一期一会の美しさを極める

咲き誇り、はかなく散る。
その美しさに日本人は昔から魅了されてきた
久方の光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ 紀友則

古今和歌集の撰者の一人である紀友則が詠んだこの歌は、のどかな春の日にせわしなく散りゆく、桜の寂しくも美しい姿を表現したもの。小倉百人一首にも収録されており、最も有名な和歌の一つになっています。「花は桜」という概念が定着したのは、この歌が詠まれた平安時代からだと言われており、桜はいつの世も日本人の心を捉えてはなしません。

風情、それは季節の美しさを愛でる日本独自の感性。 桜ひとつとってもさまざまなシーンでその風情を感じとることができます。可憐なつぼみ、並木に浮かぶ桜雲、幻想的な夜桜、ひらりと舞う花びら。現代では多くのひとが、写真という手法で想い想いの桜を愉しんでいます。あなたもαで、風情ある桜写真を残してみませんか。

αですぐにできる
桜の美しい撮り方

αの表現力が開花!
すぐに役立つ桜撮りテクニック

いつまでも記憶に留めておきたい。
そんな桜に出会ったとき、あなたはどのように撮りますか。
その場で感じた美しさを表現するのは意外と難しいものです。
そこで、写真家 福田健太郎さんに
αで簡単にできる桜撮りのコツをお聞きしました。
あなたのαでぜひお試しください。

写真家 福田健太郎

1973年、埼玉県川口市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信氏のアシスタントを経てフリーランスの写真家として活動を開始。日本を主なフィールドに、「森は魚を育てる」をキーワードとした生命の循環を見つめ続けている。公益社団法人 日本写真家協会会員

簡単に桜を印象的に撮れる
テクニックをご紹介

01 桜景色

E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS, 24mm(35mm換算), F8, 1/80秒, ISO200
木と木が重なるようにして、
桜のボリュームを演出

目の前で何本もの桜が盛大に咲く風景を撮っても、いまいち迫力が伝わらないことはありませんか。特に桜並木などは風景全体を収めようとすると、木と木の間隔が空いて桜がまばらに写り、一斉に咲いている印象が弱まってしまいます。そこでひと工夫。木と木、枝と枝が重なって見えるポジションを探して、桜のボリュームを演出してあげると、咲き誇る桜をより華やかに表現できます。

桜の木が重なって見えるポジションを探して、画面いっぱいに桜を写すと華やかな印象に。

02 桜花

E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS, 57mm(35mm換算), F5.6, 1/250秒, ISO200
背景を大きくぼかして、
可憐な花を際立たせる

桜は近づいて見ると小さな花の一つひとつがとても可愛らしく、木全体で見る印象とは大きく異なります。そんな可憐な花のイメージを表現したいときは、背景をぼかすと印象的に撮れます。キットレンズなら、まず「望遠」にしてカメラを花に近づけます。さらに花の背景ができるだけ遠くになるポジションを見つけて撮ると、背景を大きくぼかすことができます。

被写体までの距離を近く、被写体から背景までの距離を遠くにすることで、大きくぼかすことができる

03 見上げ桜

E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS, 24mm(35mm換算),
F18, 1/80秒, ISO200
低い位置から見上げて、
木と花を対比させる

桜の花ばかりに目がいきがちですが、樹齢を重ねた古木などはその幹もまた趣があります。画面内に大胆に幹を取り込み、地面に近いポジションで見上げるように撮影すれば、遠近感が強調され木そのものの力強さが伝わる写真になります。また、青空を背景にすることで花も際立ちます。撮影時は液晶モニターをチルトさせると楽な姿勢で撮ることができます。

04 一目千本

E 18-55mm F3.5-5.6 OSS, 55mm(35mm換算),
F11, 1/10秒, ISO200
前景にも桜を入れて、
奥行きのある風景を切り取る

有名な桜の観光スポットには、山頂からの壮大な桜の眺望を楽しめる場所もあります。連なる山を眺めていると、ついつい遠くの風景だけを写してしまいがちですが、それだと写真に迫力が出ません。そこで、手前にある桜の木も画面に入れて撮れば、奥行きのある風景を表現できます。また、撮影モードを「A(絞り優先)」にし、F値を11以上に設定すれば遠くまでピントが合い細やかに描写できます。

