Concept 開発コンセプト
圧倒的なテレ端の描写と
“寄れる”という強みが
撮影領域を拡張する
メカ設計
金子 周平
金子:70-200mm F2.8というのは、スポーツからポートレート、風景までいろいろな用途で活躍するレンズです。そこで撮影ジャンルごとに個別でアプローチしながらどんな性能が必要なのかを改めて精査し、それぞれのシーンでベストな性能を発揮できるレンズを追求しました。例えばスポーツでは実際にサッカーの試合に何度も赴き、光学性能やAF性能をはじめ、グラウンドでの使い勝手やハンドリング性まで検証しています。また、望遠ズームレンズなのでテレ端でのハイレベルな描写性能を実現することはもちろん、プラスアルファの要素として最短撮影距離0.96mにもこだわっているのが特長です。優れた近接撮影能力により、室内でも使えるポートレートレンズとして活躍できるほか、桜や紅葉などを撮る際には望遠マクロのイメージでも使えます。高解像と美しいぼけ味を両立したテレ端の圧倒的な描写、それに最短撮影距離0.96mという新たな強みが加わることで、70-200mm F2.8というレンズの撮影領域をこれまでになく広げたのがFE 70-200mm F2.8 GM OSSです。
フローティング機構にこのレンズの
設計思想が集約されている
光学設計
宮川 直己
宮川:最短撮影距離を短縮し、寄れる望遠ズームにするというのは光学設計側からの提案です。描写性能としては他社に負けないレベルを目指すというのは当然ありましたが、G Masterとしてもう一つ尖った特長をつくりたいと考えたのです。メカ設計側からまずは自由に設計してみてくれと言ってもらえたので、最短撮影距離0.96m、最大撮影倍率0.25倍という明確な目標を設定し、その実現のために複数のフォーカスレンズ群を動かすフローティング機構にチャレンジしました。最初は3つのフォーカス群を同時に動かすことも検証するなど、あらゆるバリエーションが考えられるなかで一番性能を出せるのは2つのフォーカス群だというのが我々の結論です。
このフローティング機構は光学設計の想いが一番反映されているポイントであり、最も苦労したところでもあります。2つのフォーカス群を連動させてフォーカシングしているため、どういう関係性をもって動かすかがとても重要です。どちらのレンズにどれくらい光を曲げる力を持たせるかという光学的観点だけでは不可能で、メカ設計や制御の観点からも協力してもらいながら高い光学性能を実現しています。フローティング機構の採用は、近接撮影で増加しがちな諸収差を効果的に補正し、中心から周辺まで良好な解像感を保ちながら効果的に最短撮影距離を短縮できるだけでなく、光学性能全体の底上げをする役割も大きく果たしています。このレンズを使う方にはぜひ一度、近距離でのポートレート、最短撮影距離0.96mまで寄ったときのぼけ味を試してもらいたいですね。