豊かな彩りが時の流れとともに変化し、さまざまな表情を見せてくれる、日本の秋。
写真家の福田健太郎さんが「G Master」レンズで撮影した珠玉の作品とともに
風景との向き合い方や撮影テクニックなど、秋の風景撮影についてお話をお聞きしました。
自然を見つめ、
感じるままに秋を撮る
日本の秋は、季節の移ろいとともに刻々と色彩を変化させます。
深緑の葉がだんだんと赤や黄に色付き、やがては落葉していく。
植物たちが生き物として、冬を乗り越え生きのびるための
プロセスの一つとして紅葉があります。そんな紅葉の姿を見つめると、
私たち人間も同じ生き物として深く心を動かされます。
そうすると、風景の見方が変わり、
撮る写真も変わってくるのではないでしょうか。
自分が感じたものを、ストレートにそのまま撮影する。
お手本通りのきれいな写真を撮るのも良いのですが、
もっと柔軟に、感じたままに
秋の撮影を楽しんでほしいと思います。
写真家 福田健太郎
1973年、埼玉県川口市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信氏のアシスタントを経てフリーランスの写真家として活動を開始。日本を主なフィールドに、「森は魚を育てる」をキーワードとした生命の循環を見つめ続けている。公益社団法人 日本写真家協会会員
朝の光が描く、
秋色の水彩画
八幡平の大沼で、対岸のブナの森を撮影。早朝の穏やかな水面に朝もやが立ち、森の姿が水彩画のように写り込んだ印象的な部分を、FE 70-200mm F2.8 GM OSSで切り取りました。刻々と変化する雲間から差し込む朝日が、対岸の風景をスポットライトのように照らし出した瞬間を狙って撮影しています。朝の光は暖色系なので、紅葉の色をより一層引き立ててくれます。ホワイトバランスは日陰に設定し、温かみのある色を再現。「G Master」レンズは絞り開放から画面周辺部まで精細に描き出してくれますが、木々の細かい部分までよりシャープに表現したかったので、絞りはレンズの解像性能が一番得られると言われる開放絞りから2〜3段絞ったところに設定。このレンズの場合は開放絞りがF2.8なので、3段絞ったF8で撮影しています。
- 白くて目立ちやすい空はあえて入れず、主役の紅葉を際立たせる
- カメラの電子水準器で水平をとり、上下対称のフレーミングで安定感を
- 露出はアンダーめに設定し、画面上下を暗くすることで、中央へ視線を導く
使用したレンズ&アクセサリー:
暗がりに浮かび上がる、
燃えるような真紅
ここは、新潟県の弥彦山にある「紅葉谷」という紅葉の名所。じっくりと紅葉と向き合いたかったので、人が少ない早朝に訪れました。真紅に染まる紅葉を、FE 16-35mm F2.8 GMで撮影。早朝の谷あいは直射日光が少なく光が柔らかくフラットなので、繊細な紅葉の色調が再現できました。より深い赤を引き出すために、露出補正は0.5段から1段程度アンダーに。針葉樹の深い緑や木陰など、暗い色で紅葉を囲むようにして、暗がりに燃え上がる紅葉の姿を浮かび上がらせました。紅葉が密集するポイントを狙って撮影していますが、「G Master」レンズなら葉の一枚一枚まで細密に描写できます。クリエイティブスタイルは、コントラストやシャープネスが高めの「風景」モードに設定していますが、注意したいのは彩度やコントラスト、シャープネスを上げすぎないこと。自然が放つ美しい色合いや風合いを大切に、紅葉撮影を楽しんでほしいと思います。
使用したレンズ&アクセサリー:
透過光で紅葉の
きらめきを強調
柔らかい透過光を生かして、透明感のあるモミジの葉の輝きを表現した一枚。 FE 70-200mm F2.8 GM OSSの望遠側161mmで撮影しました。枝葉の間からのぞく白い空を背景にすることで、主役のモミジをより一層際立たせました。背景を大きくぼかしたいときは、できるだけ被写体に近づいて撮影することがポイント。また、主役にする葉は、重なりが少ない部分を選ぶと、葉の形をキレイに出すことができ、画面構成もしやすくなります。絞り開放で撮影するとピントが合っていても若干甘くなりがちですが、「G Master」レンズは美しいぼけ表現に加え、絞り開放時でも薄いモミジの葉の輪郭まで、キリッとシャープに描写できます。葉が風などで揺れてブレやすいので、シャッタースピードは速めの1/250秒に設定しています。
