確かにコンパクトカメラにしてはかなり大きなレンズだなと思ったけど、ここまで緻密に写っているとは…はじめてRX1のシャッターを切ったときは、信じられませんでした。高次元の性能を持つレンズを搭載し、イメージセンサーとレンズのマッチングを突き詰めると、これほどまでの描写力がでるなんて。今までのカメラの常識を超えているカメラ、それがRX1の第一印象でした。同時に、かつてない写りを目にして、撮りたいシーンがどんどん湧いてきました。そこで、RX1の撮影に選んだ地は、沖縄県・八重山諸島。亜熱帯の原色が織りなす大自然を前に、RX1ならどんな表現ができるのかじっくりと確かめてみたいと思ったのです。現地に到着し、海に向かう道すがら撮影した写真には、うっそうと繁り、折り重なる枝葉の造形、枝葉の間から降り注ぐ木漏れ日が、びっくりするほど繊細に描きだされていました(写真上)。このカメラを手にしたことで、僕の写真の世界が広がっていくのを感じました。
RX1の"今までのカメラの常識を超えた描写力"。それは、この夕景の写真を見れば一目瞭然でしょう。写真中央からやや左、遥か向こうにある岸辺を拡大してみると、そこにいる人物たちまではっきりと描写されているのがわかるはずです。肉眼では決して見られない、パソコンなどで拡大してはじめて確認できるという、今までのカメラではありえなかった世界です。さらに、階調も素晴らしい。大空に広がる淡いグラデーション、その夕空を写し鏡に、穏やかに揺れる海面も階調豊かに表現されています。このディテールのシャープな描写と、なめらかな階調表現を両立しているのも、RX1の大きな魅力だと思います。また、こういう風景撮影で、僕は、自分のイメージに合わせて、ちょっとアンバーにふってみようとか、作画しながら撮影するのですが、その際、RX1の高精細な液晶表示が非常に役立ちました。色の仕上がりが液晶表示に正確に反映されていて、想像であれこれ考えることなく、画づくりに集中できたのもありがたかったですね。
RX1は、マクロ撮影も魅力的だと思う。まずレンズ鏡筒のマクロ切り替えリングを回すと、マクロモードになるという機構が面白い。そして、僕が惚れ込んだのは、ぼけ味の素直さというか、美しさ。もちろん二線ぼけみたいなものは全くなく、クセのないキレイなぼけ味で非常にいいと思います。たとえば、このカップの写真は、背景が丸くキレイにぼけながらも、ガラスの表面を細かく見ると水滴の質感まで写っているところがスゴい。下の料理の写真もキャビアにピントが合いながら、そのすぐ後ろからフワッとぼけて印象的に仕上がっている。フルーツの写真も拡大していくと、パッションフルーツのなかの実の質感や、添えられたミントの産毛まで描写しながらも、バックの自然なぼけ味が気持ちいい。一般的に単焦点レンズはぼけ味がキレイだけど、そのなかでもRX1は群を抜いている気がしました。RX1には、35mm単焦点レンズに加え、高品位なマクロレンズも入っているようでしたね。
色彩へのこだわりにも、RX1は十分に応えてくれました。たとえば、左の写真にあるハイビスカスの花を見てみると、デジタルだとこういう赤色は飽和して、ベタっとした色味になってしまう場合が多いのですが、RX1は花びらの赤色のグラデーションが自然に再現できている。また、バナナの質感も非常に艶やかだし、フルーツの下に敷かれた葉の緑色もシャドウ部でありながら、つぶれることなく、きちんと描写されています。僕の経験上、一眼カメラでもここまで写ったことはないと思います。また、この写真はクリエイティブスタイルのビビッドで撮影していますが、RX1の色彩表現も僕の好み。ビビッドは決して派手にならずキレイに発色するし、スタンダードも地味すぎず自然な色彩を表現してくれます。もちろんシーンに応じて使い分けていますが、ビビッドは空のグラデーションなどもキレイにでるので多用していますね。RX1は、僕の色づくりにおいても、大きく貢献してくれました。