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α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional style プロフェッショナルが語る撮影の流儀

写真家

井上 浩輝

愛用のボディ/レンズ α7R IV & FE 400mm F2.8 GM OSS

愛用のボディ/レンズ

α7R IV & FE 400mm F2.8 GM OSS

α7R IV & FE 400mm F2.8 GM OSS

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、写真家の井上浩輝さんの撮影スタイルをご紹介します。

動物たちの
いきいきとした瞬間を
逃したくない

素敵な光景とともに、いきいきとしている動物たちの姿を豊かに写し止めたい。この思いをかなえることができる撮影スポットやアングルを探すことに、僕は多くの時間を費やしています。その中で、帯同するカメラには、「高速かつ正確なAF」と「高画素」を求めています。たとえば、何もない白雪の丘を、ぽつんとキタキツネが歩いている。このようなシーンでは、動物にピントが合っていることはもちろん、臨場感あふれる背景の解像感や、被写体を際立たせる美しいぼけ表現も必要です。また、そのような瞬間は、必ずしも長時間待ったのちにやってくるとは限らず、突如として訪れることもある。そうすると、ときにレンズの焦点距離がもの足りないこともあるのです。そんなとき、高画素のカメラであれば、あとからトリミングをすることだってできます。このように、場所選びやカメラの性能に貪欲にこだわり続けることが、最高の一枚を撮り残すことにつながっていると僕は信じています。

α7R II,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 198mm, F2.8, 1/640秒, ISO100

α7R II,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 198mm, F2.8, 1/640秒, ISO100

私の撮影スタイル

α7R III
α7R III (ILCE-7RM3)

進化するAFを、
柔軟に使いこなす

C1ボタン:ブライトモニタリング、C2ボタン:フォーカスエリア
α7R IV,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  171mm,  F4,  1/1000秒, ISO125

α7R IV,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  171mm,  F4,  1/1000秒, ISO125

暗闇でも迷わずにさっと操作したい機能と、とっさのときにワンアクションで完了させたい機能。僕はこの2つの機能を、各カスタムボタンに割り当てています。C1ボタンには、暗闇でも迷わずにさっと操作したい機能の「ブライトモニタリング」を設定しています。この機能を使うと、薄暗いところで動物の気配がするときに、人間の目では見えなかった動物の姿が見えてくるのです。風景を撮影するときは星景写真の構図の調整に便利なのですが、野生動物の撮影では暗視カメラのように使うこともできるという、おもしろい機能です。C2ボタンには、とっさのときにワンアクションで完了させたい機能の「フォーカスエリア」を設定しています。α9やα7R IIIの登場以降、αのAF性能は目を見張るほどに進化を遂げていますが、エリアの設定を活用することで、その性能をよりいっそう生かすことができます。たとえば動物対応の瞳AFでは、動物以外の部分にピントが合うのを防ぐため、リアルタイムトラッキングやフレキシブルスポットAFを使って、比較的狭いエリアで動物の瞳を検出させるようにしていますが、急に動物が近づいてきて瞳の位置がAF枠から大きく外れると、瞳AFが動作しなくなります。そこで、「あぁ、近づいてくるなぁ」と思ったらとっさにAFエリアをワイドに変更すると、瞳AFを使った撮影がスムーズに行えます。このとき、使用しないフォーカスエリアを非表示設定にすると、さらにすばやく切り替えられます。

AF-ONボタン:AFオン、C3ボタン:レーティング(★はひとつのみ)、C4ボタン:手ブレ補正 入/切
登録呼び出し3:置きピン(AF-ON)撮影

僕もかつてはAF-ON機能(親指AF操作)を使用していましたが、AF-Cの進化によってAFを常時機能させているほうが撮影が楽になり、「AF-ONでピントを合わせてから構図を取る」というプロセスが不要になりました。特に、動物対応の「リアルタイム瞳AF」が搭載されてからは、シャッターボタン半押しで、簡単に動物の瞳にピントが合った撮影ができるようなりました。 とはいえ、どうしてもMFで置きピンをしたいときには、背面のAF-ONボタンを機能させます。AFをまったく使わない撮影になるものの、とっさに自動でピントを合わせたいときもあるからです。このとき、シャッターボタン半押しAFをオフにしなければならないので、置きピンで撮影することがありそうなときは、その設定を登録呼び出し3に設定することが多いです。そうすれば、ダイヤルをカチカチと回すだけで、シャッター半押しAFとAF-ONを行き来することができます。

