法人のお客様ラージセンサーカメラ 事例紹介 映画「弥生、三月 −君を愛した30年−」

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映画「弥生、三月 −君を愛した30年−」

撮影監督 佐光朗様 (J.S.C.) / 撮影助手(チーフ) 岩見周平様 (J.S.C.) 

広く撮れる“フルフレーム”と“エクステンション”
フィルター要らずの“スキントーン”と“ハイライト”
これからも迷わず『VENICE』で

2020年3月20日劇場公開の遊川和彦監督作品 波瑠・成田凌主演映画「弥生、三月 −君を愛した30年−」の制作にあたり、CineAltaカメラVENICEの6K フルフレーム撮影を使用。撮影には、VENICEエクステンションシステムCBK-3610XSも併せて活用されました。

撮影監督 佐光朗様 (J.S.C.)
撮影監督 佐光朗様 (J.S.C.)
撮影助手(チーフ) 岩見周平様 (J.S.C.)
撮影助手(チーフ) 岩見周平様
(J.S.C.)

一目見て気に入ったVENICEのトーン

佐光様 今回の作品でVENICEを使おうと思ったのは、ZEISSのSupreme Primeレンズのデモリール撮影をVENICEで行ったことがきっかけです。これまでも、ソニーのシネマカメラで幾度か本篇を撮ってきていましたが、ハイライト表現の好みから、近年はソニーのシネマカメラを離れていました。しかし、このデモリールをVENICEのフルフレームで撮影したところ、内蔵NDフィルターなどの使い勝手も良く、色味も今までのソニーとは一味違う、まさに「フィルムルック」のトーンであることに気づきました。特にVENICEのスキントーン描写が気に入り、今回の作品もVENICEで撮ろうと思い立ちました。

素材の良さにこだわって6K・X-OCN XTで

佐光様 今回の撮影は、6Kフルフレームの3:2サイズで撮影を行い、記録はX-OCN XTフォーマットで行いました。ProRes Proxyでのプロキシ映像も同時に記録しました。作品の仕上げは上下切りの2Kシネマスコープサイズです。

X-OCNのXT・STについては、テスト撮影で比較を行いましたが、肉眼ではほとんど差がわからないほど、それぞれ高いクオリティでした。しかし、2K仕上げとは言え、より高いクオリティで撮影を行うことによる「厚み」が欲しかったことや、合成での抜けの良さなどを考慮して、「最高の素材」にこだわりました。

自然に広く撮れる“フルフレーム”

佐光様 フルフレームでの撮影を選んだ理由は2点、被写界深度と引き尻の点からです。Super35サイズに比べてフルフレームは、被写界深度がより浅く取れる「表現の広がり」が魅力的です。そして、同じ焦点距離のレンズを用いた場合、倍とまではいきませんが、画角が大きく広がります。今回の撮影ではほとんどがロケセットでしたが、ロケセットはとても狭く、カメラの引き尻が十分に取れないことが多くあります。そこで画角を稼ぐために焦点距離の短いレンズ(広角レンズ)を使うと、最近はレンズ性能が良くなっているものの、どうしても広角レンズ特有のディストーションが絵に出てしまいます。その点フルフレーム撮影ではレンズ性能がより優れる、ディストーションが少ない、焦点距離が長めのレンズで自然に広く撮れるというのがアドバンテージでした。

一度使うと元に戻れない“内蔵ND”

佐光様 VENICEの大きな魅力の1つが内蔵NDフィルターです。最近の本篇撮影の現場は、常に時間との戦いです。「天気待ち」なんてこともできない場面がごく普通にあります。

岩見様 刻々と変わる天気や日没近い時間の撮影など、従来のグラス式のNDでは大慌てとなる交換作業がVENICEならボタン一つ、一瞬で終わります。慌てて作業をすると、雨粒がついてしまったり、といったことから、傷をつけたり落としたり、という事故にもつながりかねません。雨粒1つがついただけでも現場は止まってしまいます。そんな心配や手間がないVENICEの内蔵NDは、一度使ってしまうと元には戻れません。

VENICEの持つ8ポジションNDも、ちょうどいい数だと思います。現実的な場面のほとんどをカバーしてくれています。1段階ごとに倍・倍…と、計算がわかりやすく、また、フィルターが切り替わったときにモニターやファインダーの映像上でターレットの回転が見えるため、単純で確実、とても安心感があります。

