季節の移ろいを感じながら、
写真の秋を楽しむ
秋が深まるほどに美しく染まる樹木。
野山が赤や黄に変わっていく光景に私たちは季節の移ろいを感じ、
古くから「もみじ狩り」としてその趣を楽しんできました。
そこで今回は、紅葉撮影で知っておきたい基礎知識と
おすすめの広角レンズを写真家 福田健太郎氏にお聞きしました。
あなたもαとともに写真の秋を楽しんでみませんか。
秋が深まるほどに美しく染まる樹木。
野山が赤や黄に変わっていく光景に私たちは季節の移ろいを感じ、
古くから「もみじ狩り」としてその趣を楽しんできました。
そこで今回は、紅葉撮影で知っておきたい基礎知識と
おすすめの広角レンズを写真家 福田健太郎氏にお聞きしました。
あなたもαとともに写真の秋を楽しんでみませんか。
紅葉の名所といっても毎年同じように色づくわけではなく、その年の天候や気温によって紅葉の鮮やかさが変わります。ですからシーズンの撮影計画を事前に決めることはせず、インターネットで常に情報収集して、そのとき一番キレイな紅葉スポットに出かけるようにしています。
有名な紅葉スポットなどは混雑するので、人が少ない早朝から撮影するようにしています。9月下旬といっても、山の上などは一日の寒暖差が激しく早朝は冷えこむので、一枚羽織れるダウンジャケットなどがあるといいと思います。
撮影地に着いたら、まずはくまなく歩いて撮影スポットを探索。晴れている日は、太陽の方向、つまり逆光方向に歩くと、太陽の光を透過した色鮮やかな紅葉を見つけることができます。また日中だけでなく、暖色の光で赤みが増す朝や夕方も狙い目です。
撮影モードは基本的に「Aモード」に設定しています。また、逆光で撮影することが多い紅葉撮影では、太陽の光が眩しく液晶画面が見づらいため、電子ビューファインダーを活用し、露出などを確認しながら撮影しています。
紅葉撮影では、観光ポスターのような美しい光景を撮りたい方も多いと思います。ただ、必ずしも素敵な紅葉シーンに毎回出会えるわけではありません。そのときは諦めてしまうのではなく、自分自身の目で、心惹かれる紅葉風景を探してみてください。自分ならではのイメージを表現できれば、写真の幅が広がり、紅葉撮影をさらに楽しめると思います。
長野県八ヶ岳の山麓で撮影しているとき、ふと空を見上げると秋らしい雲が泳いでいました。そこで色鮮やかな紅葉と組み合わせられる場所がないかと散策して撮影した一枚です。うろこ雲が漂う空をしっかり見せるために、ボディは35mmフルサイズセンサーを搭載したα7シリーズ、レンズは広角で撮れるVario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSSを選択。広い画角を生かして手前の木だけでなく奥の木々も小さく取り込み、風景の奥行や広がりを表現。さらに紅葉と枯れ木との対比を意識してフレーミングしました。
F8まで絞って手持ちで撮影していますが、レンズのシャープで抜けの良い描写と高画素なボディによる高い解像感によって、細やかな枝がつぶれることなく出ています。あまり奇をてらわずに、素直に見上げたときに感じた秋の爽やかな空気感を表現しました。また、空の青さと紅葉の色彩を際立たせるためにPLフィルターは必須です。
濡れた倒木の上にはらはらと散ったカエデと、絶えず流れ落ちる滝。この対比で移ろいゆく季節と秋のわびしさを表現しました。主役であるカエデを大きく捉えつつ、背景に滝を収めるには超広角域をカバーするレンズが必要です。そこでE 10-18mm F4 OSSを使い、広角端10mmのパースの効いた表現を生かして手前を大きく奥を小さく写し、遠近感を強調。
このレンズは最短撮影距離が25cmと短く、被写体に大きく寄れるのも特徴。レンズが触れそうになるくらい倒木に近づけて撮ることでダイナミックに捉えました。広角域をカバーしているレンズの割にはコンパクトで意外なほど軽いため、奥深い山のなかでも負担にならずに撮影を楽しめます。
秋の澄んだ空気感を表現するなら、気温が上昇する前の朝方がおすすめです。写真は日の出から1時間程経ち、光が暖色から白色に変わった頃に撮ったもの。清々しい空気感をそのまま写しとるために、クリアに描写できるSonnar T* E 24mm F1.8 ZAを選択。このレンズの高コントラストで抜けの良い描写がうまくシーンにはまりました。24mm(35mm判換算で36mm相当)の画角は人間の視野角にも近く、その場で自分が見ている風景を再現しやすい。
さらに枝の一本一本、葉の一枚一枚までしっかり解像しています。F8からF11くらいまで絞れば全面がシャープに撮れるので、とても立体感のある画になります。風景の奥行き感を出すために、右手前にも紅葉を配置。サイド光で陰影が生まれ、紅葉が鮮やかに浮かび上がる瞬間を捉えることができました。
紅葉はそのまま写しても素敵ですが、この作品ではひと工夫。水面を利用して被写体を抽象化し、色で日本の秋を感じてもらえるよう表現しました。水面の揺らぎを生かすためシャッタースピードは1/60秒に設定し、浮かぶ落ち葉にAFでピントを合わせて撮影。レンズはSonnar T* FE 35mm F2.8 ZAです。もともと35mmの画角が好きで多用しているのですが、このときは50mmくらいの画角に収めるためα6000に装着(35mm判換算で52.5mm相当)。黒が引き締まり、抜けの良い描写を発揮してくれました。コンパクトなのでα6000と合わせても500gもなく、首からぶら下げていても苦になりません。
針葉樹に囲まれた池のほとりで見つけた小さな秋。わずかに光を浴びたカエデが風に揺れる繊細な姿を、FE 70-200mm F4 G OSSの望遠側で引き寄せました。枝葉が斜めに垂れ下がるラインを意識し、下側に空間を残してフレーミング。周囲には家屋があるため、余計なものが入らないようにする際にも望遠レンズは有効です。構図は縦や横にしながら何枚も撮影して決めました。
光を受けたカエデと影に沈む背景、その明暗のメリハリをつけるため露出補正を-0.7に設定し、葉の色や形をぐっと浮かび上がらせ、さらに高コントラストなレンズがよりクリアに描写してくれました。また背景に落ちる木漏れ日を、点光源ぼけで表現。こうしたぼけ表現を生かしやすいのも望遠レンズならではです。
見事に染まったカエデの葉の美しさを、ぼけを生かしてより情緒的に表現した一枚。周囲をよく観察して、垂れ下がっている葉の形が整っているものを探し出して撮影しています。表現の要となるのがぼけ味。背景がなめらかにぼけるほど、ピントを合わせた葉っぱがより浮き上がって見えます。そのためレンズは、絞り開放でもシャープに写り、ぼけ味も美しい70-200mm F2.8 G SSM IIを選択しました。
このレンズはピントの合ったところがとにかくシャープで葉脈まで繊細に表現でき、そのわずか数センチ後ろから自然にぼけていきます。あとは手ブレに注意しながら撮るだけ。望遠ズームレンズなので、遠くの被写体を引き寄せるだけでなく、この写真のようにぼけを生かした表現も楽しめる。F2.8の明るさと、Gレンズのぼけ味は間違いなく撮れる世界が変わります。