2022年3月 更新

一期一会の美しさを極める <春の嵐編> 福田健太郎流マル秘撮影テクニック

写真家 福田健太郎 
日

の出前からシャッターチャンスは始まっている

明け方に桜を狙うなら、日が昇るのをただ待っているのはもったいない。周囲を山に囲まれていたりすると日の出まで間があるので、その時間ならではの青い光を生かして桜を撮ってみましょう。薄暗い青い光から暖色へ変わる光の変化を楽しめるはずです。ホワイトバランスを「太陽光」モードなどにして青を強めにすると、静寂さを生かした妖艶な雰囲気を表現できます。暗い中での撮影はブレないように三脚が必要。あとはリモートコマンダーやセルフタイマーなどを駆使してブレない工夫を。

あると便利な装備:
三脚 VCT-P300
リモートコマンダー RM-VPR1
足元を照らすライト

絞り優先 1/40秒 F11 ISO200 -0.7EV α77+Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA

朝

日を生かすなら、
まずは逆光で

日の出とともに撮影するためには、事前の準備が大切。可能ならば前日に下見をして周囲の環境や日の出の方角、撮りたい構図を確認しておきましょう。朝の光を生かすなら、まずは逆光で。ホワイトバランスを「日陰」にして暖色に振ることで、やわらかい光を強調。桜が沈む場合は露出補正をプラスに調整します。また、逆光での撮影が難しい場合は、サイド光で朝日に染まる桜を狙うのも手です。

絞り優先 1/25秒 F8 ISO200 -0.3EV
α99+70-300mm F4.5-5.6 G SSM II

露

が出てきたら、
近づいて撮る

明け方や山での撮影では、桜が霧に覆われてしまうことも多々あります。そんな時は晴れるのを待つよりも、霧が立ち込める雰囲気を生かして桜を表現してみましょう。撮影のポイントは、桜に近づくこと。桜との距離が離れすぎると、全体が真っ白に写り、主題が分かりづらくなりがちです。また撮影中も、ピントを合わせづらくなります。普段よりも意識的に桜に近づき、濃くなったり薄くなったりする霧の切れ目をタイミングよく狙ってみましょう。

絞り優先 1/80秒 F11 ISO200 -1.3EV
α77+Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA

雨

の日は、桜の花が
より一層際立つ

雨が降っていても、桜は絵になります。雨によって洗われた花はみずみずしくきれいですし、幹が濡れて黒く締まるので、明るい色の花がより際立ちます。傘をさしながらでも、カメラやレンズの手ブレ補正を効かせてブレに注意すれば、手持ちでも十分撮影を楽しめます。また、水たまりや池などが周囲にあれば、雨だれの波紋を生かして雰囲気のある作品も撮れますよ。

絞り優先 1/60秒 F7.1 ISO800 +0.3EV
NEX-5N+E 18-55mm F3.5-5.6 OSS

曇

りでインパクトが足りない
時は、ぼけ表現

曇の日は、フラットな光が桜の木に満遍なく行き渡り、花の質感を出しやすいため、写真は撮りやすくなります。その一方でメリハリのない画になりがちなので、物足りなく感じる場合もあるかもしれません。その場合は、ぼけ表現を生かしてやわらかな印象に仕上げてみましょう。露出補正をプラスにすると、より優しい雰囲気を演出できます。

絞り優先 1/200秒 F2 ISO200 +0.7EV
α6300+Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA

晴

天下で意識すべきは、
色のコントラスト

よく晴れた日は、やはり青空を背景に撮りたくなります。しかし、ただ漠然と撮っていても印象的な作品にはなりづらいものです。そこでおすすめなのが、光のコントラストではなく、色のコントラストを意識すること。基本は順光で、太陽を背にして撮影すれば桜の花の色や青空も色のり良く写せます。さらに菜の花なども取り入れ、色の組み合わせを工夫してみましょう。また、PLフィルターをレンズに装着すれば、空本来の澄んだ青さを表現できるほか、表面反射を抑えられ花もより鮮やかになります。画面上で確認しながらフィルターを回転させて空の色味などを調整しましょう。

あると便利な装備:
円偏光フィルター VF-CPAM2

マニュアル 1/200秒 F9 ISO200 ±0EV
α7R+Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