同一シーンで混在もできる“デュアルベースISO”

佐光様 VENICEの持つ「デュアルベースISO」も、フルフレーム撮影には便利な機能です。例えば、日が落ちてきている場面でBカメで長玉(長焦点レンズ、望遠レンズ)を使うと、フルフレーム撮影では被写界深度が浅くなりすぎて、狙った部分全体にフォーカスが来ないことがあります。そういった場面でAカメはISO500、BカメはISO2500とすることで、違和感なくマッチングをとりながら、狙った通りの絵作りをすることができます。

ISO500とISO2500は見比べてみても、自然画では違いが全くわかりません。安心して組み合わせて使うことができます。時間や現場の照明条件、天候条件に制約がある中、撮影助手や照明部にとってもありがたい存在です。

「時間」までも生み出せる“エクステンション”

佐光様 今回の撮影では、光学ブロックを延長するVENICEエクステンションシステムCBK-3610XSが、特にバス車内のシーンで大活躍しました。1日しか取れない撮影スケジュールで時間との勝負でした。通常は窓を開けたり、張り出しをつけたりといった、大がかりな準備が必要になりますが。この作品のバスのシーンはすべて車内でエクステンションを使って撮っています。

そのほかにも、ロケセットなどで引き尻が取れない場面での撮影にも活躍をしています。本当は全篇エクステンションで撮りたかったほどです。

エクステンションによって、カメラをギリギリまで引けること、さらに、ラージフォーマットで広く撮れることはベストコンビネーションです。まさにVENICEでしかできない撮り方だと思いますし、デジタルでしかできない撮り方だと感じました。

今回の作品では、エクステンションがなかったら時間的にこなせない、撮れない絵がたくさんありました。エクステンションは、単に物理的な制約をクリアしてくれるだけでなく、とても限りがある「時間」を生み出せるというのが大きなポイントです。

フィルター要らずの“スキントーン”・“ハイライト”

佐光様 作品を仕上げまで終えてみて、VENICEはグレーディングの時でもハイのラチチュードがとても広く感じました。撮っているときには「残ってない」と諦めていた階調も、ポストプロダクションでは残っていたことが多くありました。フィルターワークについては、合成を伴う作品では合成作業に支障を来す場合があることや、ポストプロダクションでも対応できるので、今回は使っていません。VENICEの前まで使っていたカメラでは、それでも肌やハイライトのトーンが気になることがあり、柔らかくするためにフィルターを使いたくなるのが普通だったのですが、VENICEではそのままでいい絵が撮れると感じました。

使い手が増えてきているVENICE

佐光様 この作品の前後には、フイルム撮影で1作品、デジタル撮影で3作品を撮っていますが、デジタルで撮ったものは全てVENICEを使っています。VENICEはまだ業界の主流というわけではなく、プロデューサーに提案したりすると「え?」と言われることも多いのですが、プレゼンテーションをして、実際の映像を見せたら皆納得してくれた結果です。私たちが知っているだけでも、すでに数人の撮影監督らがVENICEを採用して作品を撮っています。最近ではVENICEを使用した撮影報告も多くなってきています。

信頼でき、進化も早いVENICE

岩見様 すでに、VENICEで作品を撮るようになって1年以上が経過しますが、その間に撮影データのトラブルなどは一度もなく、とても信頼できるカメラだと感じています。デジタルシネマカメラでとかく課題になりがちな熱なども余裕があり、暑い場所や暑いシーズンでの撮影でも、ほかのカメラに比べて安定しています。電源投入時の立ち上がりもとても早く、現場を待たせません。さらに、この1年の間にも繰り返しバージョンアップがあり、VENICEがどんどん進化しているのを実感しています。ソニーはフィードバックにもすぐに応えてくれる印象があります。

機能だけでなく“スキントーン”で、これからもVENICE

佐光様 VENICEは従来のSuper35級のカメラボディサイズでフルフレーム撮影ができるカメラです。すでに慣れ切って当たり前になってしまいましたが、これは冷静に考えると驚くべきことです。被写界深度の浅さや、画角の広さ・引き尻のゆとりを考えると、もはやSuper35サイズでの撮影に戻ることができません。エクステンションなど、VENICE特有のアドバンテージもありますが、VENICEのスキントーン自体が好きなこともあり、これからもVENICEで作品を撮っていきたいと考えています。

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