α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional style プロが語る撮影の流儀

写真家

清家 道子

愛用のボディ/レンズ α7R IV & FE 100mm F2.8 STF GM OSS

愛用のボディ/レンズ

α7R IV & FE 100mm
F2.8 STF GM OSS

α7R IV & FE 100mm F2.8 STF GM OSS

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、写真家の清家道子氏の撮影スタイルをご紹介します。

愛する故郷の知られざる美しさを
発信しつづける

私は以前、日本各地の絶景を訪ねて撮影していましたが、あるとき、地元九州にまだ世間に知られていない素晴らしい風景がたくさんあることに気付きました。九州は海に囲まれていて、山や渓流もあり、自然がぎゅっと詰まっている場所。地元の人しか知らないような美しい風景を発見し、写真で発信することが私の使命だと思っています。撮影で心がけているのは、よく観察すること。じっくりと周囲を見渡し、場所を変えたり見る角度を変えたりしながら、自分が感じた一番美しい風景を切り取っています。写真を始めた頃、師事していた丹地敏明先生には「人と同じ写真は撮るな。自分の目で見て、良いと思ったところだけを撮れ」とよく言われました。その教えを胸に、自分にしか撮れない写真を撮りつづけていきたいと思っています。

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F8,  1/400秒,  ISO100

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F8,  1/400秒,  ISO100

私の撮影スタイル

α7R IV
α7R IV

見たまま、感じたままの美しさを撮るために

上面のカスタムボタン C1ボタン:ホワイトバランス、C2ボタン:ドライブモード
α7R IV,  FE 12-24mm F4 G,  12mm,  F16,  6秒,  ISO50

α7R IV,  FE 12-24mm F4 G,  12mm,  F16,  6秒,  ISO50

C1ボタンには、ホワイトバランスを設定しています。もともとRAWで撮ることが多かったので、ホワイトバランスを気にしたことがあまりなかったのですが、いろいろと設定を変えて試してみたとき、色味で表現の幅が広がることを再認識しました。以来、風景撮影では「太陽光」や「日陰」などをよく使っています。

C2ボタンには、ドライブモードを設定しています。私は水辺で撮影することが多いのですが、低い位置からスローシャッターで撮りたいときなど、ケーブルが水に浸かってしまうためレリーズが使えないことがあります。そんなときは、ドライブモードを「セルフタイマー」の2秒に設定して撮影しています。手持ち撮影時、シャッターショックでブレるのを防ぎたいときにも「セルフタイマー」の2秒や5秒が役立ちます。また、私は星景など夜間の撮影もよく行うので、C4ボタンにはブライトモニタリングを設定しようか検討しているところです。

明暗差が大きいシーンでも細部までこだわりたい

背面のカスタムボタン C3ボタン:Dレンジオプティマイザー
α7R IV,  FE 16-35mm F2.8 GM,  35mm,  F16,  1/20秒,  ISO250

α7R IV,  FE 16-35mm F2.8 GM,  35mm,  F16,  1/20秒,  ISO250

使用頻度の高いDレンジオプティマイザーをC3ボタンに設定しています。この機能は、明暗差の大きいシーンで明るさを自動補正してくれるものですが、逆光で黒くつぶれがちな影の部分も、細部まで見たままに表現できます。補正の強さは5段階から選ぶことができるので、被写体の明るさや光の状況に合わせて細かく設定値を変えています。

勝負の一本

G Master

FE 100mm F2.8 STF GM OSS

FE 100mm F2.8 STF GM OSS

ぼけ、解像、多彩な色の描写に感じる、
限りない可能性

α7R III,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/160秒,  ISO400

α7R III,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/160秒,  ISO400

私がFE 100mm F2.8 STF GM OSSに惚れ込むきっかけとなった一枚。手前にあるミツマタの花は、やわらかくぼけているのに、ぼけの形状がしっかりしていて透明感がある、このレンズでなければ表現できないぼけ描写です。色を美しく表現できるのも、このレンズの大きな魅力。αが描きだす透明で混じり気のない「純色」を、余すことなく引き出してくれます。また、100mmのレンズはパースが付きにくいので、林の木々をまっすぐに歪みなく表現したいときにも役立ちます。

