α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional style プロが語る撮影の流儀

写真家

福田 健太郎

愛用のボディ/レンズ α7R III & FE 16-35mm F2.8 GM

愛用のボディ/レンズ

α7R III &
FE 16-35mm F2.8 GM

α7R III & FE 16-35mm F2.8 GM

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、写真家の福田健太郎氏の撮影スタイルをご紹介します。

大切なのは、感じたままに、自然体で撮れること

私は日本の風景を求めて、全国各地を旅しながら撮影していますが、
たとえ同じ場所を訪れたとしても、天候や光によって、自然はまったく違った表情を見せてくれます。
そんな刹那というべき光景を永遠に記憶しておきたい。そんな想いから、
まだ見たことのない光景を求めて、シャッターを切り続けています。
私がカメラという道具に求めるのは、こうした自分の心が動いた光景を自然体で撮れること。
その時の感情を逃さないよう、画づくりをスムーズに行えることが大切です。だから、操作に気を使うことなく、自然体で被写体に向き合えるように、風景撮影にあわせたカスタマイズをしています。

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 18mm, F8, 1/250秒, ISO100

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 18mm, F8, 1/250秒, ISO100

私の撮影スタイル

α7R III
α7R III

カスタムボタンは、画づくりに集中するため

上面のカスタムボタン
背面のカスタムボタン

風景撮影では、外光の影響を受けないように、基本的に電子ビューファインダーで画づくりを行っています。そのため、使用頻度の高い「ISO感度」と「ホワイトバランス」をシャッターボタン近くのC1・C2ボタンに設定し、ファインダーをのぞきながら、これらの設定を変更してイメージした画を追い込んでいます。
また、野に咲く花をローポジションで狙うときなどには、液晶モニターを上向きにして撮影するため、背面のC3ボタンに「再生」を割り当てることで、撮影後の画像チェックが楽にできるようにしています。普段はオートフォーカスを使って撮影しますが、逆光時などピントが合わせにくい場合はマニュアルフォーカスを使うため、「フォーカスセット」をC4ボタンに設定し、ピント拡大などに利用しています。

撮影モードは「マニュアル(M)」が多く、後ダイヤルに「絞り」前ダイヤルには「シャッタースピード」を設定しています。撮影時は、まず親指でF値を絞りながら被写界深度を決めた後、人差し指でシャッタースピードのダイヤルを素早く回しながら露出を細かく調整しています。いわゆる絞り優先モードのような使いかたですね。ただ、同じ風景をさまざまなアングルで撮影するときは、フレーミングは変えても露出は変えたくないことも多いので、常に露出を固定できるマニュアルが便利ですね。

上面のダイヤル設定

撮影モードは「マニュアル(M)」が多く、後ダイヤルに「絞り」、前前ダイヤルには「シャッタースピード」を設定しています。撮影時は、まず親指でF値を絞りながら被写界深度を決めた後、人差し指でシャッタースピードのダイヤルを素早く回しながら露出を細かく調整しています。いわゆる絞り優先モードのような使いかたですね。
ただ、同じ風景をさまざまなアングルで撮影するときは、フレーミングは変えても露出は変えたくないことも多いので、常に露出を固定できるマニュアルが便利ですね。

ピント合わせは、数ミリ単位でこだわる

ピント拡大初期倍率

ピント拡大初期倍率
(通常は1倍から始まるところを6.2倍からに変更可能)

シャッター半押しAF

シャッター半押しAF
(通常は「入」が設定されている)

基本的にはオートフォーカスを使いながら、DMFやタッチフォーカスでさらにピント位置を細かく調整していきますが、その際に重宝しているのが、「ピント拡大機能」です。例えば、森林の撮影では、隣り合わせの葉っぱ、そのどちらかにピントを合わせるかで雰囲気がまったく違ってくるため、ミリ単位でピント位置を追い込めるピント拡大が便利です。頻繁に使う機能なので初期倍率を6.2倍に設定して即時性を高めています。
このようにレリーズ前にピントを合わせ込んでいるため、レリーズ時にフォーカスが再作動しないように、シャッター半押し時のAF設定とプリAF設定をOFFにし、オートフォーカスの操作自体は背面のAF-ONボタンを使用して行っています。

ファンクションメニューは、
眼前の風景に即応できるように

ファンクションメニュー

福田健太郎氏のファンクションメニュー設定

ファンクションメニューには撮影でよく使う機能を登録しています。例えば、シーンによっては、エフェクトをかけた方が自分の中のイメージが広がっていく場合があり、「ピクチャーエフェクト(図の⑤)」を登録しています。
普段は3:2で撮影していますが、景色によってはワイドな16:9の方が映える場合もあるため、「横縦比(図の⑫)」を登録して目の前の景色によって画角をすぐに変えられるようにしています。α7R IIIくらいの解像度があれば、撮影後にトリミングするという手法もありますが、それだと写真から緊張感がなくなってしまう気がするんですね。私は目の前の風景と向き合い、できるだけ現場で作品を完成させるように心がけています。