- 主役を際立たせるために、白い空がバックになるようにポジショニング
- 主役になる葉は、できるだけ重なりの少ない部分を選ぶと画面構成しやすい
使用したレンズ&アクセサリー:
季節の移ろいを、
画面の中で対比させる
落葉した木と紅葉を対比させて、季節の移ろいを表現した一枚。秋の撮影では紅葉を主役にと考えがちですが、この作品ではフォルムに面白さのある木をメインにしました。山あいの道路から撮影しているので、本来なら見上げる位置にある木々を平行に見ながら撮影しています。レンズの広角側17mmで被写体に近寄って、広角レンズならではの遠近感を生かして、四方に広がる木のリズムを強調。木が迫ってくるような勢いも演出できました。画面左下から斜め上に走る太い枝が紅葉と重なり、画面に一体感が生まれるアングルを探しながら撮影しました。FE 16-35mm F2.8 GMは、細密な描写で細かい部分まで紡ぎだしてくれるので、曇天の弱い光の中でもわずかな陰影をしっかりと再現して、作品に立体感が生まれました。
使用したレンズ&アクセサリー:
秋の深まりを予感させる、
渓流の紅葉
雨に濡れた紅葉を、橋の上から撮影。上から見下ろすことで、脇を流れる川との組み合わせの幅も広がります。白い流れをどこに入れたら紅葉が映えるかを考え、バランスよく入るポジションを探りました。シャッタースピードは川の流れを表現しながら、風で揺れる葉のブレが抑えられる1/4秒に設定。雨に濡れて暗くなった岩肌が、紅葉をさらに引き立てています。このしっとり感を損なわないように、露出はアンダーに設定。葉の表面反射を抑えるためPLフィルターを使用していますが、反射を少しだけ残してあげると、濡れた感じを出すことができます。雨の日は紅葉がしっとりと濡れて立体的に見えるので、ぜひ撮影にチャレンジしてみてほしいです。滑らないよう、くれぐれも足元には気をつけて。
三脚とリモートコマンダーは風景撮影の必須アイテム
解像感を大切にしたい風景撮影では、ブレを抑えるために三脚を使うことが多いです。また、シャッターを押す際のわずかな震動も影響するので、リモートコマンダーは欠かせません。セルフタイマーを使う方もいると思いますが、リモートコマンダーなら、太陽や風で刻々と変化する風景の表情を、自分がここだと思ったタイミングで撮影できます。
使用したレンズ&アクセサリー:
間を意識した構図で、
秋への想いを込める
高知県仁淀川町の山中で出会った紅葉。逆光で陰影が強く暗い背景に、紅葉の赤が際立っていました。フレームのすぐ上に太陽があり、かなり強い逆光の状況下では「G Master」レンズでも微少なフレアが出ることがあります。高コントラストでクリアに仕上げたいときには、黒い厚紙や帽子などで「ハレ切り」をするとよいでしょう。この作品では「間」の演出を考えて撮影しました。主役の紅葉を中央に置かず、落葉した木と対比させました。被写体との距離感には、撮影者の感情が現れます。この場合は、わざと離れて見ることで、寂しさを誘い出しています。ズームに頼らずに、自分で被写体との距離感を図りながら、間を生かした撮影を楽しんでみてください。
- 主役のモミジをあえて中心に配置せず、対比させた木との距離感のバランスを見ながらポジショニング
- 三角形と逆三角形のシルエットをパズルのように組み合わせ、形のおもしろさも演出
使用したレンズ&アクセサリー:
爽やかな秋の晴天を、
画面いっぱいに
