しい時代を創造してきたリーダーとして映像制作の理想を追求し続けます。 |
1950年〜1959年 | 1960年〜1969年 | 1970年〜1979年 | |
1980年〜1989年 | 1990年〜1999年 | 2000年〜2009年 | |
2010年〜 |
1958年12月 |
アンペックス方式(2インチテープ使用)の白黒VTRの国産第1号を完成、発表 |
1962年9月 |
世界初のトランジスタ式放送・業務用小型白黒VTR「PV-100」を発表【'63.7発売】 「PV-100」は放送局以外でも、アメリカにおいては航空機内上映用にも採用された。この時培ったVTR技術は、後の放送用・業務用VTRや家庭用VTRに引き継がれていった。 |
1970年3月 |
国内、海外のメーカー8社で "U規格" 規格統一合意 |
1971年9月 |
民生用3/4インチ幅使用 世界初のカセット式カラーVTR "Uマチック" 発表 【翌月「VP-1100」発売】 Uマチックは、それまでのオープンリール式から、扱いの容易なカセットテープ化への道を開き、「映画・演劇のカンヅメ時代」とも報道され、注目を集めた。Uマチックで研究したテープローディング技術は現在も様々なVTR機器で活かされている。 |
1976年 |
1インチ1.5ヘッド方式 "1インチタイプC(通称ノン・タイプC)" フォーマット発表 |
1976年7月 |
放送局用小型・高性能 "Uマチック" 「BV(Broadcasting Video)シリーズ」発売 フィルムからVTRへ。BVシリーズによる即時性が報道現場を一変させ、ENG(Electric News Gathering)時代の幕開けを告げた。 |
1977年12月 |
ソニーの方式が全面的に採用された "SMPTEヘリカルスキャン1インチVTRタイプC" フォーマット誕生 |
1981年4月 |
アナログ方式放送業務用1/2インチ "ベータカム" フォーマットカメラ一体型VTR「BVW-1」を発表【'82,11 発売】 カメラと一体型となり飛躍的に機動性を増したベータカムは、世界中の放送局市場で一気に普及、放送機器メーカーとしてのソニーの基盤を固めた。ENGの加速で報道は新時代へ突入した。 |
1984年4月 |
HDVS高精細度ビデオシステムを商品化 ソニーはこの時点ですでに、HD(High Definition=高解像度)映像システムの商品化を実現している。ソニーの放送用HD機器の歴史はここから始まり、またHDは通称「ハイビジョン」の呼び名で一般家庭にも浸透した。 |
1986年3月 |
世界初コンポーネント・デジタルVTR "D-1" 発表【'87.4「DVR‐1000」発売】 3/4インチカセットテープを採用した非圧縮デジタルVTR。D-1フォーマットはコンポーネント・デジタルの世界を築き、後にデーターレコーダーとしても進化した。高画質デジタルビデオの制作環境を実現、コマーシャル映像制作分野から採用が始まった。 |
1986年3月 |
メタルテープによる高画質化と長時間記録を実現したアナログ方式 "ベータカムSP" を発表【'87.夏「BVW-505」発売】 全世界的に放送用スタンダードVTRとして採用され、現在でも多くの局で使用されているフォーマットである。後に業務用ベータカムSP(PVWシリーズ)が発売され、さらにデジタルベータカム・ベータカムSX等の放送用デジタルコンポーネントに発展した。 |
1988年3月 |
世界初コンポジット・デジタルVTR "D-2" 発表【同年6月「DVR-10」納入開始】 放送局の番組交換基準フォーマットに認定され普及、現在に至る。 |
1989年0-月 |
SDI(シリアルデジタルインターフェイス)実用化に成功 |
1993年3月 |
デジタル画像圧縮技術採用の1/2インチコンポーネントデジタルVTR "デジタルベータカム" 発表【同年10月「DVW-A500」発売】 デジタルベータカムは、ベータカムシリーズでの最高画質を実現させたフォーマットであり、その映像のクオリティの高さから、日本国内ではCM搬入基準フォーマットとして認められた。プロダクション業界における標準的なフォーマットとしての地位を築いている。 |
1996年3月 |
アナログ方式 "ベータカムSP" との再生互換を有したMPEG-2圧縮方式準拠のデジタルVTR"ベータカムSX"発表【同年9月「DNW-A100」発売】 ベータカムSXはベータカムSPと同等のクオリティを実現し、ニュース番組制作などのデジタル化を促進させるフォーマットとなった。 |
