私の撮影スタイル
野鳥の動きや種類から、最適なフォーカスを選ぶ
僕は撮影での使用頻度が高い順にボタンをカスタマイズしていますが、C1ボタンには一番頻繁に使うフォーカスモードを設定しています。フォーカスモードは、止まっている鳥を撮るときには「シングルAF(AF-S)」、動いている鳥を撮るときは「コンティニュアスAF(AF-C)」に設定しています。リモート撮影で置きピンにすることも多いので、その際には鳥が止まる場所をあらかじめ把握しておいて、鳥の大きさに合わせた箱などを置き、AFでピントを合わせてから誤作動しないようにマニュアルフォーカスにして撮影しています。
「AF被写体追従感度」は、「2」を基準値にして、鳥の種類によって設定を変更しています。たとえば、直線的に飛ぶコハクチョウなどを撮る場合には、AFが敏感に反応する「4」に設定し、獲物を探してヒラヒラと舞うように飛ぶコミミズクというフクロウなど撮影する場合には「1(粘る)」に変更しています。ハクチョウやサギなど直線的に飛ぶ鳥は動きを予測しやすいのですが、動きが不規則な鳥の場合は「1(粘る)」にした方がとらえやすい気がします。
C2ボタンには、使用頻度が2番目に高いフォーカスエリアを設定しています。止まっている鳥を撮るときには「フレキシブルスポット(M)」、飛んでいる鳥は、「ゾーン」もしくは「ワイド」のどちらかで撮影しています。以前は測距点を決めて撮影していたのですが、α7R IIIはAFの追随性能が高いので、「コンティニュアスAF(AF-C)」にして、エリアを「ワイド」にしておけば、画面の端に被写体がいるときでも十分つかまえてくれるので、とても重宝しています。また、事前のリサーチでどこに鳥が飛んでくるのかが分かっているのであれば、その付近にフォーカス範囲を狭めておくことで、AFで鳥をつかまえやすくなります。
至近距離での撮影に欠かせない、サイレント撮影
野鳥は特にシャッター音を警戒するので、「サイレント撮影」をC3ボタンに設定しています。止まっている鳥はローリングシャッター歪みの心配がないのでサイレントで撮影し、飛んでいる鳥はメカシャッターで撮影と、状況に応じて使い分けています。特に至近距離で撮影するときに、鳥を驚かしてしまうと何時間も戻って来ないこともあるので、サイレント撮影のできるミラーレスカメラは最適ですね。あと、撮影モードはマニュアル露出で、「ISO AUTO」で撮影しています。高画素なカメラは、高感度には強くないという先入観があったのですが、α7R IIIは高感度にも強く、ISO1000以上でも十分実用レベルなので、ISOの上限を自分の許せる範囲に設定して撮影しています。
広角レンズで、鳥の棲む環境まで写したい
野鳥をアップで撮った写真もいいのですが、ズームで寄ると鳥の色や形は分かっても、どういうところに棲んでいるのかまでは伝わりません。この川の写真は、待ち伏せ型の狩りをするゴイサギとコサギをとらえたものですが、魚を狙って微動だにせず待っている様子を伝えるために、広角で周囲の風景を入れつつスローシャッターで撮影しました。僕はできるだけ広く撮って鳥が棲む環境や風景までとらえることで、鳥のことを全く知らない人にも興味を持ってもらえる写真を撮りたいと思っています。
米国メーカーが製造している迷彩柄のFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS専用レンズコート
ただ、広角だと被写体が小さくなってしまうため、かなり近づく必要があるのですが、警戒心の強い野鳥には簡単には近づけません。最初はカメラの存在に慣れさせるために、遠くから400mmぐらいで撮りはじめ、カメラを落ち葉で隠したり、迷彩柄の専用レンズコートを巻いたりして撮影しています。鳥がカメラに慣れてきたらだんだん距離を詰め、最終的に広角レンズに換えてと…。何日も、場合によっては何カ月もかかります。このジョウビタキはひと冬かけて撮影しました。スズメくらいの大きさなので広めの画角ではかなり近づく必要があるので、あらかじめ鳥が止まる場所にカメラをセッティングし、太陽の位置や顔の向きを想定してフレーミングしています。自分は離れたところから双眼鏡をのぞきながら、鳥が来たらリモートコマンダーを使ってシャッターを切っています。
米国メーカーが製造している迷彩柄のFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS専用レンズコート
リモート撮影の際には、「リモコン」の設定を「入」にしておきます。「切」だと一定の時間が経つとスリープモードになってしまうので、いつでもシャッターが切れるように「入」にしています。ただ注意が必要なのが、「入」にしておくとバッテリーの消耗が早くなるので、予備バッテリーを準備しておいたほうがいいと思います。