シーン別の設定で
突然の出会いを捉える

登録呼び出し1:動物と飛行機の撮影、登録呼び出し2:風景の撮影、登録呼び出し3:動画撮影
動物 飛行機 風景
シャッター
スピード
1/1250秒 1/1250秒 1/50秒
絞り F2.8 F8 F11
ISO AUTO
(1600まで)
AUTO
(1600まで)
100
ドライブ
モード
連写HI+ 連写HI+ セルフタイマー
2秒/リモコン
手ブレ補正

僕が主に被写体としているものは、動物、飛行機、風景の3つ。それぞれの設定で大きく異なるのは、シャッタースピード、絞り、ISO、そして手ブレ補正の入/切です。被写体別に、上記の表に示した設定が初期値として必要です。僕が北海道で撮影をしているとき、こんなことがよくあります。風景の撮影が終わり次の現場に向かおうとした瞬間、背後からかわいいキタキツネがひょこっと顔を出す。また、次の現場へ向かい運転をしていたら、森の小径に素敵なエゾシカがすくっと立っている。とっさに撮ろうとしてシャッターボタンを押すのですが、シャッターが切れない。風景撮影ではセルフタイマー2秒に設定することが多いので、連写はもちろん、一枚目のシャッターすら切ることができません。どうにかシャッターを切れても、シャッタースピードが遅い。そうこうするうちに、せっかく出会った動物がいなくなってしまうのです。そんなことが起きないように、登録呼び出しに「動物と飛行機の撮影」用と「風景の撮影」用の設定をあらかじめ登録しておき、いかなるときもさっと呼び出せるようにしています。

登録呼び出し1(動物と飛行機の撮影):α7 III,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F2.8  1/1250秒,  ISO640

登録呼び出し1(動物と飛行機の撮影):
α7 III,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F2.8  1/1250秒,  ISO640

登録呼び出し2(風景の撮影):α9,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  84mm,  F14  1/250秒,  ISO100

登録呼び出し2(風景の撮影):
α9,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  84mm,  F14  1/250秒,  ISO100

ダイヤモンドダストを
動画でも美しく撮るために

僕の仕事は静止画の撮影がメインですが、動画を撮影することもあります。ただ、シャッタースピードが1/1000秒前後の設定のままで撮影すると、パラパラとして落ち着かない雰囲気の映像になってしまうので、シャッタースピードをフレームレートに合わせて遅くして(フレームレート30pなら1/30〜1/60秒くらい)、1コマ1コマがそれぞれ少しブレている感じにすると映像が自然に見えてきます。感度を下げたり、絞ってシャッタースピードを遅くすると不自然感は解決しそうですが、厳冬の北海道の名物、ダイヤモンドダストを撮影する場合はどうでしょうか。空気中の水分が凍って舞っているところに日光が強く当たりキラキラ輝くのですが、この氷の粒からあえてピントを外すと光がぼけになります。そうです、絞りは開放側で撮影することになるのです。シャッタースピード1/1000秒前後、F2.8〜4、ISO100。これがダイヤモンドダストを静止画で撮るときのよくある設定です。動画撮影では映像が不自然にならないようにシャッタースピードを1/30〜1/60秒で撮影するので、NDフィルターを使用します。ここでわずらわしいのが、シャッタースピードを設定し直す手間です。ただでさえNDフィルターを装着したり脱着したりしていますから、シャッタースピードを変えるためにダイヤルをぐるぐるするのも面倒です。そこで、登録呼び出し3に動画撮影用の設定をあらかじめ登録しておくと便利です。

勝負の一本

G Master

FE 400mm F2.8 GM OSS

FE 400mm F2.8 GM OSS

生命の息吹を
切り取るための
最適な明るさと操作性

α7R IV,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F2.8,  1/30秒,  ISO100

α7R IV,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F2.8,  1/30秒,  ISO100