1996年4月 |
民生用デジタルVTR(DV)を基にした1/4インチデジタルVTR "DVCAM" 発表【同年9月「DSR-1」発売】 民生機の技術に、放送用機器で培った映像制作機器の技術・知識を投入して開発されたDVCAMは、低価格ながら高品位という評価を得、それまでシステムが高額なため専門業者以外には困難であった映像制作が、企業や大学などでも行えるようになり、DVCAMが業界の底辺を一気に拡大させたのである。現在ではアマチュアから放送局まで、世界で約40万台のDVCAM機器が使用されている。 |
1997年3月 |
業界初のHDカムコーダーを実現したHD VTRフォーマット "HDCAM" 発表【同年6月「HDW-500」、10月「HDW-700」発売】 HDCAMはベータカムシリーズと同サイズのカセットテープを採用し、従来の撮影スタイルはそのままに、HD(High Definition=高精細)映像を収録することを可能とし、HD制作環境を一気に拡大させた。現在ではデジタル放送におけるHD映像制作の標準的フォーマットとして多くの放送局で採用されている。 |
1998年4月 |
MPEGを核とした放送ネットワークオペレーション "MPEG World" を提案 |
1999年 |
フラットトリニトロン方式ブラウン管マスターモニター「BVM-D24」発売 高画質と優れたアナログ回路技術でマスターモニターのデファクトスタンダードに。 |
1999年4月 |
ハリウッドの要望に応え開発したHD 1080/24p制作システムを正式発表 |
1999年11月 |
HDCAM 1080/24pスタジオVTR「HDW-F500」発売 |
2000年4月 |
HDCAM 1080/24pカムコーダー「HDW-F900」発売 ジョージ・ルーカス監督「スター・ウォーズ エピソード2」では、全編でHDW-Fシリーズが使用され、業界に衝撃を与えた。本格的なデジタルシネマ制作時代の幕開けとなった。また、HDCAM 1080/24p制作機器のプロダクトファミリーネームを"CineAlta"とし、デジタルシネマ制作の普及を促進している。 |
2000年4月 |
MPEG-2圧縮方式を採用し50Mbpsまでのビデオデータをカバーする "MPEG IMX" VTR 「MSW-2000シリーズ」発売 MSW-2000シリーズは、テープに記録してある映像・音声を、業界での標準化が進んだファイルフォーマット"MXFファイル"に変換して、ネットワークで転送できる世界初の"e-VTR"でもある。AVとITの融合を進め、「MPEG WORLD」を具現化させた革命的なVTRである。 |
2001年4月 |
HDTV/SDTV対応ノンリニア制作システム「XPRI」発表【同年5月発売】 XPRIは、SD制作からHD制作へのマイグレーション(移行)を考慮し、SDシステムからHDシステムへとバージョンアップを可能とした。ネットワークを利用した効率的な編集作業やリアルタイム処理の強化など、XPRIはさらに進化を続けている。 |
2003年3月 |
HDCAMの上位シリーズ "HDCAM-SR" を発表 より高いクオリティの映像実現を目指し、HDCAM-SRが開発された。HDCAM-SRは、HDでのコンテンツ制作・送出の最上位機種として位置付けられ、デジタル合成やCGイメージを多用する映画・CMにおいてのマスターVTRとしての利用や、12チャンネル音声記録を活かしたサラウンドオーディオ放送での活用が期待されている。 |
2003年4月 |
青紫色レーザーを用いたプロフェッショナルディスクシステム "XDCAM" 発表【同年10月発売】 XDCAMは、映像音声の記録に青紫色レーザーと光ディスクを用いた世界初の放送用・業務用制作機器である。40年以上に渡るVTR開発の歴史の中で培った技術と知識、そしてお客様からの要望を注ぎ込んで開発された。テープと同様の可搬性・操作性に加え、ファイル転送機能・ランダムアクセス性を備えたXDCAMが新しい制作スタイルを創出するだろう。 |
2003年9月 |
DV規格のカセットテープを使って、HDの映像と音声を記録・再生するための新しい映像規格として、国内4社のビデオカメラメーカーを中心に "HDV" 規格を策定 |
