はじめに〜
カメラの基本的特徴
ミスなく撮るためのオート機能
デジタル一眼カメラα(アルファ)は、静止画だけでなく動画撮影のオート機能も優れています。専門的知識がなくても本体のMOVIEボタンを押すだけで、カメラまかせできれいな動画を撮影することができます。
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暗ければ「より明るく」、
明るければ「より暗く」
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暗いシーンをカメラまかせで撮影すると…
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明るく撮れるが、ノイズが発生してしまう場合がある
例えば暗い場所での撮影なら、カメラは自動で絞りを開けたり、ISO感度を上げたりしてなるべく明るく撮ろうとします。これは静止画撮影における「AUTO」での撮影と同じことで、撮影者の意図や力量に関係なく、どなたでも間違いなく撮影を楽しんでいただくためのカメラの基本的な機能と言えます。
しかし、ある程度カメラ経験のある方はそのクオリティーに物足りなさを感じるかもしれません。それは、この時カメラが最優先にしているのが 「失敗なく確実に撮りきる」ことだからです。
自分らしい表現のために
デジタル一眼カメラαは、静止画撮影と同様に、動画でも「マニュアル」やさまざまな機能を活用して撮影することができます。
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ユーザー自らのコントロールで、カメラやレンズの高いポテンシャルを引き出すことで、レンズの被写界深度を生かした“ぼけ”のある表現や、印象的なスローモーション、統一感のある色調など、よりきれいな、より自分らしい表現を追求することができます。
次の章からは、デジタル一眼カメラαでの動画撮影初級者の方向けに、基礎的な知識とカメラの設定方法などをご紹介します。静止画撮影の基本知識をお持ちであればそれほど難しいことではありませんので、ぜひご覧いただき、新たな表現世界にチャレンジしてください。
動画撮影の基礎知識
動画撮影には、静止画撮影とは異なる「動画」ならではのセオリーがあります。動画の仕組みや静止画との違いをあらかじめ理解していただくことで、より自分らしい表現づくりがしやすくなるはずです。
フレームレート
動画は、静止画の集まりです。アニメーションやパラパラ漫画と同じように、少しずつ違う静止画を連続して見せることで、被写体が動いているように見せています。
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動画を構成している1コマの静止画を「フレーム」、1秒間の動画で見せるフレームのコマ数を「フレームレート」と言い、単位として一般的に使われるのが、FPS(frames per second)です。
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例えば、地上デジタルなどのテレビ放送の映像は1秒間に30フレーム、映画は24フレームで撮影されているものが一般的です。このコマ数が多いほど、なめらかで自然な映像になります。
また、写真に比べて、大量のデータを高速で記録する必要があるので、メモリーカードは、大容量でより高速な転送規格に対応したものがおすすめです。
※メモリーカードによっては、規格の条件に合わないため、撮影できない場合があります
露出のコントロール
カメラに取り込む光の量をコントロールする「露出」は、表現の作り込みや作品の仕上がりに影響する重要な要素です。露出は、「絞り(F値)」「ISO感度」「シャッタースピード(SS)」で成り立っており、この3つのバランスによって表現の変化がもたらされます。
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一般的に、写真(静止画)の場合は、この3つすべてをコントロールしながら撮影をされているかと思います。
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一方、動画の場合は、シャッタースピードは「固定」しての撮影が一般的です。残りの絞りとISO感度で露出をコントロールすることになります。
そして、シャッタースピードの設定は、先述のフレームレートによって決まります。これには動画ならではのルールがあり、一般的にフレームレートの2倍の分母分の1秒と言われています。ぴったりな数字がない場合は、一番近いシャッタースピードに設定します。
フレームレート | シャッタースピード |
---|---|
24p | 1/50秒 |
30p | 1/60秒 |
60p | 1/125秒 |
120p | 1/250秒 |
つまり、フレームレートが24pならシャッタースピードは1/50秒、30pなら1/60秒といった数字が基本値となります。
TIPS「登録呼び出し」を活用しましょう
シャッタースピードなど、静止画と動画では設定する値が大きく異なるため、写真と動画を1台のカメラで撮影される際は注意が必要です。