本格的な冬の到来を間もなく迎える北海道のある森にて。きっと住み心地が良い樹胴からじっとこちらを見つめるエゾフクロウをFE 400mm F2.8 GM OSSで捉えました。野生動物の撮影には、超望遠レンズが必須です。しかし、雪で明るくなる時期を除いて、薄暗いところでの撮影が多くなります。そんなとき、FE 400mm F2.8 GM OSSが持つF2.8の明るさが威力を発揮します。また、このレンズは解像感もぼけも素晴らしいので、主役となる被写体を印象的に際立たせる、作品づくりの心強い味方です。

α9,  FE 400mm F2.8 GM OSS + 1.4X Teleconverter,  560mm,  F4,  1/1250秒,  ISO800

α9,  FE 400mm F2.8 GM OSS + 1.4X Teleconverter,  560mm,  F4,  1/1250秒,  ISO800

木から下りたエゾリスが、花畑の真ん中からこちらをうかがう様子を撮影。FE 400mm F2.8 GM OSSは、解像感もぼけも素晴らしいレンズです。ふわふわの毛の一本一本まで描写しながら、美しいぼけでエゾリスの姿を引き立ててくれます。また、この作品では1.4倍のテレコンバーターを使用していますが、FE 400mm F2.8 GM OSSの性能を下げることなく、被写体により大きく迫れました。特にα9シリーズとの相性が良く、AFの速度や精度、シャープな描写、美しいぼけ味などが十分に発揮され、テレコンバーターを装着していることを強く感じさせません。

α9 II,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F8,  1/40秒,  ISO640

α9 II,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F8,  1/40秒,  ISO640

幹にあいた巣穴の中から顔をのぞかせるエゾモモンガを捉えた一枚。大口径で明るいレンズは野生動物の撮影に欠かせないものの、大きく重いレンズになると撮影自体はもちろん、動き回るのもたいへん。その点、約3kgのFE 400mm F2.8 GM OSSはバックパックにも収まってくれて使い勝手の良さを感じています。野生動物のなかには人間の姿には緊張をするものの、実は自動車にはあまり緊張をしない個体が少なくありません。そうなると、自動車の窓からの撮影も増えてきます。そのときに、取り回しの良さというのも、レンズ選びには重要な要素となってきます。車の外にレンズを向けようとすると、一般的な超望遠レンズは長すぎてフロントピラーにぶつかってしまいますが、 FE 400mm F2.8 GM OSSなら、フードを付けてもすっと窓の外に出して被写体に向けられる。これだけでもこのレンズを選ぶ大きな理由になります。

1.4X テレコンバーター

1.4X テレコンバーター

SEL14TC

1.4X テレコンバーター
写真家 井上 浩輝

ワンポイントアドバイス

井上流、
装備の心得

カメラは、α7R IVとα9 IIをメインに、RX100 VIをサブカメラとして携帯しています。レンズは、FE 400mm F2.8 GM OSSをはじめとした大口径望遠レンズから超広角、標準までの明るいレンズを主に5、6本ほど車載しています。カメラバッグはリュック型のものを使用しています。車を使っての移動に加えて年間100回前後のフライトをしながらの撮影のため、撮影機材をバックパックと大きなスーツケースに収めることにも毎度苦労するのですが、素敵な一枚が撮れたときのうれしさはその苦労の分だけいっそう大きくなります。

シカ柄の靴下が験担ぎのアイテム

カメラが入ったバックパックには、験担ぎのアイテムとしてシカ柄の靴下を入れています。傑作を撮影したときは、なぜかいつもシカ柄の靴下を履いていたからです。3年前にそのお気に入りの靴下のかかとに大きな穴が開いてしまい、かなり落ち込んだのですが、それ以来、シカの刺しゅうや柄が入っている靴下を持ち歩くようになりました。なかなか被写体に出会えないときや、心細くなったときに、そっとシカの柄に触るとうまくいくような気がしています。

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流のαの使いかたを
見つけてください。

α9,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F2.8,  1/1000秒,  ISO800

α9,  FE 400mm F2.8 GM OSS,  400mm,  F2.8,  1/1000秒,  ISO800

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