ディレクター ライアン・マクガイヤー様(Cutters Studios 代表)
DOP ジャンパオロ・ルポリ様
カラリスト 亀井 俊貴様(Cutters Studios)
「エクステンションシステムはBig Game Changer。」小型軽量なエクステンションシステムとローライトに強いVENICEでなければ撮れない映像
米国シカゴに本社置くグローバルカンパニーで、日本でも東京恵比寿にスタジオを構えるCutters Studios様。John Cooper WorksブランドCM(MINI)の撮影にあたりCineAltaカメラ VENICEを採用いただきました。
Cutters Studios代表
ディレクター
ライアン・マクガイヤー様
DOP
ジャンパオロ・ルポリ様
Cutters Studios
カラリスト
亀井 俊貴様
マクガイヤー様:今回のCM制作にあたり、初めてVENICEを採用しました。これまでは他社のカメラを使うことが多く、正直なところ、今回のプロジェクトまでVENICEの存在は知りませんでした。
今回VENICEを使った理由は3つあって、一つは彼(ルポリ様)が「使いたい」と言ったこと、次に低照度に強いカメラであること、そして3つ目の理由はカメラヘッドを延長できるエクステンションシステムです。これらについては、後で彼が詳しく話をすると思います。
素晴らしいクルマであることはもちろんですがJCW GPらしく観る者を魅了する見せ方をしたかったのです。
ルポリ様:実は少し前までは他社のシネマカメラを使っていました。フィルム時代から受け継がれたソフトなイメージで、映画のような映像を撮るのに向いていたからです。比較的コンパクトなカメラであったこともその理由です。しかし最近はVENICEを使っています。
VENICE以前のソニーのカメラは解像感があり、そういう意味では良かったのですがソフトな感じがなかなか出ませんでした。しかしVENICEはソフトなイメージの映像で、かつスキントーンが素晴らしく、今までのソニーのカメラとは全く違います。
今回の撮影はPanavisionのアナモフィックレンズを使用しています。私の場合は、今回に限らず、ほぼアナモフィックレンズで撮影します。ロシア製の古いヴィンテージレンズなども使います。最近のカメラは解像感が高いこともあり、このような古いレンズは映像を適度にソフトにしてくれます。アナモフィックレンズで撮ると独特のボケやフレアがありエモーショナルに感じます。
もちろん、プロジェクトによっては通常のレンズでの撮影が適している場合もありますし、アナモフィックレンズで撮影する場合もアナモフィックレンズ独特のボケやフレアなどに頼りすぎるのは良くないと思っています。
ルポリ様:今回の撮影ではかなり暗い環境でのシーンが多く、ローライトに強いカメラが必須でした。その点でVENICEのデュアルベースISO機能は非常に有用です。VENICEのデュアルベースISOは、ISO500とISO2500ですが、暗いシーンでISO2500にすぐに切り替えられますし、ISO2500でもノイズは極めて少なく、非常にクリーンな映像を得られます。実は今回の撮影は全てISO2500で撮っています。
例えば日没に近い時間にISO500で撮っていても、刻々と変化する光に対応し、すぐにISO2500に切り替えることができます。ISO500も十分明るく、多少暗い撮影環境でも、特別に明るいレンズを用意することなく撮れます。しかし私が撮る場合ほとんどが暗いシーンですので、あまり明るいところで撮ることはないですがね。(笑)
マクガイヤー様:もう一つの採用理由のエクステンションシステムです。今回は2台のVENICEで収録していますが、そのうち1台はエクステンションシステムを使用しました。クルマのCMなので走行シーンがありますが、これはクルマのボディにカメラを固定して撮影しています。
クルマの後部から撮っているシーンがありますが、クルマの後部(ルーフからテールライトまで含めて)全体をフレームに入れるため、クルマからかなり離して装着しています。また、クルマの前方下側から狙ったショットも車から多少離れた位置に装着しています。重いカメラだと、この状態で走行するとカメラの重さで上下にブレてしまいます。従って大きなリグを使う必要があるのですが、固定するのが大変で1回装着するのに1時間〜1時間半ほどかかります。
