7月よりスタートした結成15周年、デビュー10周年のAnniversary Tourを含む、UVERworldの全国ツアー。北は北海道から南は沖縄まで、約6カ月に渡るこの旅路をα7R IIで撮り続けている人物がいる。
ソニー・ミュージックレコーズの小山裕司だ。彼は2007年以降、UVERworldの活動をサポートするチーフ・ディレクターでありながら、“UVERworldに最も近いカメラマン”としても活動してきた。
現場に立つとき、ただ腕を組んで彼らを見つめているのは性に合わないと感じた小山氏は、今では音楽メディアにも撮った写真が大きく掲載されるまでになっている。
そんな彼に、レンズを通してみるUVERworldの魅力と、今回のツアーで初めて導入したというα7R IIの印象を聞いた。
小山(以下は敬称略):最近のコンパクトデジカメや携帯電話は、非常に良くできていて、誰でも簡単にそこそこの写真を撮ることができます。
ただ、その便利さゆえに“雑”になってしまうことがあると感じていました。
以前に読んで感銘を受けたブランディングの専門書に「プロがお粗末なことをやるべきではない」と書かれていて、どうせやるならカメラをとことん追求しよう、と。
一見、スマホでパパッと撮ってTwitterにアップしましたというようなカットなんだけど、実はきちんと手間をかけて撮影していて、よく見るとクオリティが違うというのは格好良くありませんか? そんなことがきっかけで、一眼レフを導入しステップアップしていくうちに今に至りました。
UVERworldという最高の被写体が間近にいて、ライヴ会場に行けば助言をくださるプロのカメラマンさんがいる。
この環境は私にとって幸運でしたね。デジタルだから好きなだけ試行錯誤できたというのも大きかったと思います。
そんな中、小山氏はα7シリーズに出会う。
当初は借りて使っていたが、α7S、α7 IIと乗り換えていき、現在はα7R IIを愛用中。
それまで使っていた35mmフルサイズセンサー搭載の一眼レフカメラと比べてさまざまな点で気付きがあったという。
小山:撮れる写真の質が低くなったのでは意味がありません。
しかし、それが無駄な杞憂であることは使い始めてすぐわかりました。
それまで使っていた一眼レフの描写は少し柔らかめだったのですが、α7 IIは見たものをそのままクリアに再現、エッジ感に優れ、輝度差のあるところでも締まりのある黒を表現してくれます。それと、その軽さゆえに片手でも撮れてしまうことがすばらしい。
また必要な操作が右手の3本の指だけで行なえるようになっていることも現場では重宝しています。
両手で持つことを前提に設計されている他社の一眼レフとは異なり、ボタンの機能割り振りもきちんと考えられていて、めまぐるしく状況が変わるライヴの撮影では必要不可欠な仕様ですね。個人的にはCFでは無く取り回しに優れたSDメモリーカードに記録できるというのも大きなメリットだと考えています。
あとは、オートフォーカスが速くて賢いことにも感心しました。
今までは基本的にマニュアルフォーカスを使っていたのですが、α7R IIに乗り換えてからはほとんどオートで撮るようになりましたね。
ものすごい高性能なんだけれど、それをコンデジのような感覚で使えるのがα7シリーズの良いところだと感じています。
しかし、いかにα7シリーズが使いやすいとは言え、常に薄暗い上に、照明によって大きなコントラストも発生し、しかも被写体が激しく動き回るライヴステージはカメラ撮影のシチュエーションとして最悪の部類の1つ。
一眼レフを導入したばかりのころは苦労したのではないだろうか?
小山:そこは毎日彼らに帯同しているので、失敗したらそれを次の日の課題にするということにしています。
後は、やはりライブの前にきちんと考えるようにしています。
UVERworldを格好良く撮りたいということを第一のテーマに、「今回は輪郭だけが浮かび上がっているような写真を撮ろう」とか、その日ごとの目標を定めるようにしています。
ステージの演出や照明の転換などについてもあらかじめ知っているわけですから、その日だけ入るカメラマンさんにはできないことができますよね。
MCのパートは動画で撮るなど適材適所で静止画・動画を切り替えて撮っているのも、他のプロとは違うところ。α7R IIはそれを手元でサッと切り替えられるし、なにより4Kで残しておくことができます。
なお、現在はα7R IIをメインに、α7 IIを併用していて、広角単焦点レンズと、望遠ズームレンズを装着し、それを切り替えながら撮っています。
2台合わせても1台分くらいの重さしかないのがα7ならでは。液晶モニターがチルト式なので、変わった角度から撮りたいと思った時にも画面を確認しながら撮ることができました。
ちなみに最近、少し意図して撮り始めたのが、曲と曲の間のわずかな空白。
演奏中に彼らが格好良いのはもちろんなんですが、演奏が終わったあとのしぐさって、その人の“型”が出るんです。
UVERworldのように10年以上もステージに立ち続けているアーティストだと、そのさまが実に洗練されてくる。
たとえばベースの信人が楽器のチェンジのために後ろに下がろうとバックステップするようすなどがすごく美しいと感じています。
そして、その“型”の美しさこそが、プロのアーティストとして最前線に立ち続けてきたUVERworldの“自信”の現われでもあるのだと小山は言う。
今や、UVERworldは、ただありのままを撮っただけでもさまになる。ステージ上においては言うまでもない。
小山:私が彼らと行動を共にするようになった8年前は、まだ彼らの活動の大半を僕らがサポートしていました。
それがある時から半分になり、今ではステージ上のことに関して我々が口を挟む余地がありません。撮りためた写真を改めて確認するとそれがすごくよくわかる。
自然なままの、野生に戻った状態のUVERworldがそこに映っているんです。
今後は、そういった見方のできる、つなげていくとストーリーになるような写真を積極的に撮っていこうと考えています。
年代ごとに異なり、月日が経つにつれますます洗練されていく彼らの“型”を残していきたい。
それと、これからはライヴの写真だけに特化せず、ステージの外の彼らももっと記録していこうと考えています。
そう考えた時、α7R IIの大きさがありがたい。持ち歩くことすら躊躇してしまう大きな一眼レフは、やはり日常を押さえるのには向いていません。
何かあったときにサッと持って行けるこの機動力が、何よりも素晴らしいα7シリーズの美点だと思います。