写真家の想いと作品

萩原史郎 RX10を持って風景のなかへ 見えなかったものが見えてくる

Profile: 1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、「季刊(*現在は隔月刊)風景写真」の創刊に携わる。編集・発行人を経験、退職後フリーのカメラマンに転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。日本自然科学写真協会会員(SSP)、日本風景写真家協会会員(JSPA)。

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チルト可動式モニターが カメラの「安全性」につながる

滝の写真は北軽井沢の「魚止の滝」で撮りました。晩秋の雰囲気を出すために、落ち葉がいい感じで岩についていたところを狙ってカメラを低く構えました。

RX10はチルト可動式モニターのおかげで、こういう写真がとても撮りやすくなっています。いまだに、なぜかハイエンドカメラになるほどバリアングルモニターがないことが多いのですが、プロやハイアマチュアほどいろんなアングルで撮りたいのです。

きゅうくつな姿勢でないということは集中力につながるし、長い時間粘れるということです。こういうモニターが使えるということがわかっていて風景に対峙するのと、そんなアングルはキツイからやめておこうというのとでは、大きな差となって結果に現れてくるんです。

これは比較的安全な岩場に三脚を低く立てていますが、それでも足元は滑ります。転べば自分もカメラも水浸しです。そういう場所で可動式モニターは、身体に負担がなく、安全につながります。疲れると集中力が途切れて危ない。撮影の後で安全に帰ってくることはとても大事なことなんです。

この写真は夕方だったので使っていませんが、NDフィルターが内蔵されているのも便利ですね。こういう場所でフィルターをつけたり外したりするのは結構つらいもの。私もフィルターを水の中に落とした経験があります。RX10はレンズ交換をしなくても良いだけでなく、NDフィルター装着も省略できるという意味でも「安全なカメラ」だといえますね。

高感度性能とレンズ一体型は 一瞬を逃さないために

撮影を終えて帰り道に長野県の小谷村の峠道を走っていると、木のシルエットもキレイで空も焼け、下には雲海のような雲が広がっている場所を通りかかりました。これは、と思ってクルマを停めて急いで撮ったものです。

事前に実験していてRX10は高感度でもキレイだと言うのがわかっていたということもあり、手ブレを避けるために一連の撮影は基本的にISOオートで撮っていました。この写真もISOオートで、結果としてISO1250にまでなったのに、ノイズっぽく見えない。すごいですよね。

時間は日が落ちかけているギリギリで、この一瞬後に太陽は陰ってしまいました。三脚にゆっくり据えていたらこの色には間に合わなかったと思います。クルマの運転をしていた弟が駐車位置を決めているとき、僕はもう撮っていました。

いい撮影場所に行ったらまず手持ちでとりあえずシャッターを切って、それから三脚に据えるということをよくやるんです。色が消えてしまう、雲が動く、光が抜けてしまう・・・そんなときにRX10だと感度を気にすることもないし、レンズを交換している手間も惜しいから安心してこれだけ持っていける。

操作性もいい。レンズ周りのリングで絞りを調整できるなど、かつて慣れ親しんだフィルムカメラの操作に近い工夫が随所にあります。レンズ一体型で、レンズ交換時のゴミの進入を気にすることもないから、基本的に屋外で撮る風景写真にはとても強いカメラだと思います。ズーミングも滑らかです。

機動力のあるRX10を下げて 歩きためらわずシャッターを切ろう

風景写真を撮るアマチュアの方は、有名なポイントで撮ることが多いと思います。それはもちろん良いことですが、有名なポイントの前後にいい風景があるものです。三脚を背負い込んでしまうと道中撮らなくなってしまうんですよ。決まり切った風景だけを撮って帰ってきてしまう。それではもったいない。

RX10のような機動力があるカメラを持ったら、
オヤと思ったものにレンズを向けてためらわ
ずにシャッターを切ってほしいですね。足元
の風景とか、ちょっと見上げてみるとか。
RX10だけを首に下げて歩いて、気軽にシャッ
ターを切る。実際、僕がこのカメラだけを
持ってある池の周りを何気なく巡ってみたら、
いい写真がとてもたくさんありました。その
場に何分いたかという短い時間ですが、きち
んとした形になってくれるんです。

作品の幅が広がるし、今まで気がつかなかっ
た風景が見えるようになる。メインの一台と
してもサブとしてでも、これは間違いなくそ
れができるカメラです。