風

の強い日は、花吹雪を
スローシャッターで

強風の日は被写体ブレを起こしやすいため撮影が難しくなりますが、見頃のピークを過ぎた頃になるとその風を生かして花吹雪が狙えます。シャッタースピードを速くすれば、空中に花びらが舞う瞬間を写し止めるのは比較的簡単です。しかし、もっと風に舞う臨場感を出すなら、スローシャッターで花びらをあえて少しブラしてみましょう。撮影時の焦点距離にもよりますが、目安は1/30秒や1/15秒ほど。「風が吹いたら連写」を繰り返して、美しく舞った瞬間を狙ってみましょう。

マニュアル 1/30秒 F13 ISO200 +1.3EV
α900+Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II

人

混みは、アングルや距離感を変えて対応できる

ローアングルで見上げれば、
人は入らない

桜の名所に出かけると、すでに人混みであふれかえっていることもめずらしくありません。人を入れずに桜を撮るなら朝早く出かけるのが一番ですが、どうしても人混みを避けられない場合は、アングルや距離感を工夫することで対応しましょう。例えば広角レンズを使って、ローアングルから見上げるように狙うのも一つの手です。ポイントは、太い幹や枝振りを意識して画面構成すること。幹を中心に枝が四方へ広がるリズムを表現できると躍動感が生まれます。

マニュアル 1/50秒 F11 ISO200 +0.3EV
α7R+LA-EA3+Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II

大きく寄れば、
周囲の環境にも左右されない

人混みに限らず、周囲の環境が絵になりづらいときに有効なのがアップ(接写)で撮る方法。昼間は順光で狙うのが一般的ですが、大きく寄って桜を撮るときは逆光がおすすめです。柔らかな光が当たっている花を探し、透過光を生かして撮ると花びらの淡いピンクが引き立ち、可憐な印象に仕上がります。逆光では主題に影が落ちて暗く写りがちなので、露出補正をプラスにして明るくするのをお忘れなく。

絞り優先 1/80秒 F8 ISO200 +2.3EV
α6000+E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS

脇役を添えれば、
限られた条件でも幅が広がる

たとえ人混みによって木の上部しか写せない状況でも、脇役の存在をうまく取り入れることで作品の幅は広がります。郊外にある名所であれば、背景の抜けを利用して遠くの美しい山々を桜の引き立て役に添えることも可能です。距離の異なるものを組み合わせて、奥行き感のある画作りを意識すると主題である桜がより際立ちますよ。

絞り優先 1/250秒 F5.6 ISO200 +1.3EV 
α77+Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II

夕

暮れ時こそ、ドラマチックな表情を引き出しやすい

夕日に染まる桜が郷愁を誘う

日が傾いてきたからといって帰り支度をはじめてしまうと、貴重なシャッターチャンスを逃してしまうことも。実は夕暮れ時は、サイド光によって陰影が生まれるため、ドラマチックな表情を引き出しやすくなります。さらに暖色の光で、桜がより鮮やかに染まります。ぜひ夕日の光を生かして、寂しさや郷愁を誘うような桜を表現してみましょう。撮るときは、主題の桜とは別に日陰で暗く沈んでいる場所を構図に取り込んで、明暗のメリハリを演出するとよりドラマチックになりますよ。

絞り優先 1/50秒 F10 ISO200 +0.7EV
α77+Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA

夕方なら太陽を入れて撮りやすい

太陽と桜を一緒に収めたい場合も、夕方がおすすめです。春は、昼間から夕方にかけて気温が上昇し、空が霞んできます。それにより太陽と地上の桜の輝度差が狭まるため、太陽が白飛びしたり桜が黒つぶれしたりせずに写しやすくなります。さらにαの「オートHDR」や「Dレンジオプティマイザー」機能を使うと暗部を自然に持ち上げることができ、桜の色を残したまま表現できるので活用してみてください。

マニュアル 1/40秒 F11 ISO200 ±0EV
α7R+Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

