レンズ&アクセサリー
よく晴れた日は、やはり青空を背景に撮りたくなります。しかし、ただ漠然と撮っていても印象的な作品にはなりづらいものです。そこでおすすめなのが、光のコントラストではなく、色のコントラストを意識すること。基本は順光で、太陽を背にして撮影すれば桜の花の色や青空も色のり良く写せます。さらに菜の花なども取り入れ、色の組み合わせを工夫してみましょう。また、PLフィルターをレンズに装着すれば、空本来の澄んだ青さを表現できるほか、表面反射を抑えられ花もより鮮やかになります。画面上で確認しながらフィルターを回転させて空の色味などを調整しましょう。
あると便利な装備:
円偏光フィルター VF-CPAM2
桜の名所に出かけると、すでに人混みであふれかえっていることもめずらしくありません。人を入れずに桜を撮るなら朝早く出かけるのが一番ですが、どうしても人混みを避けられない場合は、アングルや距離感を工夫することで対応しましょう。例えば広角レンズを使って、ローアングルから見上げるように狙うのも一つの手です。ポイントは、太い幹や枝振りを意識して画面構成すること。幹を中心に枝が四方へ広がるリズムを表現できると躍動感が生まれます。
人混みに限らず、周囲の環境が絵になりづらいときに有効なのがアップ(接写)で撮る方法。昼間は順光で狙うのが一般的ですが、大きく寄って桜を撮るときは逆光がおすすめです。柔らかな光が当たっている花を探し、透過光を生かして撮ると花びらの淡いピンクが引き立ち、可憐な印象に仕上がります。逆光では主題に影が落ちて暗く写りがちなので、露出補正をプラスにして明るくするのをお忘れなく。
たとえ人混みによって木の上部しか写せない状況でも、脇役の存在をうまく取り入れることで作品の幅は広がります。郊外にある名所であれば、背景の抜けを利用して遠くの美しい山々を桜の引き立て役に添えることも可能です。距離の異なるものを組み合わせて、奥行き感のある画作りを意識すると主題である桜がより際立ちますよ。
日が傾いてきたからといって帰り支度をはじめてしまうと、貴重なシャッターチャンスを逃してしまうことも。実は夕暮れ時は、サイド光によって陰影が生まれるため、ドラマチックな表情を引き出しやすくなります。さらに暖色の光で、桜がより鮮やかに染まります。ぜひ夕日の光を生かして、寂しさや郷愁を誘うような桜を表現してみましょう。撮るときは、主題の桜とは別に日陰で暗く沈んでいる場所を構図に取り込んで、明暗のメリハリを演出するとよりドラマチックになりますよ。
太陽と桜を一緒に収めたい場合も、夕方がおすすめです。春は、昼間から夕方にかけて気温が上昇し、空が霞んできます。それにより太陽と地上の桜の輝度差が狭まるため、太陽が白飛びしたり桜が黒つぶれしたりせずに写しやすくなります。さらにαの「オートHDR」や「Dレンジオプティマイザー」機能を使うと暗部を自然に持ち上げることができ、桜の色を残したまま表現できるので活用してみてください。
日が沈んだ後、わずかに明るさを残す時間帯はマジックアワーとも呼ばれ、グラデーションに染まる空によって驚くほど美しい光景に出会えます。ライトアップされた桜と組み合わせれば、きっと幻想的な作品に仕上がるはずです。しかし、刻一刻と暗くなっていくなかでベストなタイミングを見極めるのは困難。そこで、30秒や1分ごとのインターバル撮影で挑戦しましょう。シャッターを切るたびに液晶画面を確認して、地道に空と桜の露出が合う瞬間を待ちます。日が沈み始める少し前には、三脚を据え、桜にピントを合わせ、構図も決めてセッティングしておきましょう。露出モードは絞り優先(A)にして、カメラ任せでOK。ホワイトバランスを白熱蛍光灯にすると、空の澄んだ青が表現しやすいです。
完全に暗くなる一歩手前にもシャッターチャンスはあります。たとえライトアップされていなくても、弱い光で桜を浮かび上がらせることができるのがデジタル一眼カメラの強み。静かに眠りにつくような姿を捉えてみましょう。ポイントは三脚を使用し、画像が荒れないようにISO感度は低めに設定して長秒露光で撮ること。街あかりをうまく取り入れると、人のいとなみを感じられる作品に仕上がります。
ライトアップされた夜桜を美しく撮りたいという方も多いはず。だからといって夜に出かけていては、一番のシャッターチャンスに間に合いません。実はライトアップされた桜を撮るなら、完全に暗くなる前がおすすめ。背景が真っ黒な状態よりも、青みが残っている方がニュアンスのある作品になります。あっという間に暗くなってしまうので、事前にライトがキレイに当たっているポイントを探し、桜の花が美しく浮きあがってみえる構図を考えておきましょう。三脚を使って手ブレ対策も忘れずに。
完全に暗くなってしまうと背景はただ黒いだけなので、空はあまり入れずに桜を画面いっぱいに捉えるよう工夫しましょう。夜は風が出てきやすいので、それを生かしてブラして表現するのも手です。その時は、木全体をブラしてしまうよりも、幹などはピタッと止めて表現できると、ブレた枝や花との対比が際立ち、風の吹いている様子が伝わりやすくなります。
ライトアップされていなくても、暗闇だからこそ表現できる桜があります。月や星空と一緒に桜を撮るのに、人工の照明はかえって邪魔になります。もちろん完全に暗い状態では桜が写らないので、外付けフラッシュや懐中電灯、ペンライトなどを使って、桜を軽く照らす必要があります。三脚にカメラを据えたら、バルブ撮影を開始。その間に桜に向かってライトを振ると桜を浮かび上がらせることができます。その際に、他に桜を撮ろうとしている人がいないか注意しましょう。また、バックライト付きの時計があると30秒以上のバルブ撮影でも時間を計れて便利です。
「桜はあっという間に散ってしまい、儚いものです。
限られた期間のなかで見せるいろいろな桜の表情をぜひ見つけてみましょう。
そして、ただ美しく撮るだけでなく、自分なりの思いを馳せながら捉えると、
写真の楽しみがより一層深まると思います。」
写真家 福田健太郎