バランスの良い構図で撮れる「三分割法」を覚えよう。

桜をどのような構図で切り取ったらバランスが良く見えるか迷う方も多いのではないでしょうか。そこでおすすめなのが三分割法です。画面を縦と横それぞれ三分割にし、そのライン上や交点に主役を配置すると落ち着きのある構図になります。αはグリッドラインを表示でき、実際に被写体を照らし合わせながら撮れるのでぜひ活用してみてください。

設定ができたら下の写真を拡大表示して、プロのカメラマンがどのように三分割法を活用したか確かめてみよう
多彩な桜の表現方法
&レンズの選び方
記録ではなく、
記憶に残る桜を表現する

単なる記録ではなく、記憶に残したい写真を撮ることが作品づくりの一歩。そこで福田健太郎さんならではの作品づくりをお聞きしました。着眼点や構図の考え方、レンズ選びなどを解説。福田さんの撮り方や発想を参考にしながら、作品づくりを楽しみましょう。あなたはどんな桜を表現してみたいですか。

ぼけ効果で幻想的に描く、
薄明の桜並木

FE 70-200mm F2.8 GM OSS II, 129mm, F2.8, 1/80秒, ISO100

日の出前のやわらかな光に包まれる桜並木。朝霧がかかるおぼろげな景色の中で感じた気配を引き出すために、大口径望遠レンズのぼけ効果を利用しています。絞り開放で前後を大きくぼかすことで幻想的な雰囲気が生まれ、圧縮効果で桜のボリューム感もアップしました。朝の桜を撮るときは、光の色に気をつけています。まだ薄暗い時間帯の光は青白く、桜の花が美しく染まるので、日の出前から撮影を始めます。光の色は刻々と暖色へと変化するので、すばやく撮り進めるのがポイントです。ピントが合っている部分は、小さな桜花の一つひとつがシャープに描かれていて、美しいぼけと解像感が相まった描写はG Masterならでは。FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIは大幅に軽量化され、持ち出しやすくなりました。ホールディング性が良く、重心バランスが変化しにくいインナーズーム方式なので、手持ち撮影もしやすくなっています。

ワンポイント
FE 70-200mm F2.8 GM OSS II,
188mm, F4.5, 1/640秒, ISO100

焦点距離を可変できるズームレンズは、撮影意図やそのときの自分の心とマッチした画角を決められるのが魅力。これは谷向こうの山の斜面を望遠レンズで切り取った一枚ですが、桜の華やかさを引き出すために、画面いっぱい桜で埋め尽くされる画角を探りながら撮影しました。

その他の作品

FE 70-200mm F2.8 GM OSS II, 136mm, F11, 1/20秒, ISO100
G MASTER
FE 70-200mm F2.8 GM OSS II SEL70200GM2

広角で表現する、
のどかな春の花の共演

FE 16-35mm F2.8 GM, 16mm, F2.8, 1/800秒, ISO100

彩りあふれる春を迎えたうれしさを伝えたくて捉えた一枚です。自分の心までも解放されるような、のどかな風景にひかれて、FE 16-35mm F2.8 GMのワイド端で撮影しました。影が出にくい順光を選ぶことで、菜の花の黄色、桜のピンク、空の青を色鮮やかに表現することができました。ピントは奥の桜並木に。開放絞りで撮影すると、広角レンズでも前景をぼかすことができます。手前にある菜の花で前ぼけを作り、春のやわらかさを演出しました。このときはフットワークを生かして撮りたかったので、手持ちで撮影しています。このシーンでは絞りをF2.8に設定していたので1/800秒という手ブレしにくいシャッタースピードが得られました。被写体を探しながら動き回って撮影しているときは手ブレしやすくなるので、呼吸を整えてから静かにシャッターボタンを押すことがポイントです。

ワンポイント
FE 16-35mm F2.8 GM,
23mm, F11, 1/80秒, ISO200

絞り値を大きくした場合は、晴天時であっても手ブレやすいシャッタースピードになることがあるので、細心の注意を払いましょう。このシーンも手持ち撮影ですが、絞り値をF11に設定していたので、1/80秒という手ブレの可能性もあり得るシャッタースピードになりました。手持ち撮影するときは、カメラの手ブレ補正をオンにし、両手でしっかりと構えましょう。

その他の作品

FE 16-35mm F2.8 GM, 20mm, F11, 1/100秒, ISO200
G MASTER
FE 16-35mm F2.8 GM SEL1635GM