五感を集中させ、
レリーズに想いを込める

マジックテープで常に本体にリモートコマンダーを装着している福田氏のα7R III

マジックテープで常に本体にリモートコマンダーを装着している福田氏のα7R III

風景撮影に欠かせないのが、リモートコマンダーです。解像度の高いα7R IIIでは、シャッターボタンを押す際のわずかな振動もブレとして目につきますから。そのため、メカシャッターによるカメラブレを抑えるように、電子先幕シャッターも常にONにしています。
さらに、リモートコマンダーでなければならないもうひとつの理由があります。例えば、風景をセルフタイマーで撮る方もいらっしゃいますが、太陽の光や風で刻一刻と風景の表情は変わっていきます。そこで私はリモートコマンダーを手に、目の前の光景に五感を集中させながら、ここだというタイミングでレリーズしています。そうすると、自分の気持ちまで写り込んでいる感じがするんです。風景撮影に興味のある方は、ぜひ一度試してみてください。

勝負の一本

G Master

FE 16-35mm F2.8 GM

FE 16-35mm F2.8 GM

心が動いた光景を、細密に描きだすレンズ

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 20mm, F16, 1秒, ISO100

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 20mm, F16, 1秒, ISO100

風景撮影で手放せないのは、このFE 16-35mm F2.8 GM です。細密な風景を描写したいときには、どうしても四隅が気になってしまうのですが、このレンズはワイド端でも周辺部の画像が流れず、心置きなく撮影できます。
この渓谷を写した作品では、樹木に絡まったツタや水の流れ、岩の苔などの質感はもちろん、現場の湿度まで描き出すことができたと思います。

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 16mm, F3.2, 15秒, ISO12800

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 16mm, F3.2, 15秒, ISO12800

さらに、F2.8 というレンズの明るさは星空などの低照度のシーンでも真価を発揮します。この星空の作品では、細部の描写もさることながら、撮影のしやすさも感動的でした。暗闇でも被写体が分かるので、普通にフレーミングできるし、ピントの山もはっきり分かるため、苦労することなく星のひと粒にもピントを合わせることができました。

※掲載の撮影データに一部、誤りがありました。訂正してお詫びいたします。ご指摘いただいたオーナー様に感謝いたします。

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 23mm, F2.8, 1/15秒, ISO200

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 23mm, F2.8, 1/15秒, ISO200

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 16mm, F8, 1/200秒, ISO200

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 16mm, F8, 1/200秒, ISO200

このレンズを手にした方は、ぜひ風景と対話するように撮影してほしいと思います。ワイド端で近づいても、背景をなめらかにぼかして、主役の被写体を緻密に描写できますし、また一歩引いてあげると、目の前の情景を見たままに再現してくれます。このレンズは、自分の感じた世界を無限に表現できる一本だと確信しています。

写真家 福田 健太郎
ワンポイントアドバイス

福田流、装備の心得

ふだんの撮影では歩きやすいリュック型のカメラバッグの中に、いろいろな風景に対応するための広角、標準、望遠のレンズセットをはじめ、三脚やブロワーなどを収納しています。ブロワーは、突然の雨にも大活躍してくれるアイテムで、レンズについた水滴を布で拭くとにじんでしまうのですが、ブロワーで水滴を吹き飛ばせば、そんな心配もありません。
撮影機材以外で欠かせないのが、道に迷わないためのGPS、さらにドリップ式コーヒーセットですね。撮影の合間にリラックスするなど楽しみながら撮影した方が、心のゆとりが生まれ、良い作品が生まれる気がします。ぜひ皆さんも、風景を撮影するときは、自然の中の時間も楽しんでみてください。

愛用のバックパック「KATA」(現在はマンフロットに統合)
バックパックの中身
バックパックの中身

愛用のバックパックは「KATA」(現在はマンフロットに統合)。上下2気室に分かれ、ファスナーによって大きく開き、カメラ機材が取り出しやすく、扱いやすい。サイズも程よく、デザイン性の高さも気に入って長く愛用しています

福田氏のカメラバッグの中身

アクセサリー

その他

  • カメラのレインカバー、GPS、ドリップ式コーヒーセット

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流の使いかたを
見つけてください。

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 23mm, F14, 1/60秒, ISO200

α7R III, FE 16-35mm F2.8 GM, 23mm, F14, 1/60秒, ISO200