レンズ史に名を刻むツァイスの真価

※2013年8月現在

レンズを変えた、カールツァイスの軌跡

写真レンズ発展の歴史は、カールツァイスなしには語れない。カールツァイス社は十九世紀半ばのドイツ・ケルンでその産声を上げる。カール・ツァイス自ら、厳しい検査に合格しなかった製品は打ち壊し、世に出さなかったという逸話が残っているほど、品質管理には当時から絶対の信頼を誇っていた。そして、エルンスト・アッベとの出会いがレンズに革命をもたらす。
それまで経験に頼っていたレンズ設計を、初めて科学的なアプローチによる光学技術として理論化したのだ。さらに写真レンズの発展を飛躍させたのが、カールツァイス社による全く新しいレンズ光学系の開発だ。「プロター」「プラナー」「ゾナー」と言った、歴史に残る往年の名レンズの誕生である。色収差の評価に使われる「アッベ数」や、コマ収差と非点収差を抑える「アナスチグマート光学系」、さらにホタル石を用いた「アポクロマート」などの現在も使われている光学技術は、カールツァイスが開発・発展させたものであり、カールツァイスの光学技術の歴史が写真レンズの歴史そのものだと言っても過言ではない。

歴史に残るツァイスの名レンズ

Proter プロター(1890〜)
カールツァイスが写真部門を設立し最初に誕生した写真レンズ。原形や基本という意味のプロトから命名。
Planar プラナー(1896〜)
大口径と像面の平坦性を両立し、かつ非点収差の除去にも成功した、高性能レンズの代名詞となったレンズ。
Tessar テッサー(1902〜)
プロターと改良型のウナーから発展したレンズ。先鋭な描写を得られることから「鷹の目」と称された傑作。
Sonnar ゾナー(1929〜)
ツァイスレンズの高画質を世に知らしめた名レンズ。当初は標準レンズだったが、現在は望遠系のレンズに採用。

カールツァイスが見いだした、美の指標

2つの写真を見比べて欲しい。あなたはどちらがシャープに見えるだろうか。左は「解像力は高くないが、コントラストが高い」写真。右は「解像力は高いが、コントラストの低い」写真である。
写真レンズの評価が解像力一辺倒だった時代に、コントラストと解像力がシャープネスに与える影響を提示し、それらを総合的に評価するMTF(Modulation Transfer Function)を提唱したのがカールツァイスだ。今ではレンズ性能の評価にMTFを用いていない企業はないといっていい。カールツァイスは、美の指標ともいえるMTFをレンズ1本1本に示すことで、カールツァイスレンズの描写の良さを保証したのである。

レンズ性能がひと目で分かるMTF

(1) コントラストの再現(%) (2) 像の細かさ (空間周波数 本/mm) (3) 画面中心からの距離 (mm)

MTFは、画像(被写体)における細かさごとのコントラストの再現を示したもので(上左図)、通常は画像が細かくなるほどコントラストも低くなる。レンズメーカーが示すMTFの多くは上右図のように、画面の各点(画面中心からの距離で示す)におけるMTFを、画像の細かさごとにまとめて表示する場合が多い。

至高のT*(ティースター) コーティング

レンズ表面に薄い膜を均一に蒸着することで、表面での光の反射を抑え、レンズの透過率を上げる技術「レンズコーティング」が、もともとカールツァイスの特許であったことはよく知られている。
カールツァイスはさらに写真用レンズにおいて、いく層もの薄膜を重ねる多層膜の理論を確立した。これが「T*コーティング」である。それまでは、レンズ表面での反射が多く、レンズの透過率は低かったため、レンズ枚数を多くして性能を上げることは困難だった。しかし「T*コーティング」がそれを可能にし、より高性能なレンズが開発できるようになったのである。また、それによりレンズの内面反射も抑えられ、フレアの少ない、よりコントラストの高いレンズの開発もされるようになった。
カールツァイス社では、この「T*コーティング」を単にレンズ面に施しているというだけでなく、複数のレンズで構成される光学系全体の性能が基準を満たしている場合のみ「T*」と記載し、高い信頼性の証としている。

コーティングの有無による光の反射量比較概念図

(1) 光源  (2) 撮像素子  (3) 反射が多い  (4) 反射が少ない

カールツァイスの描写力を、NEX-7で

NEX-7をはじめとするEマウントでカールツァイスレンズを楽しむために開発されたのが「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」と、「Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS」だ。「Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA」はカールツァイスならではの描写力を存分に堪能できる開放F値1.8の大口径広角単焦点レンズである。EDガラスを採用した光学設計は、諸収差を良好に補正し、画面の中心から周辺までの高い解像感、緻密な描写力を遺憾なく発揮してくれる。また、最短撮影距離0.16mと高い近接撮影能力を備えているのも心強い。そしてもう一本、カールツァイスレンズによる撮影の幅をさらに広げてくれるのが標準ズームレンズである「Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS」だ。最新の光学設計により、豊かな発色と高い解像感を堪能できるこのレンズは、ズーム全域で開放F値4と使い勝手が良く、光学式手ブレ補正機構も内蔵。コンパクトかつ軽量なボディで持ち歩きしやすく、幅広く活躍するレンズだ。

Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA SEL24F18Z

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Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA SEL24F18Z

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カールツァイスのさらなる表現力を、LA-EA4で

カールツァイスでの写真表現をより広く、深く楽しみたい方には、マウントアダプター「LA-EA4」をおすすめしたい。「LA-EA4」はEマウントカメラですべてのAマウントレンズ(*)を装着できるだけでなく、ソニー独自開発の「トランスルーセントミラー・テクノロジー」の搭載により、静止画・動画どちらでも高速・高精度なTTL位相差検出方式AFが可能だ。これによりAマウントのカールツァイスレンズすべてを使用でき、そのなかにはカールツァイスが誇る名レンズの代表格「プラナー」や、先鋭的な描写で多くのフォトグラファーを魅了してきた「ゾナー」の名を冠するレンズももちろん含まれている。つまり、さまざまな撮影シーンに応じて最適なカールツァイスレンズを選び、「LA-EA4」の高速AFでその描写力を存分に生かしながら撮影を楽しむことができるのだ。

* STFレンズはマニュアルフォーカス専用、またテレコンバーターは使用できません

LA-EA4 マウントアダプター
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Planar T* 85mm F1.4 ZA SAL85F14Z
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F1.4の絞り開放値から理想的な描写性能を示し、全画面にわたり高い解像感と美しいぼけ味を高次元で両立する、新時代の「プラナー」。

Sonnar T* 135mm F1.8 ZA SAL135F18Z
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焦点距離135mmクラスでは非常に明るい開放F値1.8の大口径望遠レンズ。高い解像感と画面周辺までシャープで緻密(ちみつ)な描写を誇る。