暮石:"最高画質を、てのひらに"という商品コンセプトから、画質を極限まで追い込むことと、目標とするサイズを考慮して単焦点に決めました。ズームレンズは確かに便利ですし、現代のズームレンズは非常に高性能ですが、極限まで画質を突き詰めるとしたら単焦点の方が伸びしろが大きいですから。また焦点距離を35mmとした理由ですが、焦点距離に対しても「このカメラだからこそ撮れる写真とは何か?」ということを徹底的に突き詰める議論を繰り返しました。そこで導き出されたのは、やはり「この小ささだから撮れる写真」ということがキーワードになりました。「カメラの存在を感じさせないコンパクトボディだから可能な、被写体の懐に飛び込んでのポートレート。」「コンパクトだから持ち歩ける。街中、室内、あらゆるシーンでその瞬間を切り取る。」そういったシチュエーションを満たす焦点距離として35mmという結論に至りました。
金高:35mmという焦点距離が決まった後に、明るいレンズであること、それでいて小型・薄型も妥協せずに両立することを重視し、様々なレンズタイプを検討し、最終的にはカールツァイス社と協議してゾナーT*を採用しました。新開発の薄型非球面レンズをイメージセンサーの近くに配置することで、小型化と画面周辺部まで高い解像力を実現しています。この解像力へのこだわりはレンズ設計にもあらわれています。今回、手ぶれ補正レンズを搭載していないことの理由として、より「小型化を追求するため」のみならず、「さらに解像感を追求する」ということを目的に今回は敢えて採用をしませんでした。
金高:また、フォーカスレンズが駆動した際の収差変動を抑えるために、フローティング機構を採用し、被写体の距離によらず良好な描写性能を得られるよう配慮して設計しました。
大島:AFに関してもきびきびと撮影が楽しめるように、精度だけではなく速度も突き詰めています。今回採用されているフォーカス用レンズは、Eマウントの単焦点レンズよりも重量比で言うと10数倍重く なっています。RX1は2群フォーカス制御のうえ、絞りユニットも一緒に動くため一眼の単焦点レンズ群と比べても駆動部分がかなり重くなっています。そこで課題になるのが、モーターが負荷に負けて、動かすべき2つのフォーカスレンズが遅れてついてきてしまいピントのずれが発生してしまう場合があります。逆に速度の向上だけを考えてモーターを動作させると、今度は駆動音が大きくなりすぎることや、狙った位置にレンズを止めること自体も難しくなります。これら、AFの課題解決にむけてもRX1専用の駆動処理を開発しており、 その成果として駆動音は最小限に、それでいて駆動速度も高速に、体感的にもレスポンス低下を感じさせない駆動を実現しています。
金高:さらに、小型化とマクロ撮影を両立させるために導入したのが、切り替え式のマクロモードです。レンズの一部を手動で繰り出すことでフォーカスレンズの可動範囲を有効活用し、最短撮影距離20cmを実現しました。