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商品情報・ストアサイバーショットParty-shot(パーティーショット) 「Party-shot」が生まれるまで。
your personal photographer. Party-shot

「Party-shot」が生まれるまで。 〜日常に埋もれている“思い出”を救いだせ〜 楠部 祐三 企画担当 山下 雅房 企画担当 善積 真吾 設計担当

家族のだんらんや友達とのパーティーで、あなたの代わりに自動撮影してくれる、ソニーの新発明「Party-shot」。この全く新しい機能を持った製品は、どのように誕生したのか?その開発ストーリーをたどります。

「家族の写真に、撮影するお父さんが写らないのはさみしい」

「Party-shot」の出発点は今から数年前、あるカメラ好きの社員の体験に遡る。彼の名前は、善積真吾。ある日公園を散歩していた善積は、一組の親子が撮影している光景に出会う。見ると、父親は楽しく撮影しているが、当の被写体である子どもはあまり楽しそうではない様子。父親が撮影を終えて子どもと遊び始めると、子どもはイキイキとした表情をしていた。善積はふと思った。

『子どもを撮れば遊べないし、子どもと遊べば撮れない…。自分自身カメラをこよなく愛するものとして、お父さんが意思を持って子どもの写真を撮りたい気持ちはよくわかる。でも、子どもと遊んでいる、あの幸せあふれる光景も写真に残してあげたい。家族の写真の中に、家族の大切な一員であるお父さんが写らないのは第一さみしい。お父さんの撮る喜びを残しつつ、お父さんも写る新しい撮影手段はないだろうか…』

その後、社内の技術研修で偶然にも“好きなカメラをつくれ”という課題が出されたとき、善積の脳裏にあの親子がよぎった。『よし、自動撮影ができる機器をつくろう。カメラをカメラマンにしよう』。しかし、当時完成したものは、見た目も機能も未熟で、現在の「Party-shot」とは似ても似つかないものだった。

「社内の新しもの好きな人たちが、どんどん手伝ってくれたんです(笑)」

研修期間が終わり、商品企画とは遠い半導体開発部門に配属された善積は、自主的に「Party-shot」の研究開発を続けていく。通常業務を終え、帰宅後にはじめる作業は、ときに朝方まで続いたという。

『いやいや、仕事が忙しい時はさすがにサボりました。あと実は、一人ではなかったんです。同僚が興味を持ち、自発的に手伝ってくれたんです。ただ、私は電子系のエンジニアなので、専門外の問題は社内の各部署の人たちを訪ね相談しました。すると、みんな面白がって、熱心に協力してくれたんです。皆さん自分の仕事で手一杯なのに』

そんな日々が続いたある日、物語は急展開を迎える。

開発初期の試作品
「どうすれば小さく出来るか」という話をした後に、 職場の人があれよあれよという間に作ってくれたコンセプトモデル。 この形では多機種に対応させることはできなかった

「仲間内から社内へ。ついにプロジェクト化が決定した」

某月某日、善積は社内の交流会にて、試作段階の「Party-shot」を披露する機会に恵まれる。その席で、ソニー上層部を含む参加者たちから脚光を浴び、「Party-shot」は一気に現実味を帯びてきたのだ。

トップマネージメントのサポートを得て、すぐさまプロジェクト化が決定。関連する部署からチームメンバーが次々に招集された。一般的に、メンバーが増えるほど、開発当初のコンセプトが揺らぐことも多々あるが…。この疑問に、商品企画を担当した楠部が答える。

『善積のアイディアは素晴らしかった。だから、私はこれを守ろうと決意しました。とかくデジタル製品は多機能を追い求めがちですが、それだとユーザーが使い方に迷ってしまう…。「Party-shot」は家族の皆さんにシンプルに使ってもらうことが大切。“余計な企画をしない”それが今回の商品企画の仕事だと思いました』

同じく商品企画を担当した山下も続けて言う。

『善積の話を聞いて、僕自身、思い当たる節がありました。たとえば、友達同士で食事するとき、会話に夢中になって、写真を撮り忘れることもしばしば。撮ったとしても、みんなカメラを意識した固い表情の記念写真的なものばかり。でも、この「Party-shot」があれば、楽しんでいるみんなの自然な表情を自動的に記録できる。今まで埋もれていた日常の“思い出”を残せると思ったんです』

