“α” Owners' Magazine Vol.1

α99のために開発されたフラッグシップフラッシュ

HVL-F60Mに秘められたポテンシャル

ボディの高感度性能が上がるなかフラッシュのあるべき方向性とは何か。
ただ単に明るく照らすためだけに生まれたフラッシュならここまで大光量にこだわらなかったと開発者は語る。
α99のために誕生したフラッグシップフラッシュHVL-F60M、その開発に秘められた狙いとは

α99のために生まれた、フラッグシップフラッシュ

畑中 :
HVL-F60M(以下F60M)は、α99の発売に合わせて本当のフラッグシップフラッシュをつくろうということで開発がスタートしました。そのためα99ユーザーの方が主に使っていただくことを初めから想定し、開発コンセプトもα99と同じ2つのポイントに重点を置いています。一つ目は、狙い通りの感動表現ができること。そのために前モデルHVL-F58AMと比較して基本性能を格段に上げています。ガイドナンバー60の大光量はもちろん、発光レベルの切り替えを6段から25段にし、最小発光量も1/32から1/256にしました。また本格動画機能を搭載したα99に向けた新機能として、ビデオライトを搭載しています。二つ目は、決定的な瞬間を逃さないということ。ユーザーが即座に自分の想い通りの設定にできるよう操作性を強化しています。これは基本的なことなのですが、やはりポートレート撮影などで一瞬の表情を逃さないためにも、フラッシュの操作をよりスムーズに素早くできるよう工夫しました。

陰影を演出する光を求めて、限界のガイドナンバー60

畑中 :
フラッシュをお使いのお客様は、もう少し光量があればいいのにという場面に遭遇したことがあると思います。やはりガイドナンバーが大きいフラッシュを持っているというのは安心感につながるので、できるだけ大きいガイドナンバーにしようというのが当初からありました。ただ、大きければいいのかというとサイズの問題もあるので、使いやすい大きさをキープしつつ、そのなかで最大のガイドナンバーというのをどこまでいけるかというのを限界までチャレンジしてできたのがGN60でした。
渡邉 :
設計的にはGN60というのはかなりハードルが高い。実は、もうひとつ大きいコンデンサーを使えばもっと出力を上げられることも分かっていますが、安全面での品質を配慮して限界ぎりぎりのGN60にしています。また、GN60まで上げた理由として作品撮りへのこだわりに応えたいという狙いがあります。そもそもα99のISO感度は上がっているので、どこまでフラッシュに大光量を求めるのかということは開発陣でも議論しました。たとえば、暗いところでちゃんと写るように撮りたいだとか、直接光を当てて影をなくしたいというのであればHVL-F43AMでも十分だと思います。それでもGN60まで上げた理由、それはより強力な光によって影の演出の幅をさらに広げるためです。またバウンス撮影時にはより遠くからのバウンス光で、今まで以上に自然な仕上がりにできます。後方に向けてバウンスするときなど光をまわす場合にはやはりある程度光量が必要になりますから。つまりF60Mは、α99で作品撮りを追求していただくために生まれたフラッシュだと言えます。

手元を見ずに、思い通りに設定できる操作性を目指して

畑中 :
フラッシュが活躍するシーンとしては結婚式などの式典がありますが、そういうシーンは撮り逃せない場面の連続です。だから自分が設定したい光にすぐ設定できることが重要ですよね。また、ポートレート撮影でも当然モデルを相手に行うものなので、設定に手間取らずに簡単にできるものでなければなりません。その点を十分考慮して、フラッシュの手元を見ずに素早く設定できるようにするのが今回の課題でした。
渡邉 :
ただ今までF43AMやF58AMを使っていただいたお客様でもすぐ慣れ親しんでいただけるようボタン配置自体を大きく変えることはしていません。その代わり今回新たに、視認性の高いドットマトリクス液晶とジョグダイヤルを搭載しています。操作パネルの中心にジョグダイヤルを配置しているので、その右にあるボタンが何で、左にあるボタンが何かを覚えてもらえれば手で触っているだけで分かると思います。またジョグダイヤルを回せば設定したい数値に素早く持っていくことができます。ダイヤルを回す際は明るくする方向、暗くする方向も決まっていますので、それこそファインダーをのぞいたまま設定できるはずです。それに加え、操作ボタンにショートカットキーを採用していることも新たな試みです。マニュアル撮影でレベルを変えたければレベルボタンを押せばすぐに調節できますし、オートで撮影しているときに調光補正ボタンを押せば一発でできます。また液晶表示も自分が設定したい項目の視認性を高めるなど、とにかく即時性の高い操作性を実現するために随所に工夫しています。作品撮りに集中してほしい、その想いが強く反映されているのです。