「登録呼び出し」を搭載したモデルをお使いであれば、「写真用」と「動画用」のそれぞれの設定をあらかじめ登録しておき、いざというときにさっと呼び出せるようにしておきましょう。
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異なる設定でも、モードダイヤルなどで簡単に呼び出せます
※登録呼び出し方法について、詳しくはカメラのヘルプガイドをご覧ください
被写体ブレ(モーションブラー)
写真撮影に精通された方だと、1/50秒や1/60秒といった動画撮影における適切なシャッタースピードについて、とても遅いと感じられるのではないでしょうか。ただ、それには理由があります。
一瞬を切り取る「静止画」では、動きの速い被写体を撮影する場合、被写体がブレないようにシャッタースピードを速くするのが一般的です。
一方「動画」では、動きがなめらかに見えるように、適切な被写体ブレ(モーションブラー)があった方がよいと言われ、シャッタースピードは遅く設定するのが基本です。
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1/1000秒
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1/60秒
フレーム単位で見ると左の写真が成功で、右の写真はブレた失敗作品に感じるかもしれませんが、動画として連続再生すると左はカクついた動きになり、右の方がより自然に動いているように見えます。
照明のちらつき対策
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蛍光灯やネオンサインはフリッカーが起こりやすい
室内や夜間の撮影では、照明の明滅により撮影画面に横筋が写り込んだり、画面の一部の色合いが変化することがあります。蛍光灯などの照明はずっと光っているように見えますが、実は高速で明滅を繰り返しています。この明滅とシャッターのタイミングがズレたときにちらつき(フリッカー現象)が起こります。
フリッカー現象を防ぐ方法
明滅の周期は居住エリアごとの電源の周波数で決まっており、シャッタースピードを明滅のタイミングに合わせればフリッカーが防げます。
-
東日本エリア 50Hz
-
シャッタースピード 1/50秒か1/100秒
-
西日本エリア 60Hz
-
シャッタースピード 1/60秒か1/125秒
動画撮影時の基本設定
デジタル一眼カメラαでの動画撮影時の主な設定例をご紹介します。お持ちのαで初めて動画を撮影する際の参考にしてください。
以降では、それぞれの項目について設定理由を解説します。個人ごと、撮影するテーマごとに最適な設定は他にもありますので、好みの設定値を見つけてください。
設定項目 | おすすめの設定値 |
---|---|
記録方式 | XAVC S HD |
記録設定 | 30p 50M |
シャッター スピード |
1/60秒 |
露出/ISO感度 | ISO AUTO |
絞り(F値) | なるべく小さく |
ホワイトバランス (WB) |
AWB (できれば適宜変更) |
Point1解像度
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はじめに、「解像度」を決めましょう。
MENUから【記録方式】で、8K(7680×4320)/4K(3840×2160)/HD(1920×1080)のいずれかを選択します。解像度が高い8K、4Kはきめ細やかな画質で撮影できますが、データ量が大きいためメモリーカードへの記録可能時間も短くなり、編集時のPCの負担も余計にかかります。これから動画を始めるという方は、まずは扱いやすく高画質なHD解像度から始めてみてはいかがでしょうか。
※記録方式はカメラによって異なります。詳しくはカメラのヘルプガイドをご覧ください
Point2フレームレート
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次に、【記録設定】で「フレームレート」を決めます。
フレームレートとは、1秒間の動画で見せる静止画の枚数のことで、カメラの設定画面では24p、30p、60p、120pなどから選択できます(機種により異なります)。
この数値が大きくなるほど単位時間あたりのフレーム数が増えるので、なめらかな映像になります。表現したい内容によって、好みのフレームレートを選択してください。
120pは、PCの編集でよりなめらかなスローモーション映像(最大5倍スロー/24p)を作る際におすすめの設定です。
おすすめ設定例
- 初めて動画を撮影する方は、テレビなどでも一般的なフレームレートに合わせて、30pか60pから試してみるのがおすすめです。60pで撮影しておけば、PCでの編集時に2倍までのスローモーションをカクつかせずに再現できます(書き出し時24p、30pの場合)。
- 編集は苦手だが、映画っぽい表現で撮影・再生(撮って出し)したいという方は、一般的な映画と同等のフレーム数である24pで撮影してみるとよいでしょう。
- シネマティックな表現をしたい、編集での自由度もなるべく高い状態で撮影したい場合は、60pで。編集時に24pにすることで、最大2.5倍のスローモーションも再現できます。
Point3シャッタースピード
