株式会社 Air Media 様/監督 古波津 陽 様/撮影監督 須藤耕太 様
CineAlta 4KカメラPMW-F55を使ってトルコの歴史や風土を4K映像を駆使して魅せる迫力、
臨場感豊かなドキュメンタリー番組を制作。
女優北川景子さんが、トルコの歴史、文化、風土を巡るドキュメンタリーをCineAlta 4Kカメラを使って4Kで撮影。しかも4K RAWで収録することで、より質感の高い、映画のような雰囲気を創っています。
4K制作は、映画、スポーツ、音楽ライブなどで普及が進んでおり、ドキュメンタリー領域でも注目を集め始めています。2014年12月30日にBSフジで2時間番組としてハイビジョン放送されるとともに、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントから「Mastered in 4K ブルーレイ」シリーズの一環として4Kコンテンツとしてもリリースされる予定の「北川景子 悠久の都 トルコイスタンブール〜2人の皇后 愛の軌跡を辿る〜」はその1本となります。女優 北川景子さんが出演するドキュメンタリーで、CineAlta 4KカメラPMW-F55を使って4K RAWで撮影されました。
企画・制作担当の株式会社Air Media作家・プロデューサー米澤伸子様、テクニカルプロデューサー伊藤格様に番組の内容やPMW-F55による4K RAW撮影の狙いを、監督 古波津 陽様、撮影監督 須藤耕太様に、運用の成果と評価、ドキュメンタリー撮影での可能性などを伺いました。
なお記事は、2014年9月下旬に取材した内容を編集部でまとめたものです。
今回の作品は、女優 北川景子さんがトルコ・イスタンブールを巡るドキュメンタリーですが、単なる紀行番組とは趣が異なる主旨で企画されました。トルコの歴史を語る時に欠かせない、それぞれ千年の歴史を誇るビザンツ帝国とオスマントルコ帝国の繁栄を支えた二人の皇后にスポットを当て、北川さんに二人の軌跡を追ってもらうことでトルコ独特の歴史や文化、風土を紹介する狙いです。
一人はビザンツ帝国ユスティニアヌス帝の皇后テオドラ、もう一人がオスマントルコ帝国スレイマン一世の皇后ヒュッレムです。この二人には時代こそ違え、数多くの共通点があります。出自が貧民層であること、そこから皇后にまで登りつめ、皇帝を支えて帝国の繁栄に貢献するといった点です。多くの民衆に愛され、いまなお語り継がれる二人の愛の軌跡を、北川さんが現地の専門家のインタビューなどを通して紹介する場面も見どころの一つになっています。
北川さんとは以前にもHD制作の番組を企画・制作した経験がありました。今回は、さらに高精細な4K映像を使って、より映画的な雰囲気で撮影してみたいと考え、機器やシステム選定をテクニカルプロデューサーにお願いしました。その結果、PMW-F55を使い、より質感の高い映像収録が可能な4K RAWで撮影することになりました。
PMW-F55を使った4K撮影には、ビデオライクなオペレーションが可能なXAVC 4Kという選択肢があります。これはドキュメンタリー撮影にも有効に使えると思っていますが、今回はプロデューサーから映画的な雰囲気で撮りたいとの要望があり、あえて4K RAW収録を推奨しました。
4K RAW収録の最大の魅力は、キャプチャーできる豊富な情報量がもたらしてくれる高精細な映像美ですが、必然的にデータ量も膨大になり、編集やカラーコレクションといった後工程が複雑になりがちです。したがって、効率的なワークフローが構築できるかが重要なポイントになります。
今回、PMW-F55による4K RAW撮影を推奨した背景には、過去の経験がありました。ソニーのヘッドホンのWeb映像で運用した経験があり、DITシステムなどを用意することで想像以上に容易なワークフローを構築できました。また、マルチフォーマット/パラレルREC 対応なので、4K RAW収録と同時にXAVC HD収録ができる点も魅力でした。オフライン編集などに有効に活用でき、これも効率的なワークフローに貢献すると判断しました。
もう一つは、機器の信頼性、安定性、そして機動性になります。今回のように、海外での少人数のスタッフで原則1台での撮影になりますと、不可欠の要件になります。この点でも、ソニーブランドへの信頼感や実績、評価から支障はないだろうと判断しましたし、機動性においても映像制作において豊富な経験を持つ監督、撮影監督なので不安はないだろうと考えました。仕上げの作業は残っていますが、無事に撮影を終了することができ、企画の主旨に沿った映像世界を構築できたと思っているので判断は間違っていなかったと考えています。
