このコンパクトさで、大判プリントにも耐えられる解像感と柔らかなぼけ。この2つは驚きでしたね。圧倒的な画質と圧倒的なコンパクトさには、写真家をも唸らせるものがあります。自分の写真家としてのスタイルは、緻密な風景に奥行き感を持たせ、いかに立体感を出せるかということです。「DSC-RX100」は、ピントがあう部分は力強くキレがあり、それ以外の部分では自然なぼけが表現できる。パッと見て一眼カメラとそん色がないほどのクオリティでした。
たとえば、この2枚の写真(作例1/作例2)。作例1では、麦の穂の細かい線まで描きだすシャープさがあって、かつ柔らかなぼけが立体感を出してくれています。作例2のように、しっとりしたコケの風合いや滑りのある質感もうまく表現できていますよね。
実は今回、「DSC-RX100」を使ってみて一眼カメラではなかなか撮れないもの、このカメラでなくては撮れないものがあることもわかりました。
(作例3)のエゾリスは警戒心が強く、大きなカメラをバッグから取り出し、レンズ交換の作業をしていると逃げてしまい普通の人は撮るのが難しい被写体です。でも、カメラが小さいおかげで心を開いてくれた(笑)。少し遠くから1枚撮って、徐々に近づいても逃げないことがわかって撮れた1枚です。
そしてもう1つ、「DSC-RX100」でなくては撮れない風景がこれです(作例4)。ワイド側の最短5cmまで寄って、かつ開放付近(f2.2)で撮った写真。かわいらしい針葉樹の実生(みしょう)を大きく、そして森の風景の広がりを表現しつつ、ここまで背景がぼけるんですよね。
こういう広角で接写する写真は「DSC-RX100」ならではだと思います。一眼では広角レンズの最短距離は短くても20cm くらいですから、28mmの広角で小さな被写体を大きく、背景をここまでぼかすのも難しい。