α professional style プロが語る撮影の流儀

α professional styleプロフェッショナルが語る撮影の流儀

写真家

山下 大祐

愛用のボディ/レンズ α7R III & FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

愛用のボディ/レンズ

α7R III & FE 100-400
mm F4.5-5.6 GM OSS

α7R III & FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

プロの写真家たちは、撮る道具としてαをどのように使いこなしているのでしょうか。さまざまなジャンルの写真家たちに、自身のカメラ設定、お気に入りのレンズや撮影機材などのαの使いこなし術をお聞きしました。今回は、鉄道写真家の山下大祐氏の撮影スタイルをご紹介します。

鉄道というものを舞台に、世界を切り取る

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm, F5.6, 1/640秒, ISO200

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm, F5.6, 1/640秒, ISO200

小さい頃から鉄道が好きで、朝早くから駅に出掛けて、1日1本しか走らない列車などをコンパクトカメラで記録していました。あるとき鉄道雑誌で見た、駅の雑踏や駅員さんの所作をとらえた作品に感銘を受け、車両だけが鉄道写真ではないのだと気づかされました。こんな表現をしてみたいという想いが、今の自分の原点になっています。
私が写真を撮るときに意識しているのが、「単純化」です。鉄道写真は車両という被写体が明確なだけに、背景が非常に重要な役割を果たします。背景に余計な要素をなくすようにカメラ位置やフレーミングにこだわりながら、より広い視野で鉄道という舞台をとらえるように心がけています。撮影現場ではひらめきが大切なので、その一瞬のひらめきを逃さないように、瞬時にカメラを操作できるようにカスタマイズしています。

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm, F5.6, 1/640秒, ISO200

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 400mm, F5.6, 1/640秒, ISO200

私の撮影スタイル

α7R III
α7R III (ILCE-7RM3)

シーンに応じて、自在にフォーカスを使い分ける

AF-ONボタン:AFオン、中央ボタン:瞳AF
[マイメニュー1]シャッター半押しAF:切、AF被写体追従感度:1(粘る)、ライブビュー表示:設定効果反映On、ゼブラ設定、ピント拡大

「AF被写体追従感度」はすぐに呼び出せるようにマイメニューに登録している

基本的にはシャッター半押しAFをOFFにして、背面の「AF-ONボタン」でオートフォーカスを操作しています。最近ではこの撮りかたに身体が慣れてしまいました。普段AFモードは、コンティニュアスAF(AF-C)が多く、「AF被写体追従感度」は「粘る」の設定をよく使っています。新幹線など速い被写体を連写でおさえたい場合には、「粘る」にしておいた方がフォーカスポイントをしっかりと追いかけてくれるので、成功率もかなり高いと肌で感じます。さらに「ロックオンAF」を使えば、奥から斜め手前方向に走ってくる列車の、運転席の窓にピントを合わせ続けて撮影できます。真ん中のボタンには「瞳AF」を登録してあるのですが、これは駅の中で子どもたちを撮ったりするときの人物スナップに活用しています。

[マイメニュー1]シャッター半押しAF:切、AF被写体追従感度:1(粘る)、ライブビュー表示:設定効果反映On、ゼブラ設定、ピント拡大

「AF被写体追従感度」はすぐに呼び出せるようにマイメニューに登録している

動作を単純化し、意図した瞬間に操作できること

C1ボタン:押す間AF/MFコントロール
ピント拡大機能

ピント拡大機能

鉄道写真は被写体が動体ということもあり、自分が意図したときにできるだけ単純な動作でフォーカスを切り換えられるように、C1ボタンには「押す間AF/MFコントロール」を設定しています。さらに「ピント拡大機能」を組み合わせることで、C1ボタンを押してマニュアルフォーカスにしている間は、自動でピント拡大できるようにしています。たとえば、空抜けのシーンで架線にピントを合わせたいときなど、オートフォーカスが迷う場面で、C1ボタンを押すだけでMFモードに切り換えができ、厳密なピント合わせができます。ファインダーをのぞきながらでもピント拡大できるので、このカスタマイズはかなり重宝しています。

ピント拡大機能

ピント拡大機能

C2ボタン:ISO感度
[カスタムキー1]コントロールホイール:未設定、カスタムボタン1:押す間AF/MFコントロール、カスタムボタン2:ISO感度、カスタムボタン3:ホワイトバランス、カスタムボタン4:APS-C S35/フルサイズ切換