イスタンブールは、独特の風情、景観をもった街です。ユスティニアヌス大帝が再建したとされるアヤソフィア大聖堂など歴史的な建造物も多く、世界文化遺産の街でもあります。どこまでも続くような石畳の道路や地下通路、雑踏までが独特の雰囲気をもっています。ロケハンの時に、4K RAWで撮影することでこうした空気感まで伝えられるような映像にしたいと思いました。
しかし、ロケハンを含めて約2週間というスケジュール、自然光だけでの撮影といった条件下では、必要なカットを撮り回ることに精力を注ぐ必要があり、チェックする余裕はありませんでした。
4K RAW撮影のメリットを実感したのは、撮影終了後にホテルで行うチェックの時で、その映像美は、想像を超えたものでした。肉眼では分からなかった柱の文様がペイントされたものではなく、透かし彫りであったことや、独特の街並みの風情、雑踏、特有の雰囲気を持つボスポラス海峡の波などが、そのままの雰囲気で映し出されている印象をもちました。
4Kで仕上げる予定なので、今回の撮影では過度なデジタルズームは使用せず、25ミリや15ミリの単焦点レンズを多用しました。撮影監督が自ら動いて調整する必要があり、負担もそれだけ大きくなります。インタビューのシーンではサブのHDカメラも用意していましたが、トーンが変わるので通訳が介在する時間をうまく使って1台で撮り回しています。雰囲気を損なうことなく、臨場感に富んだシーンにできたと思います。
高精細な4K映像でドキュメンタリーの撮影を行う際には、見え過ぎる点に留意する必要もあります。スタッフがガラス越しに映っているといったことも雰囲気を壊してしまいます。こうした点も、レンズの被写界深度やアングルをうまく使って解消でき、魅力的な映像となっています。映像を確認した北川さんにも、まるで映画のようだと大変好評でした。
世界遺産の街とも言えるイスタンブールには、歴史的な建造物や街並がたくさんあります。4K RAW 収録により、そうした貴重な風景が臨場感豊かに再現できたと評価されています。
今回の作品で4K撮影を行ってみて、ドキュメンタリーの分野でも極めて有効だと実感しました。4K RAWやXAVC 4Kを使ったドキュメンタリー番組が増えていくと思います。また、貴重な映像資産として保存、再利用していくという観点でもメリットの大きいフォーマットだと思います。
さらにPMW-F55には、ドキュメンタリー撮影に適した機能も数多く搭載されています。高感度と広いダイナミックレンジ、フレームイメージスキャン機能も便利です。暗い地下通路での撮影シーンでの暗部の階調表現の豊かさを実感できました。また、ローリングシャッター歪みやフラッシュバンドのないクリーンな映像表現は、パンシーンやボスポラス海峡の波や、多くの観光客がフラッシュを焚いている歴史遺産の撮影などに威力を発揮してくれたと思っています。CMOSセンサー特有の歪みなどを忙しい撮影時に意識する必要がない点は大きなメリットです。
4K RAW撮影した成果をフルに生かして、より魅力的なハイビジョン放送番組、そして4Kコンテンツに仕上げていきたいと考えています。ソニーには、こうしたドキュメンタリー撮影でも4Kをより柔軟に、効率的に運用できるソリューションや、製品、周辺機器を提供していただけるように期待しています。
ロケハンを含めて約2週間という限られたスケジュールの中で、ステディカム、三脚、EFPスタイルと状況に合わせたスタイルで撮影を進めていきました。
米澤伸子様
株式会社Air Media所属のプロデューサー、ディレクター、放送作家として各種映像コンテンツの企画から制作までを担当。女優さんをパーソナリティーにしたドキュメンタリー番組も多数制作。
伊藤 格様
テクニカルプロデューサー。CM、PV、Web映像制作でRAW 収録のデジタルシネマカメラに限定した映像制作でプリプロからポストプロに至る一貫したアプローチを提供。
古波津 陽様
グラフィックデザイナーを経て、長編映画「築城せよ!」で映画監督デビュー。ほかに映画「JUDGE」の脚本・監督、テレビドラマの演出などでも手腕を発揮しています。
須藤耕太様
ドキュメンタリー番組のほか、音楽、ファッション、コンサート、ライブパフォーマンス、イベントなどの撮影で活躍。撮り回しを含めた機動性、柔軟性に富んだ撮影は、今回の作品でも発揮されています。