撮影監督 北 信康様(J.S.C.)
絵が丸く、とても綺麗なスキントーン。バージョンアップで実現したハイスピード撮影
進化を続けるVENICEを実感
2020年10月16日より全国一斉公開となった、角川春樹監督による映画「みをつくし料理帖」の撮影にVENICEが使用されました。
撮影監督
北 信康様
今回の作品は2人の女の子の成長物語なので、2人の皮膚や調子が綺麗に撮れることが望ましく、それが監督の絶対条件だったと思います。そして、料理をモチーフにしたストーリーなので、劇中の料理が美味しそうに見えることが大切でした。その観点から、今回はVENICEのX-OCN XTで撮ることにしました。フレームサイズについては、今回はスーパー35サイズ4K 17:9撮影のシネマスコープ(2.35:1)仕上げです。VENICEで撮るスキントーンはとても綺麗で、とてもいい調子です。「絵が丸い」とでもいうのでしょうか、よくできているカメラだと改めて実感しました。
ISO感度については、Dual Base ISOを活用して屋外ではISO500、スタジオではISO2500ベースのEI 1000で撮影しました。ベースISOとしては500も2500も見え方は変わりがありません。2500でも暗部のノイズ感などなく、ものすごく綺麗です。
予告篇の中では、2人の主人公がカットバックしているシーンがありますが、片方はセットで、片方はオープンセットでの撮影です。照明部が上手く作ってくれているのもありますが、自然につながっているのが見て実感できると思います。
VENICEは15stopを超える広い階調を持っていますので、現場でも攻めずに「最終的にはこうするけど、現場ではここで止めておきましょう」と、ポスプロでの余幅を持たせた撮り方ができます。また、3D LUTをモニタリングLUTとして当て、現場で「こんな仕上がりになりますよ」というのが見せられるのはいいところです。
VENICEならではの強みが内蔵8ポジションNDフィルターです。日本の現場にはよくあることですが、日が暮れ出すと忙しくなり、時間に追われます。しかも、日没1時間前、30分前となると、光量もめまぐるしく変わり、NDを変える時間が芝居作りの邪魔をします。「本番!」と言われてから「ND変えます!」だと「えっ?このタイミングで?」ということになります。 VENICEならば、それがボタンのワンプッシュで済み、現場を止めずに済みます。
今回使ったVENICEは「Ver.5.0」です。以前、映画「初恋」を撮った時の「Ver.3.0」との大きな違いは、ハイスピード撮影ができるようになっていることです。シーンとしては、主役の女の子が幼少期のシーンで走っている場面など、印象的なシーンで使っています。4K 17:9では110コマまで可能ですが、今回は3倍の72コマまで使いました。普通の作品では3倍くらい、アクションでも4〜5倍くらいまであれば十分だろうと思います。VENICEであれば、十分カバーできます。
VENICEでは高感度での撮影が当たり前にできるようになり、「照明が少なくても撮れるよね」みたいな声も聞くようになりました。しかし、高感度に限らず、機材の良さを発揮するためには、一層ちゃんと作っていかないと「“アラ”しか撮れなくなってしまう」という危機感があります。自分の師匠からも「自分に負けるな」と教えられてきましたが、進化する機材に使われることがないよう、一層、切磋琢磨していこうと思っています。
映画『みをつくし料理帖』公式サイト