カスタムキー

基本的に「ISO感度」はマニュアルで操作するので、人差し指で設定を変えられるようにC2ボタンに割り当てています。ただ、電車に乗って風景を撮影するときは、外光がころころ変わるのでISO AUTOで撮ることもあります。よく使う「ホワイトバランス」も独立したボタンとして欲しかったのでC3ボタンに設定し、C4ボタンには「APS-C S35/フルサイズ切換」を登録しています。スナップ撮影のときに、メニューから選ばなくてもワンタッチでAPS-Cサイズに切り替えられるのはとても便利ですね。画像サイズを切り換えれば、1本のレンズでも撮影の幅が広がりますし、α7R IIIはかなりの高画素ですからためらうことなく使えます。ただ、設定を戻さないとAPS-Cサイズのまま撮り続けてしまうので注意が必要です。

[カスタムキー1]コントロールホイール:未設定、カスタムボタン1:押す間AF/MFコントロール、カスタムボタン2:ISO感度、カスタムボタン3:ホワイトバランス、カスタムボタン4:APS-C S35/フルサイズ切換

カスタムキー

勝負の一本

G Master

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

夕闇に溶けるシャドー部分のディテールまで再現する

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 1.4x Teleconverter 560mm, F8.0, 1/800秒, ISO800

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 1.4x Teleconverter 560mm, F8.0, 1/800秒, ISO800

この写真では、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSを使って、夕焼けを反射させる新幹線の有機的なフォルムを暗闇の中に浮かび上がらせました。カメラの性能が寄与しているのはもちろんですが、1.4倍のテレコンバーターを装着しているにも関わらず、このレンズは夕闇に溶け込むシャドー部分の階調も繊細に描き出してくれました。ヘッドライトの光もかなり強烈なのですが、レンズのコーティングが優れているのかフレアやゴーストが一切なく、丸みを帯びたフォルムのなめらかな質感までしっかり再現できたと思います。

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 1.4x Teleconverter, 433mm, F8.0, 1/1600秒, ISO320

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 1.4x Teleconverter, 433mm, F8.0, 1/1600秒, ISO320

新幹線の撮影では、列車の編成をすっきり見せられるロケーションは限られるので、望遠レンズは必須になってきます。この写真では、列車の進行方向にある架線の電柱などの障害物をできるだけ見せないようにフレーミングしました。邪魔なものを削ぎ落として背景をすっきり見せたいときには、100mmから400mmまでの幅広い焦点距離は確実に生きてきます。それに、フォーカス精度はもちろんですが、ピントの合っているところの解像力は圧倒的で、こうした高い描写力を持ちながらコンパクトで、70-200mm F2.8 GM OSSとほとんどサイズ感も変わらないのも魅力です。鉄道写真には欠かせない1本だと思います。

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 1.4x Teleconverter, 510mm, F8.0, 1/320秒, ISO6400

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS + 1.4x Teleconverter, 510mm, F8.0, 1/320秒, ISO6400

函館線と千歳線が並行して走る北海道の苗穂駅付近。人工のライトがより印象的に写る日没後のブルーモーメントの時間帯を撮影しました。迫りくる列車が大きくなりすぎないようにワイドに引きながら、列車がすれ違う瞬間を狙いました。幅広い焦点域を持つズームレンズだからこそ、構図を瞬時に調整してフレーミングでき、こういう場面でもとても使い勝手がいいですね。ひとつ注意したいのが、2.0倍のテレコンバーターを装着した場合にはF値が大きくなるので、α7R IIIでは位相差AFが使えないこと。特に動体のピントを追おうと思ったら位相差AFは重要なので、被写体や条件に合わせてテレコンバーターを選ぶ必要があります。

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
G master

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

SEL100400GM

FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
鉄道写真家 山下 大祐
ワンポイントアドバイス

山下流、装備の心得

ほとんどの撮影で、キャリーケースからリュックに変わる2ウェイタイプのカメラバッグを使っています。キャリー部分を外すだけで、リュックとして背負って険しい道や山にもそのまま登れるのでとても便利です。ただ一眼レフ時代から使っているバッグなので、ミラーレスカメラになってからは、もう少し荷物をコンパクトにできるかなと思っています。最近は動画を撮ることも多いためアクセサリー類が増えがちですが。あとは、昔は鉄道を撮るときには時刻表が欠かせなかったのですが、いまはアプリで調べられるのでとても楽になりました。この前の撮影では、カンジキを履いて1時間以上も雪山を歩いたのですが、結局装備で一番重要なのは体力ではないでしょうか(笑)。

キャリーケースになるカメラバッグ
キャリー部分を外すだけで、リュックにもなるカメラバッグ
カメラバッグの中身

「LOWEPRO」製のカメラバッグを長年愛用していますが、移動スタイルを選ばずいつも使っているので、かなりくたびれてきました。

山下氏のカメラバッグの中身

ぜひ皆さんも、
プロの使いこなし術を参考にして
自分流の使いかたを
見つけてください。

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 121mm, F9.0, 1/6400秒, ISO1000

α7R III, FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS 121mm, F9.0, 1/6400秒, ISO1000