2005年1月 |
"HDV" 規格を活用したプロフェッショナルのための映像制作機器を発売 映像圧縮にはMPEG-2を採用。HDV規格賛同メーカーより、対応ノンリニア編集システムが発売され、従来のDV編集と同様のオペレーションで編集が可能。さらに、業務用DVフォーマットのDVCAM記録モードを搭載。XLRタイプコネクターやタイムコードもサポート。 プロフェッショナルの運用を考えた充実の機能が搭載されている。 |
2005年3月 |
オールインワンのポータブルライブシステム "Anycast Station" 発売 アタッシュケーズサイズの筐体に、スイッチャー、モニター、ミキサーなどのライブ中継に必要な機能が搭載された "Anycast Station" AWS-G500発売 |
2005年11月 |
プロフェッショナルディスクにHD記録を可能とした "XDCAM HD" モデル発表 【2006年4月発売】 XDCAM HDはXDCAM SDの特長を継承し、MPEG-2 MP@HLとDVCAMフォーマットに対応。HD環境へのスムーズな移行を可能とする。ディスクならではの効率的なオペレーションで、HDの新たな制作スタイルを送出するだろう。 |
2007年4月 |
液晶マスターモニター「BVM-L230」発表 倍速、10ビットパネルドライバー搭載のLCDパネルを採用し、LEDバックライト、フルデジタル信号処理など、先進のデジタル技術、モニター技術を投入。 |
2007年8月 |
50GB・2層ディスク対応のXDCAM HDモデルを発表 【2007年10月発売】 大容量50GB・2層ディスクに対応することで、高画質HD映像の長時間記録を実現。ノンリニアメディアによる本格的なHD制作システムを低価格で構築できる。 |
2007年9月 |
SxSメモリーカードを記録媒体とした"XDCAM EX"を発表 XDCAM EXは小型フラッシュメモリーである、SxSメモリーカードを記録媒体とした制作機器である。高画質と長時間記録を両立する MPEG-HD圧縮を採用。メモリーならではの、高速転送やサムネイルサーチなど、ワークフローの改善と商品の小型化を実現した。 |
2007年11月 |
記録ビットレート50Mbps、4:2:2サンプリングのXDCAM HD422シリーズを発表 【2008年4月発売】 XDCAM HDのフラッグシップモデル。 圧縮方式にMPEG-2 Long GOPを採用し、フルHD(1920×1080ドット)解像度、記録ビットレート50Mbps、4:2:2サンプリング記録を実現。カム コーダーには2/3型CCD搭載。ニュースや番組など、放送領域でのHD制作に対応する。 |
|||
スーパー35mm相当の単板CCDを搭載したデジタルシネマカメラ「F35」を、世界に先駆け日本市場において販売開始* * 開始時は受注生産品、2008年9月より正式に全世界に向けて発売 デジタルシネマカメラカメラ「F35」は、撮像素子にスーパー35ミリフィルム相当の単板ストライプ構造CCDを搭載することで、フィルムカメラと同様の被写界深度(ボケ味)を実現。 また、搭載されているS-Logにより、Dレンジ800%で撮影することができ、映画・ドラマ・CM制作などで求められる高画質の映像表現が可能。 |
2010年1月 |
AVCHDフォーマットを採用した"NXCAM"を発表 【2010年1月発売】 "NXCAM"はAVCHDフォーマットをベースに業務用の機能・操作性を組み合わせたビデオカメラ及びその周辺機器。業務用機器としての機能、操作性はそのままに、快適なファイルオペレーションを実現した"NXCAM"カムコーダーHXR-NX5Jを発売。 |
2010年3月 |
テレビでの3D番組制作市場に向け、対応機器を開発し発売 ステレオスコピック3Dに対応したマルチイメージプロセッサー「MPE-200」を発売。 高性能マイクロプロセッサーCellを搭載し、HDのステレオイメージをリアルタイムに補正して心地よく視聴できる3Dプログラムを作ることにより、スポーツなどのライブイベントの3D中継や編集作業に活躍。 |
2011年2月 |
有機ELマスターモニター「BVM-E250」発売 独自開発の有機ELパネルに、 "TRIMASTER" で培ったテクノロジーを投入し、マスターモニターのクオリティとスペックを実現したマスターモニターの新基準。 |
2011年9月 |
