その宿は、雑誌で紹介されたり広告を出したりするような宿ではなく、言ってみれば、一般の人はほとんど知らないような宿だったんです。僕たちが泊まったのも、たまたまでした。でも、温泉宿の中にはこんなにいい部屋があるのかと驚くくらい、すごく気に入ったんです。良い宿という基準は人それぞれですが、僕たちの気に入る宿はこんな場所に人知れずあったんだという感動がありました。それで、雑誌や広告に載っている宿以外にも良い宿はあることをいろんな人に知って欲しい、というか、半分くらいは「こんなに良い宿見つけちゃった」と自慢するような気持ちで、その宿を紹介するためにウェブサイト“タビエル”を作ったんです。
“タビエル”を作ってからは、アクセスしてくれた人たちからも、オススメの宿についての口コミ情報が集まってきて、もっといろいろな温泉宿に泊まってみたいと思うようになりました。“タビエル”に集まってくれる人たちは、私たちなんか足下にも及ばない旅の猛者たちですが、私や妻と趣味の合う人も多いので、情報交換を続けるうちに、ますます温泉宿にはまっていきました。
泊まった温泉宿で写真を撮るようになったのも、サイトを作ってからです。最初に使っていたのは60万画素のコンパクトデジタルカメラでしたが、撮っているうちにもっと綺麗な写真を残したいとも思うようになり、4年前からは一眼レフのデジタルカメラを使っています。今はもう、泊まった宿や料理の写真を撮ることは、温泉宿めぐりの楽しみのひとつになってますね。撮影する時、露出にあまり気を使わなくてすむように、いつもRAWで撮影しています。自宅に帰ってRAW現像しながら撮った時のことを思い返すのも楽しいですよ。
でもね、写真を撮ることが旅行のメインになってしまうのは嫌なんです。まずは、宿や温泉を楽しむことが最優先。その点で、この“α350”のライブビュー機能はすごく便利ですよね。ファインダーを覗くという行為をしなくて良い分、自分の楽しい時間を中断せずに写真が撮れるんです。それに、どんな風に撮れているのか液晶でそのまま確認できるから、いろいろなアングルで何度も撮り直したりしなくてすむのも良い。そういうことをやっていると、ついカメラの方がメインになってしまうから。“α350”では、ほとんどライブビューでしか撮ってないくらいです。AFやシャッターの切れるスピードも、ファインダーを使って撮るのと違和感ないですよ。
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)は、なんとなく目を引かれた宿のしつらえや、物を撮った写真です。ライブビューのおかげで「写真を撮るぞ」と構えたりせず、自然な気持ちでシャッターを切ることができました。
素人なのに生意気に聞こえてしまうかもしれませんが、自分の心を動かした物やその宿がもつ自然な空気を撮りたいというのが、僕の写真に対するテーマのようなもの。プライベートで宿に泊まる時は、「この設備を撮らなくちゃ」とか「部屋の全体を綺麗に収めるためには……」とか考えているわけではなく、とても気楽に写真を撮っているんです。“α350”は、その気楽さにピッタリなカメラですね。 |