今回の撮影は暗い間に撮影しなければならず、撮影日は夜の短い夏至ということもあり装着に時間がかかる通常のシネマカメラでは時間が足りません。軽量なVENICEのエクステンションシステムだと小さなリグで済むため15分程度で装着でき、その結果夜の間に撮りきることができました。カメラはレンタルですので、時間の節約はコストの節約にもつながります。VENICEだからこそ実現できたショットです。
ルポリ様:また、車内での撮影も行いました。狭い車内で大きなシネマカメラを操作するのは大変ですが、ここでもエクステンションシステムがおおいに役に立ちました。カメラヘッドは小型なので、自由にフレーミングできます。カメラ本体は私の後ろにあり、アシスタントがコントロールします。
アナモフィックレンズも大きく重いので、もし車内でカメラ全体を持たなければならなかったら、自由にフレーミングできなかったでしょう。カメラヘッドが小さいので、レンズを付けても自由に動けました。
もちろん車内の撮影だけは小型のカメラと通常のレンズで撮るという手もありますが、やはり全てのシーンをアナモフィックルックで統一したかったのです。今回は機材準備の関係で1台だけでしたが本当は2台ともエクステンションシステムを使いたかったくらいです。
別の撮影では本体をバックパックに入れて、手にはカメラヘッドだけを持って撮影する場合もあります。こうすると、まるで小さなカメラで撮っているようですが、大きなカメラのパフォーマンスを得ることができます。
将来的にカメラヘッド側でNDなど簡単な操作ができるリモコンがあるとさらに良いですね。フォーカスを含め複雑なコントロールはアシスタントカメラマンが行うので、簡単なもので良いのです。しかしいずれにしても、エクステンションシステムは革新的(Big Game Changer)です!
ルポリ様:今回の撮影では暗いシーンが多かったのでNDフィルターは使っていませんが、明るい環境で使用する場合、VENICEの内蔵NDフィルターは素晴らしいですね。8ポジションあるので、切れ目なく使えます。切れ目なくという意味ではソニーには電子式可変NDフィルターがありますが、8ポジションあれば問題ありませんし、私個人としてはバリアブルよりもステップ式のNDの方を好みます。
多くのカメラは3ポジションなので不便な場合がありますが、8ポジションあると1ストップずつ、きめ細かく変更できるのが良いですね。例えば太陽が出て明るかったけれど、突然雲がかかったような場合でも、素早くNDフィルターを変更できます。
ルポリ様:RAWやX-OCNはデータ量が大きいので、全てのプロジェクトで使う訳ではありませんが、やはり今回のようなグレーディングを必要とする撮影には適しており、今回の撮影ではX-OCN XTで収録しました。
また、4K でハイスピード撮影ができるのもVENICEの優位点です。110fpsで撮影できるのは素晴らしいですね。今回のプロジェクトではたまたま使用しませんでしたが、他の撮影ではよく使います。
亀井様:ダイナミックレンジは非常に重要です。今回のような、暗いシーンで、かつハイライトがあるような環境では、特に重要になります。VENICEは15ストップ+のダイナミックレンジがありますので、非常に自由度の高いグレーディングが可能になります。
ダイナミックレンジがこれだけあると、グレーディング作業に柔軟性を持たせることができます。ダイナミックレンジが狭いカメラの場合は、悪いところを如何にごまかすかという作業になりますが、VENICEの場合は創造性を高める方向で作業ができます。
また今回のように暗いシーンが多い映像ではノイズが問題になることが多いですが、VENICEは非常にノイズか少ないのと、あっても自然なノイズなので気にならないですね。個人的にはノイズが全く無いよりも、「質の良いノイズ」がある方が好きです。VENICEのノイズはデジタル的ではなくグレイン的なもので、オーガニックな感じなのがいいですね。