露出補正は、見た目ではなく
イメージに合わせる
FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 200mm,
F4.0, 1/1000秒, ISO640, +2.3EV
「露出補正」は、見た目に近い明るさに調整するものだと思いがちですが、私は"自分の好きな表現に近づけるため"にこそ使って欲しいと思います。たとえば、明るい写真が好きなら明るく、暗めのイメージにまとめたいときには暗くすればいいのです。ただ、実際には同じ被写体でも、背景の明るさや光の当たり方で露出は変わるので、まず±0EVで撮って基準を決めてから、自分の好みの明るさに補正していくといいと思います。この桜の写真も、実際は背景が明るいため桜がかなり暗く写るのですが、全体を淡いピンク色でまとめたかったので、その桜の色がしっかりと出るまでプラス補正していきました。
白とび・黒つぶれも
写真表現のひとつ
FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/1250秒, ISO4000, +2.3EV
"白とび"や"黒つぶれ"は「いけないもの」と、多くの人が思いがちなのですが、そんなことはありません。このチューリップの写真では、+2.3EVにして周りの花びらをわざと白くとばすことで、花弁の美しい造形を浮かび上がらせました。"白とび"や"黒つぶれ"は気にせず、大胆に表現することで、新しい発見があると思います。
花撮影ワンポイントアドバイス
現場で露出をいろいろ
試してみること
露出補正に慣れていない方は、実際に補正値を一段ずつ変えて試してみましょう。「このシーンでこんな補正をかけたら、こういう感じになるんだな」と具体的なイメージをつかむことが大切です。露出補正のダイヤルでは−3.0EV〜+3.0EVまでですが、ファンクションメニューから選べば−5.0〜+5.0EVまで補正が可能なので、どのぐらい変化するか一度試してみるのもいいのではないかと思います。
※補正値を−3.0〜+3.0EVを越えて設定した場合、撮影画面では明るさは反映されません。記録画像のみ反映されます
前ぼけは、
ひとつ奥の被写体を狙う
FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 200mm,
F5.6, 1/1000秒, ISO200, ±0EV
主役となる花の美しさを際立たせてくれる前ぼけ表現ですが、ここで大切なのが被写体選び。つい手前の花に意識がとられがちですが、手前の花の隙間からひとつ奥の花にレンズを向けてください。奥の花にピントを合わせれば、簡単に前ぼけをつくれます。あとは被写体とレンズの距離を調整しながら、理想のぼけ具合を探していきましょう。このチューリップの写真では、透過光によって美しく浮かび上がる花弁にフォーカスし、それを引き立たせるために前ぼけが淡い赤色になるよう、レンズとの距離を調整しました。
視点を変えれば、
前ぼけがつくれる
前ぼけをつくるコツは、一本だけ離れていたり、飛び出したりしている花を見つけること。でも、花がたくさん咲いている場所では、周りの花にもピントが合ってしまうため、ぼけをうまくつくれません。そんなときは"視点を変えて見る"ことがポイント。群生している花々も実は微妙に高さが違うので、視点を変えれば背の高い一本を見つけられます。このネモフィラの写真も、カメラの位置を花よりも低くし、背の高い一本にフォーカスすることで、手前と奥の花がぼけるようにしています。
距離を変えると、ぼけ表現は
さらに広がる
"被写体との距離を大胆に変えてみる"ことで、ぼけ表現の幅はさらに広がります。たとえばこのチューリップの写真は、被写体から20mぐらい離れ、そこに咲いていた花を前ぼけに利用しました。視点や距離を変えることで、前ぼけに使えるものは至るところに見つけられます。セオリーに縛られないで、どんどん新しい表現にチャレンジしてみてください。
花撮影ワンポイントアドバイス
地味に見える場所こそ、
ぼけ表現をつくる
絶好のポイント
花の撮影に慣れていない方は、どうしてもたくさんの花が咲いている場所で被写体を探しがちです。でも、実際に私が被写体を選ぶポイントは、右の写真のように周りに花があまりない場所。その方が他の被写体と距離が離れているため、前後のぼけが断然つくりやすいのです。ただ周りに花がない地味な場所なので見落としがちですが、ぼけ表現にチャレンジする際にはこういう場所で被写体を探してみてください。
FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 200mm,
F4.0, 1/250秒, ISO100, -2.3EV
質感表現は、
見た目に惑わされないこと
FE 90mm F2.8 Macro G OSS, 90mm,
F2.8, 1/200秒, 1/50秒, ISO400, +0.3EV
花に日光が当たっている方が見た目はキレイなので、写真もキレイに撮れると思ってしまうのですが、実は質感を表現したいときには、日陰で撮影するのがポイント。直射日光が当たっている場所は色がとびやすく、バラなど花びらの多い花の場合どうしても影が強く出てしまいます。日陰であれば、明暗の差が少ないため、影が出にくく、このバラの写真のように花の色や質感をしっかりと描写することができます。
逆光を生かし、
輝く花の姿を写す
Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS,
35mm, F4.0, 1/5000秒, ISO400, ±0EV
質感を表現したいときには、明暗差のない日陰や曇天がおすすめですが、日なたで花びらが光っている雰囲気を出したいときには、逆光で撮ることがポイントです。カメラを構えたときに、太陽が正面あるいは斜め前にある位置から撮れば、透過光によって花が光り輝く姿を撮影できます。
花撮影ワンポイントアドバイス
青空と花のコントラストが美しい季節
梅雨前のこの季節は青空が澄み切って美しい時期でもあり、青空をバックに花を撮影するのもおすすめです。青空を美しく撮りたいときに大切なのは、順光で撮ることがポイント。さらに花に寄り過ぎると、のっぺりとした印象になるので、花は小さめに配置した方がキレイにまとまります。
Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS,
16mm, F16, 1/160秒, ISO200, ±0EV