光と陰で演出する、
早朝の山桜

FE 24-70mm F2.8 GM II, 26mm, F11, 1/15秒, ISO100

朝の光に照らされた山桜の暖色と、まだ光が届かない山腹の寒色を組み合わせて、躍動する朝のドラマを捉えました。逆光で撮影し、日なたと日陰のメリハリを強調しています。画面右上のフレーム際には太陽が見えていて、レンズに光が差し込んでいるという厳しい条件下でも、フレアやゴーストをしっかり抑え込めるのは、G Masterだからこそ。他のレンズでフレアやゴーストが気になる場合は、レンズに当たる光を手などで遮る「ハレ切り」をするのが対応策となります。FE 24-70mm F2.8 GM IIは、F2.8大口径レンズの固定観念を覆すほどのコンパクトさ。αのフルサイズモデルに装着したときのバランスも良好です。絞りリングやフィルター操作窓が付いた同梱のレンズフードなど、操作性もアップしています。高速・高精度なオートフォーカスの静粛性も高くなり、駆動音に邪魔されず自然と一体になれるという魅力もありますね。

G MASTER
FE 24-70mm F2.8 GM II SEL2470GM2

その他の作品

FE 24-70mm F2.8 GM II, 59mm, F11, 1/250秒, ISO100
FE 24-70mm F2.8 GM II, 43mm, F11, 13秒, ISO100

ぼけ描写で魅せる、
春のやわらかさ

FE 50mm F1.2 GM, 50mm, F1.2, 1/1000秒, ISO160

50mmの単焦点レンズは、望遠的にも広角的にも使うことができます。このシーンでは望遠的な使い方で花の姿を捉えました。花びらの質感が伝わるように、あえて日陰の花を選択。花の向きや枝葉の流れ、背景との組み合わせを探りながら撮影しました。レンズ開放にすると、すぐ隣の花もぼけるくらいまで被写界深度が浅くなります。さらに画面全体を明るく仕上げることで、春のやわらかさや透明感を誘い出せたと思います。日陰では画面全体が青っぽくなり、冷たい印象になりがちです。このシーンでは春の暖かさを表現したかったので、ホワイトバランスを曇天に設定し、桜のほのかなピンクを引き出しました。FE 50mm F1.2 GMは、肉眼で見るものとはまったく違う世界を見せてくれる、魔法のようなレンズ。被写界深度を浅くすると、ピントを合わせる位置によって印象が大きく変わるので、それを探っていくのも楽しいと思います。

G MASTER
FE 50mm F1.2 GM SEL50F12GM

超広角でダイナミックに捉える、
しだれ桜

FE 14mm F1.8 GM, 14mm, F11, 1/640秒, ISO200

幹の生命力あふれるたくましさと、鮮やかな花を付けた枝の動きにひかれて、根本から見上げて撮影した一枚。生き生きとした桜の姿を写したくて、太陽に向かって撮影しています。桜の花や青空に露出を合わせて幹を黒く沈ませ、あえて木肌のディテールを見せないことで、幹や枝のフォルムが強調され、老木の力強さが表現できました。DROを効かせすぎないことも重要です。伸びやかな枝のリズムをダイナミックに表現したかったので、FE 14mm F1.8 GMを選択。カメラのアングルをほんの少し変えただけで見える世界が大きく変わるので、フットワークを軽くして手持ちでアングルを探りながら撮ると、このレンズのおもしろさが味わえると思います。G Masterの高い描写性能で画面周辺まで細やかに像を結べますし、収差もよく抑えられています。コンパクトで軽いので、カメラバッグに忍ばせておきたい一本です。

G MASTER
FE 14mm F1.8 GM SEL14F18GM

桜の撮影に出かける前に
チェックしよう

開花状況をチェック

日本列島を北上するように開花していく桜。有名な桜の観光スポットは、WEBサイトなどに開花状況が載っていることが多いので事前に確認してから出かけましょう。また、この時期は春霞みで午後は青空になりにくく、人出も多くなるので、写真の撮りやすい午前中や朝早くから出かけるのがおすすめです。

必要な装備をチェック

たくさん歩くことの多い桜の撮影では、疲れないようにできるだけ身軽な装備で出かけるのがおすすめ。そこで荷物を最小限に抑えながらも撮影を存分に楽しむために欠かせないアクセサリーをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

ご覧いただき、
ありがとうございました

お届けした内容に関して皆様のご意見・ご感想をお聞かせください。
いただいた貴重なご意見は、今後に役立たせていただきます。