逆光の透過光を受けた葉や花は、一層輝いて見えます。その効果を生かして、色とりどりに輝く紅葉を、広角ズームレンズのワイド側17mmで画面いっぱいに収めました。森の中の傾斜に寝転がるようにして、ローポジションから見上げて撮影したのですが、画面の中心に木々が集まっていくようなリズム感が生まれました。明るい紅葉に露出を合わせることで、木の幹がシルエットになり、明暗のメリハリも演出できたと思います。FE 16-35mm F2.8 GMは画面周辺部まで像が流れず再現してくれるので、このようなパースが効いた作品にも気兼ねなく挑戦できます。超広角での撮影は、ちょっとしたアングルやフレーミングの違いによって、木々の動きや表情が劇的に変わります。手持ち撮影でさまざまなアングルを試しながら、超広角撮影を楽しんでみましょう。
クリエイティブスタイルを活用して、紅葉の自然な色を再現
紅葉を撮影するときは、ホワイトバランスを「オート」、クリエイティブスタイルを「紅葉」モードに設定するのがおすすめです。「紅葉」モードは、赤と黄をより鮮やかに表現できます。彩度やコントラスト、シャープネスを上げたいときは「風景」モードに設定してみましょう。
使用したレンズ&アクセサリー:
夕日が照らしだす、
悠久の造形美
高知県土佐清水市の海岸沿い。秋の高い空に広がるうろこ雲と、悠久の時間が創りだした砂岩と泥岩の造形美をドラマチックに撮影したくて、陰影の強い夕方の光を待って撮影しました。露出をマイナス側に補正して、影を引き締め、光が当たる岩肌を浮き上がらせています。うろこ雲が際立つように、PLフィルターで空の色を鮮やかに。ホワイトバランスは、岩の赤みを強めながら空の青色もくすみなく再現できる「曇天」に設定し、暖色と寒色のコントラストを強調。三脚は使わず、手持ちで低いポジションから仰ぎ見るように撮ることで、岩のダイナミックさを演出しました。光や雲の状態が刻一刻と変化する夕方は、手持ちのほうがスムーズに撮影できます。夕日にカメラを向けがちなシーンも、反対側に目を向けると、素敵な風景が待っているかもしれません。
使用したレンズ&アクセサリー:
金色に輝く、
夕暮れのすすき野原
熊本の阿蘇で、夕日を受けて黄金色に染まったすすき野原を撮影。逆光でフレアやゴーストが出やすいシーンですが、「G Master」レンズは太陽を画面に入れてもクリアに再現。コントラストも高く、金色に輝く圧巻の風景を表現できました。手持ちでカメラの高さを調整しながら、奥行きと広がりが一番感じられるアングルで撮影。低めの雲が画面を引き締めるアクセントになり、空と大地に一体感が生まれました。Dレンジオプティマイザーは「AUTO」に設定。画面右奥の山陰の部分もしっかり描きだし、どこまでも続くすすきを表現。風が感じられるように、すすきの穂が自分に向かってくる瞬間を捉えました。秋の風や光を表現できた一枚だと思います。
Dレンジオプティマイザーで、暗部も目で見たままに再現
逆光など明暗差が激しいシーンでは、白とびや黒つぶれが起こりやすくなります。そんなときは、DレンジオプティマイザーをONに。金色に輝く夕日やすすきはそのままに、影になっている部分のディテールもしっかりと描きだして、目で見たままに再現できます。
使用したレンズ&アクセサリー:
心に響いた風景を、
鮮鋭に描きだす
ソニーのミラーレス専用設計レンズの最高峰、「G Master」レンズ。
その最大の特長は、圧倒的な解像性能。画面周辺部まで、
鮮明かつシャープ、高コントラストに描写。
木々の葉や枝など、風景の細部に至るまで緻密に描きだします。
また、 プレミアムレンズにふさわしい美しいぼけを追求。ピントが合った
シャープな部分から、背景の大きなぼけへ、柔らかくとろけるように
徐々にぼけていく描写は、作品に自然な立体感をもたらします。
「G Master」レンズが、風景撮影における表現の幅を広げます。
PLフィルターで、紅葉の深い赤やグラデーションを再現
順光の環境では、光が当たっている葉の表面から撮影したほうが、より紅葉の深い赤を表現できます。しかし、葉の表面が光を反射し、本来の色が出ないことがあります。そんなときは、光の反射をカットするPL(円偏光)フィルターを装着してみましょう。反射光を取り除くことで、深い赤やグラデーションが表現できます。
VF-CPAM2