一眼で動画を撮る、そのこだわりに応える3灯式LEDライト

畑中 :
ビデオライトを搭載するにあたっては、ちゃんと一眼ユーザーが使いたくなるようなものでなければ意味が無いというところからスタートしています。というのは、既存のビデオライトは照射範囲を絞って光量を出すという作り方をしているものが多いです。しかし一眼ユーザーにとって画角は非常に重要なポイント。照射範囲が狭く、周辺光量が落ちてしまう既存のビデオライトではユーザーのニーズを満たせないと考えました。そのため、範囲を絞らずに広く照射できるような、α99での動画撮影に適したビデオライトにしています。
渡邉 :
もちろん広ければ広いほど明るさは落ちてしまうので、設計ではそのバランスをとるのが非常に難しかったですね。それで行き着いたのが3灯式のLEDライトでした。3灯というのは、よりワイドに照射できるだけでなく、2m先まで照射するためにも必要な数でした。照射範囲と照射距離は特にこだわったポイントですね。LEDライトの色温度設定は太陽光と同じ5500ケルビンに合わせていますので、画角全体を均一にかつ自然に明るくすることができます。ただ3灯だと壁際で撮影するときに影が3つ落ちてしまうことがあります。そのときは内蔵されているディフューザーを下ろしてもらえれば、マルチシャドーを防げるという工夫も施しています。またF60Mは防塵防滴設計になっているので、発熱をどのように放熱するかも非常に苦労しましたね。放熱の確認のためだけに試作したりもしました。こうした細かい点にも気を使っていますが、すべてはレンズ径を変えて動画撮影を楽しむ一眼ユーザーのためのビデオライトとはどんなものかを追求した結果です。

人肌を美しく魅せる、それがソニーのフラッシュ

渡邉 :
ソニーのαはミノルタ時代も含め、ポートレートに適したレンズ群をラインアップしていますが、実はフラッシュもまたポートレートに向いた機能を持っています。F60Mに限らず、ソニーのフラッシュはRGBの補正値をカメラ側に指示することができます(※HVL-F60M、58AM、43AM、20AM)。これは5500ケルビンを基準として、5500ケルビンから上下する光量のときは、人肌が最も美しく再現できる色温度に調整するためです。たとえばポートレート撮影時に、フラッシュをがんがん使いながら撮影していると充電がしきれていないタイミングでシャッターが押されることも多々あると思います。このときの電圧によって色温度は変わってしまうのですが、そのRGBの補正値をカメラ側にフラッシュが送信し、より人肌が美しく見える色温度になるよう細かく補正しているのです。だからソニーのフラッシュは、ソニーのカメラやレンズでこそ最大限にその性能を生かすことができます。
畑中 :
さらにα99では初めてFEレベルロック機能が搭載されました。これは人物を撮るときに背景の明るさが変わると自動的に発光量が変わってしまうのを意図的に防ぎ、狙い通りの光量で作品を仕上げることができるものです。そういう意味でもα99でのフラッシュを使用したポートレート撮影は格段に表現の幅が広がっています。α99の魅力を引き出すF60Mとの組み合わせで、ぜひワンランク上のポートレート撮影を楽しんでいただきたいと思います。

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