HDから3D、4Kまで対応、新開発メモリーストレージシステム "SRMASTER" 発表 "SRMASTER"は、従来より映画、CM、ドラマ制作などで高い評価を頂いている、HDCAM-SRと同じ"MPEG-4 Simple Studio Profile(SStP)"フォーマットおよび、CineAltaカメラF65RSにより記録可能な16bitリニアRAWデータである"F65RAW"を含むソニーのハイエンド領域向けファイルベースフォーマットの総称です。 "SRMASTER"は記録媒体として高速メモリーメディア"SRMemory"を採用、高速なデータアクセススピードを活かしHD・2Kのみならず3D、4K制作をサポートしています。 |
2012年1月 |
業界最高画質のCineAltaカメラ「F65RS」発売 新開発の単板8KCMOSイメージセンサーを搭載し、HDから4Kを超える制作まで、幅広い用途に活用できるCineAltaカメラ「F65RS」。CineAltaブランドも刷新され、HDTVを超えた、4K制作環境を提供する撮影機器につけられ映像表現の無限の可能性を目指す。 |
ソニーは放送用・業務用制作機器開発の歴史において、放送業界で最も権威のある賞である「エミー賞」を受賞しています。世界から評価されたソニーの技術力は、今日の放送用・業務用機器だけでなく、民生用商品にもその遺伝子が組み込まれ、美しい映像と音声が生活と調和する時代を支えています。 |
1976年 |
・3/4インチ UマチックVTRの開発 |
1979年 |
・放送業務用 タイプCフォーマット1インチVTRの開発 |
1984年 |
・静止画の記録/再生が可能な放送業務用タイプCフォーマット1インチVTR「BVH-2500」の開発・商品化 |
1985年 |
・高速度記録ビデオシステム"スーパーモーション・ビデオ・システム"の開発 |
1986年 |
・ベータカムVTRフォーマット開発・商品化 ・オフライン編集システムの開発*1 |
1988年 |
・D-1フォーマット4:2:2デジタルコンポーネントVTRの開発及び実用化*2 |
1989年 |
・D-2フォーマットデジタルコンポジットVTRの開発及び実用化 |
1990年 |
・静止画転送技術の報道への貢献 ・自動カセット管理システムの番組送出の自動化への貢献 |
1991年 |
・森園正彦の放送業界への貢献 |
1993年 |
・シリアル・デジタル・インターフェースの実用化 |
1995年 |
・デジタルベータカムVTRフォーマット開発・商品化 |
1998年 |
・HD(High Definition)テレシネシステムの開発及び実用化*3 |
1999年 |
・デジタルHDスタジオVTR「HDW-500」の開発および実用化*1 ・チャールズ スタインバーグの放送業界への貢献(The Charles F. Jenkins Lifetime Achievement Award Emmy)*1 |
2001年 |
・HD 1080/24p制作システムの技術開発および実用化 |
2002年 |
・ハワード ストリンガーの放送業界への貢献(The Founders Emmy Award) |
2004年 |
・HD 1080/24p カムコーダー「Panavised F900」の技術開発および商品化 |
2010年 |
・世界に先駆けてフルHDの3倍速キャプチャによるHDスーパースローモーションカメラの商品化*4 |
2011年 |
・米国パナビジョン社と共同開発したデジタルシネマカメラ 「ジェネシス」、ソニー製デジタルシネマカメラ 「F35」、「XDCAM」の開発および実用化 |
*1 | Academy of Television Arts and Sciences:ATASより受賞 |
*2 | ソニー株式会社と、開発を担当した江口武夫の双方が受賞 |
*3 | ソニーピクチャーズエンタテインメントHDセンターが受賞 |
*4 | ソニー、NAC Image Technology, Inc.、EVS Broadcast Equipment, Inc.、Vision Research、Grass Valley Groupの5社の連名で受賞 |
|
ソニーの歴史に関しては「Sony History」もご覧下さい。 http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/ |