― 今回の開発スタートの経緯について、教えてください。
伊藤(商品企画)
RX100、RX100 IIの発売以来、ユーザーのみなさまからいただいていた声や、我々も3台目はこういうカメラにしたいという思いがあって、それらをもとに企画をスタートしました。「ポケットサイズの高画質」というRX100のコンセプトは、これまでの2台を通して受け入れていただけたと思っていますので、そのコンセプトはキープしたままで、RX100の集大成的な商品に向けて追い込んでいきました。
皆見(プロジェクトリーダー)
私はRX100の初号機から開発に携わっているのですが、その当時の商品コンセプトから何ひとつブレていません。品質や仕上がりに一切妥協がないものを、ユーザーのみなさまに満足していただける形で実現したいという意思は、初号機からRX100 IIそして今回と、一層熟成されていると思っています。
伊藤(商品企画)
大きな変更点のひとつはレンズです。ちょっとしたスナップや風景もよりダイナミックに切り取ることができるように、より広角にシフトしようということがまずありました。望遠でのレンズの明るさと最短撮影距離について、RX100、RX100 IIをご購入いただいたお客さまからの声を反映して、テレ端でもF2.8まで明るく、最短撮影距離もテレ端で30cmまで近づけるように改善しました。それからEVFの内蔵です。EVFをこのサイズに閉じこめるのはすごく難しいことなんですが、サイズをキープしたうえで性能も妥協せず、高精細なEVFを搭載することができました。
皆見(プロジェクトリーダー)
RX100のデザインはユーザーのみなさまからも大変好評で、私たちもこのデザインとサイズを非常に大切にしています。ですので、EVFを搭載するために本体サイズを大きくしようという考えは最初からありませんし、かといってEVF性能を妥協し本体サイズをどうにかキープするということもありません。「この形で収めるためにはどういった技術開発や工夫が必要か」を、集まった各担当がしっかり話し合って開発をスタートさせました。すべてにおいて、そのときある技術を集めて使うということではなく、実現するためには何をしなければならないかというイメージを全員で共有する。RX100シリーズはそういうアプローチで開発をすすめています。
田上(メカリーダー)
関わるスタッフは、設計部門はじめ、企画・マーケティング、そして製造工場スタッフがいます。その全員が同じ想いを共有できていたのではないでしょうか。
皆見(プロジェクトリーダー)
ここまで機能や部品を凝縮した製品ともなると、量産する製造工場のスタッフの方々も大変な思いをしています。製造工場を含めたワンソニーで想いをひとつにしたからこそ、このRX100 IIIを誕生させることができたと思っています。
― 想定したのはどのようなユーザー像でしたか?
伊藤(商品企画)
企画にあたっては2グループのユーザー層を想定しました。1つはスマートフォンのカメラやコンパクトデジタルカメラに満足がいかなくなって、より高画質なカメラにステップアップしたいというお客さま、もう1つはフルサイズなどの一眼カメラを使っている方で、日常の持ち歩きスナップ用として高画質の小型のものを求めるお客さまを想定しました。エントリーのお客さまからハイエンドのお客さままで満足していただける、使い勝手がいい上に一眼カメラのように自分の意図を反映して撮れるカメラにしなければいけない、それゆえ、レンズの明るさや最短撮影距離の改善はもちろん、一眼レフユーザーにもなじみのある焦点距離である24-70mmを採用したこだわりのレンズ仕様と、高精細なEVFの搭載を実現したいという話になりました。
皆見(プロジェクトリーダー)
おかげさまでRXシリーズは全機種、お客さまより高評価をいただいております。RX100 IIIは後継機種ということではなく、用途や好みで使い分けていただきたいと考えております。スマホでは撮れないキレイな画像を気軽に撮りたいという方はシンプルなRX100、マイクやフラッシュなどを付けて拡張性を楽しみたいという方はRX100 II、そして高倍率のレンズをお求めの方はRX10があります。RX1の画質については言うまでもありません。そういうラインナップがあるからこそ、今回24mm-70mmというレンズ仕様を提案でき、EVFを内蔵できたと思っています。
伊藤(商品企画)
今また、シンプルなRX100の評判が上がってきています。また、外付けマイクを取り付けて動画を撮りたいという方には依然としてRX100 IIが支持されています。そして、RX100 IIIは究極のオールインワンコンパクト。本当に用途に合わせて選んでいただけるラインナップ構成になっています。
皆見(プロジェクトリーダー)
ハイアマチュアやプロの方々にもサブカメラとして信頼し使っていただくため、シューティング道具としての完成度をさらに高めよう、というのが出発点でした。それが、内蔵EVF・内蔵NDフィルター・最短撮影距離の進化などに繋がっています。