RX100MKIIは「顔」がいいですね。昔のカメラのような美しさがある。すっきりしていて高級な質感もあり、手にはずっしりとした重さが伝わってくる。それでいてコンパクトだから、レンズ交換式の大きな一眼カメラのように「撮影にいくぞ」というおおげさな意識を持たずに、ポケットに入れたり首から下げたり、いつでもどこへでも持っていける。今回は、事務所のある八丁堀から秋葉原、丸の内、有楽町あたりを歩いて撮影しました。カメラは、それぞれに合う撮影のテンポやリズムがあるように思いますRX100MKIIの場合は、軽快なんだけれど、せかせかしてないリズム。いつも持ち歩いて、撮ろうと決めたらじっくりと、一枚一枚優雅に撮る感じが似合っています。これは6月のある日、朝4時ごろから八丁堀を歩きはじめて、太陽が出るか出ないかの時間帯に撮った写真です。昼間は光が多すぎるので、僕はあまり撮らない。少ないときのほうが光に敏感になれます。日の出前か太陽が沈んでからが撮影開始です。明るさが刻々と変わって色も変わる。シャッターチャンスがいっぱいあります。
梅雨の晴れ間だったので、空が青いけれど、モワっとした湿度も伝わってきます。RX100MKIIのピントが合う速度や精度は予想以上に良かった。空だけ撮ってもサッと合います。それから、新しいステップズーム機能。このカメラは35mm判換算で28mmから100mmのちょうど使い勝手のいい焦点距離をカバーできています。僕はたいてい広角か望遠の端を使っていましたが、もうひとつぐらいステップズームで35mmとかを指定しておいて、あとは自分が動いて撮るようにすれば、フレーミングに集中できると思います。この写真を撮るときは可動式の液晶モニターを使って、胸の前でカメラを自然に構えました。ずっと上を向いていると首が痛くなるし、手が疲れてブレてきますから、このモニターは便利です。ちなみに、他の写真はほとんど外付けのビューファインダーを付けて撮っていました。両手と顔でカメラを安定させられるし、明るい日中に画面が見えないということもありません。何よりもファインダーがあると写真に集中できる。これが僕にとっては大きいですね。
これは、店先のアロハシャツをウィンドウ越しに撮っています。こういうのは歩いているからこそ出逢えるのです。移動速度が速くなればなるほどシャッターチャンスがなくなります。このカメラのルックスには徒歩が合っています。これは特にアロハシャツを撮りたかったわけではありません。シャツに当たっている光とガラスに映った街路樹の緑との重なり具合が印象的だったからポンと切り取りました。よく写真家仲間とも話すのですが、僕らは被写体をあまり見ていない。被写体は枯れた花でもなんでもいいんです。この光いいな、この影いいな、というように撮る。ビルを撮ろうとか雲を撮ろうではなくて、「いい光があるな」ということに注目するんです。そして、その光が印象的に見えるような構図を探す。よく、アマチュアカメラマン向けの講座で「この明るい部分がなければよりいいのに」と思うことがあります。多くの人が被写体にとらわれ過ぎて余計なものを入れてしまう。フォトグラフとは光で描くということです。光を印象的に見せることを考えれば、必然的に理にかなった構図になるはずんなんです。
被写体にとらわれていると「日の丸構図は良くない」などと気にするようになってしまう。写真を見る人は画面の中心に目が行きますから、日の丸構図こそ構図の基本です。僕はフォーカスエリアも真ん中固定です。そしてプログラムオートで撮ることが多い。最適な絞り値も感度も、カメラ側が考えてくれるからです。例えばプログラムオートなら回折現象が出るところまでは絞り込まない。いろんな意味で失敗をなくせます。僕はよく学校で、Pはプロフェッショナルかつパーフェクトなモードだと言っています。Aはアマチュアモード。SはスペシャルでMはマニアック。おまかせオートやPはカメラがカバーしてくれるけど、それ以外だと自己責任です。設定に気を取られるよりは構図やシーンに集中したい。何か違うなと思ったら初めて設定すればいい。気を配るのは露出補正だけですね。これはいろんなところで話していますが、素直にそうだと思ってくれる人と、そうではないという人がいます。撮りたいものがないならおまかせオート。撮りたいものが決まったらP、どう撮りたいかを決めたら絞りとシャッター速度を考える。それらは最後ですね。