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/160秒,  ISO500

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/160秒,  ISO500

この作品は、手前にある紅葉が大きくぼけて、その色だけが奥にある木のシルエットに残ったもの。これも、FE 100mm F2.8 STF GM OSSにしかできない表現です。パレットで絵の具を混ぜ合わせたような色の滲みがおもしろく、まだまだ表現の可能性を秘めたレンズだと思いました。こういったイメージ的な世界を、これからもっと、このレンズとともに追求していきたいと考えています。αのファインダーは、ぼけ具合が反映された仕上がりを見ることができるので、たくさん枚数を撮らなくても思い通りの表現ができます。こんな予測のつかない表現も、αだから発見できたのではないかと思います。

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/160秒,  ISO640

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/160秒,  ISO640

たとえば、桜を透過光で撮影するときもFE 100mm F2.8 STF GM OSSなら、透明感のあるピュアな色彩を表現できます。ピントが合っていない部分の優しいぼけと独特のやわらかな「にじみ」が、このレンズでしか表現できない味わいのある写真にしています。逆光を利用してハイキーに設定し、水彩画を描くようなイメージで撮影しました。実際には、この桜は少し見頃を過ぎていて中央の桜以外は散りかかっていたのですが、このレンズの力を借りて、美しい部分だけを強調することができました。撮影の際には絞りを開放に設定しファインダーを覗きながら、目当ての桜とその周りの溶け具合を確認してシャッターを切っています。できあがりがそのままファインダーで確認できるαならではの撮影法です。

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F16,  1/80秒,  ISO100

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F16,  1/80秒,  ISO100

画面中央に小さく写っている鳥の細い脚までくっきりと描き出せる

画面中央に小さく写っている鳥の細い脚までくっきりと描き出せる

画面のすみずみまで高い解像性能で、干潟のディテールまで緻密に表現

画面のすみずみまで高い解像性能で、干潟のディテールまで緻密に表現

ここは、大分県の真玉海岸。干潟の美しさに惹かれて、かれこれ50回以上は通って撮影している場所です。FE 100mm F2.8 STF GM OSSは、解像性能もすばらしいレンズ。中央に小さく写っている鳥の細い脚まではっきりわかるほどの高い解像感で、拡大して見たときには本当に驚きました。画面の中央だけでなく、すみずみまでシャープに描写できるので、干潟の様子も緻密に表現できたと思います。100mmの単焦点レンズは、撮影場所が限られるので、風景の撮影には難しさがあります。でもこのレンズには、それでも使いたいと思わせる魅力があります。自分にしか撮れない写真が撮れたという実感が湧いてきて、使いこなせたときの喜びもひとしおです。

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/6400秒,  ISO160

α7R IV,  FE 100mm F2.8 STF GM OSS,  100mm,  F5.6,  1/6400秒,  ISO160

秋の夕暮れ、自宅の近くで撮影した一枚。ゆるゆると空気が漂うようにぼけていながら、ススキの花穂の小さなとげまで緻密に描く解像感は、FE 100mm F2.8 STF GM OSSならではの表現だと思います。特に、太陽がゆらめいているように見えるぼけ味は、このレンズにしか出せないのではないでしょうか。「G Master」レンズは逆光耐性にも優れているので、ゴーストやフレアが出にくく、構図の幅が広がります。絶景まで足を運ばなくても、レンズの力を生かせば何気ない風景が素敵な一枚になることを、ひしひしと感じました。

Gmaster

FE 100mm F2.8 STF GM OSS

SEL100F28GM

写真家 清家 道子
ワンポイントアドバイス

清家流、装備の心得

私は体が小さくて、大きなカメラバッグだと身動きがとれなくなるので、自分の体に合った小さめのバッグを使用しています。レンズはバッグに入る本数だけ、厳選して持っていきます。使用頻度の高いFE 16-35mm F2.8 GMはカメラに装着し、すぐに取り出せるバッグの上部へ。夜の撮影で重宝するのが、ソーラー式のランタン。主にレンズ交換や歩行の照明として使用していますが、撮影時にはあえてライトとして活用することもあります。また、水辺での撮影では、膝まで水につかることが多いので、長靴は必需品。車中泊用の寝袋などと一緒に、いつも車に載せています。渓流など滑りやすい場所では、ソールがフェルト素材の鮎足袋が活躍しています。

上下2層に収納スペースが分かれたロープロ製のバックパック。レインカバーが付いていて、雨の日や水辺での使い勝手も良好。太陽光で充電できるランタンは、ランドポート社製。ぺちゃんこに折りたためるので、携帯に便利。

清家氏のカメラバッグの中身

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流のαの使いかたを
見つけてください。

α7R IV,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  165mm,  F2.8,  1/8000秒,  ISO500

α7R IV,  FE 70-200mm F2.8 GM OSS,  165mm,  F2.8,  1/8000秒,  ISO500