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フレームレートが決まったら、「シャッタースピード」を設定します。シャッタースピードは、フレームレートの2倍の分母分の1秒が適しているといわれています。つまり、フレームレートが30pのときは1/60秒となります。また、60pのときは1/120秒、24pのときは1/48秒となりますが、カメラでは設定できないので、一番数値が近いシャッタースピードを選択します。室内での撮影などでは、照明のちらつき(フリッカー)対策を考慮してください。
フレームレート | シャッタースピード |
---|---|
30p | 1/60秒 |
60p | 1/125秒 |
24p | 1/50秒 |
室内 フリッカー対策 |
東日本:1/50秒か1/100秒 西日本:1/60秒か1/125秒 |
Point4絞りとISO感度
フレームレートとシャッタースピードが決まったら、絞り(F値)とISO感度を設定します。
絞りは使用するレンズにもよりますが、開放に近い値で背景をぼかしたい方が多いと思います。日中の屋外などでは明るくなりすぎるので、市販の「NDフィルター」で取り込む光を調節するとよいでしょう。
ISO感度は、数値を上げるとノイズが出やすくなるので、なるべく低い数値に設定するのがおすすめです。初めて動画を撮影する方は、AUTOに設定してもよいでしょう。
Point5ホワイトバランス
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電球の光(左)は黄色っぽく、太陽光(右)は青っぽい色がついている
光はその種類によって、さまざまな色や特徴を持っています。ホワイトバランスは、撮影環境での光の色の影響を補正して、白を白く写すための機能です。初心者の方は、オートホワイトバランス(AWB)で始めてみましょう。
TIPSオートホワイトバランスのメリット・デメリット
オートホワイトバランス(AWB)に設定すると、太陽が雲で隠れたときや、室内に移動したときなど、光の状態に応じて自動的にホワイトバランスが変更されます。便利ですが、それによりシーンごとに色味が変わり、編集でつないだときに違和感を生じる原因になるかもしれません。気になる方は、シーンや状況に応じて妥当なものを設定することをおすすめします。
αならではの便利な機能
αならではの便利な機能をご紹介します。PCなどの編集機材を使わなくても、こだわりの表現がカメラだけで手軽に楽しめるので、初心者の方におすすめです。
クリエイティブスタイル/クリエイティブルック
同じ被写体であっても、色合い、色の濃さ、明るさ、コントラスト、シャープさなど、さまざまな要素の組み合わせをコントロールすることで、 作品の印象は変わります。
これら多くの要素を簡単に設定できる機能が「クリエイティブスタイル」「クリエイティブルック」です。カメラにプリセットされた複数のモードから選ぶだけでイメージに合った画づくりができ、モードごとの細かな画質調整も可能です。撮影後に編集ソフトなどでじっくりと仕上げる方法もありますが、クリエイティブスタイルまたはクリエイティブルックを活用いただくことで、撮影段階で好みの画質に整えることができます。
※クリエイティブスタイル/クリエイティブルック搭載モデルおよび操作方法について、詳しくはカメラの商品情報ページまたはヘルプガイドをご覧ください
クリエイティブスタイル
- モード:13種類
スタンダード/ビビッド/ニュートラル/クリア/ディープ/ライト/ポートレート/風景/夕景/夜景/紅葉/白黒/セピア
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ビビッド
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夕景
- モードごとに3項目の画質調整が可能
コントラスト/彩度/シャープネス
クリエイティブルック
- モード:10種類
ST/PT/NT/VV/VV2/FL/IN/SH/BW/SE
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FL
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IN
- モードごとに8項目の画質調整が可能
コントラスト/ハイライト/シャドウ/フェード/彩度/シャープネス/シャープネスレンジ/明瞭度
クリエイティブルックについて、詳しくはこちらもご覧ください。
スロー&クイックモーション
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スローモーション映像は、通常は60pや120pなどのフレームレートで撮影した映像をPCなどの編集機材を使って作成するため、手間がかかります。αにはスロー&クイックモーションが搭載されているので、カメラだけで手軽にスローモーション/クイックモーション映像が撮影できます。ダイヤルを「S&Q」に合わせて、記録設定やフレームレートを選ぶだけなので、操作も簡単です。
※スロー&クイックモーション撮影(S&Q)搭載モデルおよび操作方法について、詳しくはカメラの商品情報ページまたはヘルプガイドをご覧ください