日

没後にもうひと粘り、
幻想的な光景が待っている

マジックアワーならではの桜に挑戦

日が沈んだ後、わずかに明るさを残す時間帯はマジックアワーとも呼ばれ、グラデーションに染まる空によって驚くほど美しい光景に出会えます。ライトアップされた桜と組み合わせれば、きっと幻想的な作品に仕上がるはずです。しかし、刻一刻と暗くなっていくなかでベストなタイミングを見極めるのは困難。そこで、30秒や1分ごとのインターバル撮影で挑戦しましょう。シャッターを切るたびに液晶画面を確認して、地道に空と桜の露出が合う瞬間を待ちます。日が沈み始める少し前には、三脚を据え、桜にピントを合わせ、構図も決めてセッティングしておきましょう。露出モードは絞り優先(A)にして、カメラ任せでOK。ホワイトバランスを白熱蛍光灯にすると、空の澄んだ青が表現しやすいです。

あると便利な装備:
三脚 VCT-P300
リモートコマンダー RM-VPR1

絞り優先 2.5秒 F8 ISO400 ±0EV
α7R+Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

暗くなる一歩手前で、
眠りにつく姿を

完全に暗くなる一歩手前にもシャッターチャンスはあります。たとえライトアップされていなくても、弱い光で桜を浮かび上がらせることができるのがデジタル一眼カメラの強み。静かに眠りにつくような姿を捉えてみましょう。ポイントは三脚を使用し、画像が荒れないようにISO感度は低めに設定して長秒露光で撮ること。街あかりをうまく取り入れると、人のいとなみを感じられる作品に仕上がります。

あると便利な装備:
三脚 VCT-P300
リモートコマンダー RM-VPR1

マニュアル 4秒 F5.6 ISO400 ±0EV
α77+70-400mm F4-5.6 G SSM II

ラ

イトアップされた桜は夜になってからでは遅い

完全に暗くなる前が、
夜桜の一番のシャッターチャンス

ライトアップされた夜桜を美しく撮りたいという方も多いはず。だからといって夜に出かけていては、一番のシャッターチャンスに間に合いません。実はライトアップされた桜を撮るなら、完全に暗くなる前がおすすめ。背景が真っ黒な状態よりも、青みが残っている方がニュアンスのある作品になります。あっという間に暗くなってしまうので、事前にライトがキレイに当たっているポイントを探し、桜の花が美しく浮きあがってみえる構図を考えておきましょう。三脚を使って手ブレ対策も忘れずに。

あると便利な装備:
三脚 VCT-P300
リモートコマンダー RM-VPR1

マニュアル 2秒 F8 ISO200 ±0EV
α77+Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA

空が暗くなったら、
桜を画面いっぱいに捉える

完全に暗くなってしまうと背景はただ黒いだけなので、空はあまり入れずに桜を画面いっぱいに捉えるよう工夫しましょう。夜は風が出てきやすいので、それを生かしてブラして表現するのも手です。その時は、木全体をブラしてしまうよりも、幹などはピタッと止めて表現できると、ブレた枝や花との対比が際立ち、風の吹いている様子が伝わりやすくなります。

あると便利な装備:
三脚 VCT-P300
リモートコマンダー RM-VPR1

マニュアル 20秒 F13 ISO64 ±0EV
α77+Vario-Sonnar T* 16-80mm F3.5-4.5 ZA

暗

闇だから表現できる
桜景色がある

ライトアップされていなくても、暗闇だからこそ表現できる桜があります。月や星空と一緒に桜を撮るのに、人工の照明はかえって邪魔になります。もちろん完全に暗い状態では桜が写らないので、外付けフラッシュや懐中電灯、ペンライトなどを使って、桜を軽く照らす必要があります。三脚にカメラを据えたら、バルブ撮影を開始。その間に桜に向かってライトを振ると桜を浮かび上がらせることができます。その際に、他に桜を撮ろうとしている人がいないか注意しましょう。また、バックライト付きの時計があると30秒以上のバルブ撮影でも時間を計れて便利です。

あると便利な装備:
三脚 VCT-P300
リモートコマンダー RM-VPR1
バックライト付きの時計

マニュアル 30秒 F5.6 ISO400 ±0EV
α7R+Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

「桜はあっという間に散ってしまい、儚いものです。
限られた期間のなかで見せるいろいろな桜の表情をぜひ見つけてみましょう。
そして、ただ美しく撮るだけでなく、自分なりの思いを馳せながら捉えると、
写真の楽しみがより一層深まると思います。」

写真家 福田健太郎

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