本文へ

ソニーマーケティング学生ボランティアファンド

トップ過去の助成対象一覧第3回助成対象グループ活動一覧総評

総評

2003年12月18日 審査員代表:山崎美貴子

全体的な応募の状況

 第3回「ソニーマーケティング学生ボランティアファンド」では、全部で113件の応募がありました(1件は無効)。大学別には、国立大学17大学、公立大学10大学、私立大学41大学、合計68の大学から、都道府県別には、28の都道府県から応募がありました。昨年は23の都道府県からの応募でしたので、今年はさらに全国津々浦々に学生ボランティアを支援する 「ソニーマーケティング学生ボランティアファンド」が浸透した年でもありました。応募数の多かった大学は、慶應義塾大学11件、早稲田大学10件、 明治学院大学9件、東京大学6件、岩手県立大学4件、京都大学・同志社大学3件でした。

審査方法

 審査の手順として、まず予備審査で112件を30件に、次いで本審査で30件を22件*にしぼり、今回の対象グループ活動を決定しました。審査の経過は、以下のとおりです。
(*優れた活動が多かったため、対象20グループ活動の予定を審査の結果22件にしました)

 初めに、下記の予備審査の評価基準について、書類審査を行いました。

 1)応募要綱の「応募資格」に合致しているか
 2)応募要綱の「応募活動」の活動実施期日、報告会への参加条件を満たしているか
 3)費用明細が記されているか、また明細が適切か
 ※ 上記3項目の基準で30グループ活動までしぼれなかった場合には、「本審査」の評価基準を参考にしました。


 本審査の評価基準は、下記の5項目にしぼり、それらを総合的に評価しました。評価基準はA=3点、B=2点、C=1点で採点し、5名の審査員による評価合計点を基準に上位22グループ活動を、ファンドの対象として選出しました。

 1)活動のユニーク性
 2)創造性、開拓性
 3)学生ならではの企画であるか
 4)企画が自己満足に終わっていないか、プログラムに社会性はあるか
 5)ファンドが有効に生かされるか

応募企画に関する総評

1. 地域コミュニティと変容しつつある大学

 昨年に増して、大学だけで完結する活動から、コミュニティに密着した活動が増えてきていることが特徴として挙げられます。背景として、大学のドアが地域に開かれて、地域と大学との地続きの関係が全国的に広がってきているのか、あるいは学生が地域の一市民として、自覚をもって地域に関心が向けられてきていることが考えられます。大学だけで自己完結しないという傾向が、今後も定着していくことを期待します。
 大学と地域との接着剤として位置づけられるとするならば、ボランティア活動がその役割を果たしつつあることが興味深い点でした。大学の在り様が変わってきている様子が窺えます。今回の助成対象団体の半数近くが、地域と密着した活動であることが印象に残りました。



2. 異世代交流の深まりとプログラムの工夫

 青少年分野で上位に挙がった活動は、他の世代と関わるようなプログラムになっていました。小・中学生を対象とした土曜学校や母子家庭の母と子どもなど、自分とは違う世代や、自分より低い世代とお兄さんお姉さん役として関わりながら、自分たちも一緒に成長していくというようなプログラムで、工夫が見られました。


3. 国際交流

 いずれもアジアの国々を対象に、さまざまな原因から発達を阻害されている子どもたちの成長や生活の支援をするための活動が提案されていました。必要なときに必要な支援が実施される体制がない中で、タイムリーに必要な活動をどう創出していくか。発展途上国に対する資金のばらまきではなく、現地で自らが汗を流して試行錯誤しながら活動資金の工面からプログラムの創出まで一貫して進められている点では、学生ならではの、注目してよい分野として成長してきているといえるでしょう。
 日本がアジアの中で必要とされている役割を果たすために、地味で小さな活動ではありますが、示唆に富んだ重要な課題提起をしているように思われます。



4. 医療分野の定着

 活動の中身は、院外の家庭教師や子ども病院、病院内のコンサート、病棟支援など、将来医師になる人や医療関係者でないと作りにくいプログラムで、医療を含めたトータルな面から、病院という身体的な治療機関を補完したり、サポートしたりするものでした。 
 医師でありながら生活者としての視点も含め構築されている点に、これからの医療のあり方を示すものとして注目したいと思います。トータルケアシステムとして、とくに生活者である子どもの発達の側面に光を当てている点に注目します。イベント型の交流や学習サポートを越えたプログラムが、全国の病院に出てきています。今後は、病院ボランティアの厚みをつけていくような、多様なニーズをとらえた充実したプログラムへと広がっていく可能性を秘めていると思われます。
 自分の専門領域を生かしながら、なおかつ専門教育から一歩離れて膨らみをもたせた視点が出てきたのは、非常に喜ばしいことです。



5. その他

 今までの応募企画にはなかった音楽、農業など、学生のボランティア活動としてあってもいいと思いながらまだ芽が出てきていなかった分野に、今年は初めて応募が見られました。自然科学の領域、宇宙、企業との協働プログラムなど、さらなる創意工夫をしながら、いろいろな人と横につながった、大胆な提案が出てきてもよいのではないでしょうか。学生らしい、チャレンジ精神に富み、冒険心に満ちた活動を今後も期待しています。
 しかしながら同時に、審査会の後「爽やかな清涼剤を飲んだときのように、爽やかな風を吹き込んでもらえた」と審査員一同が実感したように、生き生きとした、未来志向型の学生たちの創造的な活動から大いに学ぶものがあったことを感謝するとともに、ますますの今後の活躍に、審査員一同、エールを送りたいと思います。

page top ▲