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第8回「ソニーマーケティング学生ボランティアファンド」では、全部で69件の応募がありました。大学別には、国立大学 13大学・公立大学4大学・私立大学 25大学、合計 42の大学から応募がありました
百年に一度あるかないかの金融危機で、経済は大混乱。こういう時こそ、若い感性を生かしたボランティアの健全な活動が社会をチェンジ(変革)してくれるのだと期待したい。ことし8回目を迎えたソニーマーケティング学生ボランティアファンドだが、経営的に厳しい時代にあっても揺るぎない信念で、学生の皆さんを支援していきたいと考えている。
さて、今回の応募件数をみてみると昨年の84件から69件(Aコース54件、Bコース15件)に減少している。これは前回と違い、特定の大学、あるいは先生の指導による組織的な応募がなかった影響と思われるが、東京が減り、全国からまんべんなく応募がきている点からすると、むしろ歓迎すべきかもしれない。ちなみに、ことし初めて応募があったのが香川県。残る未応募県は、秋田、福島、福井、和歌山、島根、愛媛の6県を残すのみとなった。
活動地域を分析しよう。国内57件に対し、海外13件となっており、海外は大半が東南アジアで、フィリピン、タイ、ベトナムなどが多いが、1件だけアフリカ(ケニア)もあり、横浜で開催されたTICAD(アフリカ開発会議)でこの地域が注目された影響がうかがえる。
分野別では、例年通り、子ども、地域コミュニティ、教育が多数を占めた。まず身近なテーマからというのは自然だし、そういう問題意識の持ち方、誰もが気軽に参加できることこそ、ボランティア本来のあるべき姿であり歓迎したい。興味深いのは、ボランティア振興・啓発が初めて1位になったことである。ボランティア活動の活発化に伴い、これを支援する団体、拠点づくりの組織が求められているのが原因だろう。学生ボランティアセンターなどは、NPO(非営利組織)でいえば中間支援組織に当たるもので、今後のボランティアの一層の活発化につながるものと期待される。また、昨年まで多かった「環境」は、件数そのものは減少したものの、質的にみると内容が向上している。数だけでは評価はできないと感じた。
このように評価できる点が多い一方で、心配なこともある。例えば、ファンドをほとんど交通費に充当しようといういささか安易とも思われる応募がいくつかあった。ボランティア活動を通して、社会に貢献する、他の人たちの役に立つということ自体もちろん重要だが、そこにいたるプロセスもまた大事であることを是非理解していただきたい。まずは、皆さんが、創意工夫して可能な限りの努力をしていただきたい。大学の仲間、街の住民、企業の人たち、行政関係者、実はそういう人たちの多くが、皆さんのボランティア活動に関心を持ち、応援したいと考えているのである。そういう人たちの善意を引き出し、それをつなぐことで、ボランティアのもうひとつの側面、すなわち、連帯とか共感、ネットワークの重要性に気づくことができるはずである。いろんな支援も得られるであろう。さらに必要なものも出てくる。自分たちでできること、周りに応援してもらえること、そして、ソニーマーケティングが支援できることを、立体的に考えたらどうだろう。そうすることで、このファンドの意味も出てくるし、学生時代を有意義に過ごし、社会に出ても前向きに生きられる何かを得ることができる、そう信じたいと思う。
2008年12月24日 審査委員長 原田勝広
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