「サイバーショットの進化に、助けられた」

メンバー全員が同じ考えを分かち合い、開発に邁進するなか、“サイバーショット”自体の進化も追い風となる。顔検出機能「顔キメ」、「スマイルシャッター」、「おまかせオート撮影モード」など新しい機能が続々と生まれ、「Party-shot」の“自動撮影”実現のための課題が次々にクリアされていったのだ。

『現在の「Party-shot」は“サイバーショット”をセットするだけで自動撮影を楽しめますが、当時はこれに苦心していました。たとえば、パーティーなど暗い室内で使うときは、自分でカメラを設定し直す必要があったんです。でも、感度が飛躍的に向上した新開発“Exmor R(エクスモア アール)” CMOSセンサーのおかげで、暗いところでも自動でキレイに撮影できるようになりました。使う状況によって、面倒な設定をなくすことができ、使いやすさを大幅に向上できたんです。“サイバーショット”の進化がなければ、開発はもっと難航していたかも知れません』

「最後の最後まで、こだわりをつらぬき通せ」

ようやく完成が視野に入りはじめたある日、ドイツで開催される世界最大規模の映像機器イベント“Photokina(フォトキナ)2008”への出品が、上司より言い渡される。それは、「Party-shot」に対する一般ユーザーの反応を見定め、製品化への試金石とするためだった。

突如現れた、高いハードル。“Photokina(フォトキナ)2008”出品時を振り返り、メンバーたちはこう述懐する。

『イベント前夜は不安で眠れなかった(笑)。「Party-shot」は前例のない製品だけに、一般ユーザーに受け入れられるか、全くわかりませんでした』

ところが、この不安はすぐに打ち消される。開催地のドイツに出向くやいなや、現地スタッフがまず「おもしろい!」と驚き、その場で口々に「欲しい!」と言ってくれたのだ。イベントでも彼らが率先して来場者に触れ回り、現地メディアにも大きく取り上げられるなど、大好評を博した。

そして帰国後その結果を受け、ついに「Party-shot」の製品化が決定した。今度は量産化に向けて、製品改良の怒濤の日々がはじまる。ソニー上層部より通達された発売日は2009年9月4日、残された期間はわずかしかない。しかし、彼らチームのこだわりは、過酷なタイムリミットに屈しなかった。そのこだわりのひとつが「ワンタッチ着脱」。

『製品の耐久性を考えると、三脚のようにネジ止めでカメラを固定する方がはるかに簡単でした。でも、この「ワンタッチ着脱」はゆずれなかった。どうしても、ユーザーが撮りたいと思った瞬間、カメラをサッと外して撮れるようにしたかったんです。なぜなら、私たちはユーザー自身に“撮る楽しみ”を残しつつ、自動撮影という“新たな写真の楽しみ”を提供したかったから。実は、この着脱構造はたいへん難しく、最後まで修正が入りましたが、最終的には非常に満足のいくものに仕上がりました』

さらに、デザインにも注目してほしいと彼らは言う。

『一見、ただのカメラ台に見えるがそうじゃない。被写体の方に「Party-shot」を意識させないデザインを目指したんです。だから、回転してもカタチが変わらない円形に。カメラを意識させないからこそ、家族や友達の自然な表情が撮れますから』

細部にわたる改良を繰り返し、ついに2009年9月4日、「Party-shot」は発売された。最後に善積は言う。

『実は「Party-shot」という名前だけはずっと変わっていません。“Party”には、一般的なパーティーという意味の他にも、“仲間”という意味があります。つまり「Party-shot」は家族や友達のためのもの、さらには、みんなとの時間を記録してくれる新しい“仲間”でもあるんです。これをご覧になっている方、ぜひ一度、「Party-shot」に触れてください。きっと今までにない写真に出会えると思います』

取材後記:

取材終了後、彼らに「次のアイディアは?」と尋ねると、「空飛ぶカメラ。自由に飛びまわり、撮りたいものを撮ってきてくれるんです」と善積が即答。思わず笑ってしまうと、他のメンバーが一言、「コイツ、真剣なんですよ(笑)」。皆さんのまんざらでもない笑顔が印象的でした。

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