株式会社 セップ 様/株式会社 館岡事務所 Creator's room 様
さらに進化したCineAlta 4KカメラPMW-F55とソフトウェアRAW Viewerを活用して高品質・作品性に富んだプロモーションビデオ(PV)/ミュージックビデオ(MV)を制作
4人組ロックバンド[Alexandros]が2013年12月にリリースした「Run Away」では、ナイキ社のリストバンド型ウェアラブルデバイス「NIKE+ FUELBAND SE」をフィーチャーしたPVを制作。
その楽曲を演奏するシーンにはCineAlta 4KカメラPMW-F55が使用されました。また、両A面カップリング曲の「Oblivion (feat. LITHIUM HOMME)」のMVの全編をPMW-F55で撮影しました。
制作に当たった株式会社 セップ プロデューサー 植木康弘様、ディレクター 瀬里義治様、撮影を担当された株式会社 館岡事務所 Creator's room 田嶌誠様に、PMW-F55を使った成果や評価、そしてPV/MV制作における可能性を伺いました。
※[Champagne]は2014年3月28日よりアーティスト名を[Alexandros](ヨミ:アレキサンドロス)に改名致しました。
RX-RECORDS所属のロックバンド[Alexandros]の8枚目のシングルとして、2013年12月25日にリリースされたCDシングル。
「Run Away」と「Oblivion (feat.LITHIUM HOMME)」の両A面曲のほかに、「Rise」、「Paint Your Socks Into Pink」が収録されている。
[Alexandros](アレキサンドロス)は、川上洋平(ボーカル・ギター・作詞作曲)、磯部寛之(ベース・コーラス)、白井眞輝(ギター)、庄村聡泰(ドラム)の4人組ロックバンドで2010年「Where's My Potato?」(RX-RECORDS)でCDデビューした。
今回の「Run Away」のPVは、ナイキ社のリストバンド型活動量計「NIKE+ FUELBAND SE」をフィーチャーしたPV企画でした。
「NIKE+ FUEL BAND SE」は、年齢・性別・体重に関係なく生活で起こりうる全ての運動をナイキが独自に設定した活動単位「NIKE FUEL」で計測できるリストバンド型ウェアラブルデバイスです。この楽曲のPVでは手首にFUELBANDを装着したメンバーの演奏シーンと若者のアクロバティックなパフォーマンスで構成され、"日常をよりアクティブに"というメッセージを込めた疾走感のあるPVにしたいと考えました。
具体的には、実際にリストバンドを装着したメンバーの演奏に合わせて、45名のパフォーマー、エキストラが街中を走り、あるいは空転などのパフォーマンスを繰り広げるという内容・構成にしました。女性が一人佇むシーンから、演奏に合わせて少しずつ運動量が増え、やがてより激しい運動で身体の熱量を高め、活動量計の数値を高め蓄積していく様子を表現しました。楽曲のイメージと商品のコンセプトに共通する躍動感をダイナミックに表現することで、それぞれの魅力や特長をうまく訴求できたのではないかと思います。
このうち、バンドの演奏部分の撮影に、CineAlta 4KカメラPMW-F55とRAWレコーダーAXS-R5を使用しました。PMW-F55については、発表の時から4K/2K/HDのクオリティーの高い映像が撮れるカメラとして注目していました。さらに、2013年末のバージョンアップで一層の進化を遂げています。2K/HDで最大240コマのハイフレームレート記録など、私たちの理想とする機能強化が図られていましたので、今回のPVの主役であるメンバーの演奏部分の収録に活用してみることにしました。よりクオリティーの高い表現を目指すとともに、映像クリエイターとしてPMW-F55という新しい可能性にチャレンジする目的もありました。
バンド演奏の撮影は、スタジオでおよそ半日をかけて行いました。24PでAXS-R5を使った4K RAW収録をしています。レンズには、構図や画づくりの観点からClairmontの蛇腹型シフトレンズを採用し、基本的にハンディーで撮影を行い、必要に応じてイージーリグなどを使用しました。PMW-F55本体は重さやホールド感を含め、使い勝手も申し分なく、メニューも一度覚えてしまえば、複雑な操作は必要ありませんでした。Wi-Fi対応なので、アシスタントにRECやシャッタースピードの調整をタブレットでコントロールしてもらうこともできましたので、効率的に撮影を行うことができました。
PMW-F55の最大の魅力は、やはりスーパー35mm相当COMSイメージセンサーによる高解像度、高い色再現性、そしてS-Log2によるトータル14stopの広いラチチュードにあります。これらの性能は、今回撮影した映像にもそのまま反映されていました。非常に透明感のあるクリアな映像で、暗部の階調や色の再現性を含めて情報量の豊富さを実感することができました。実際、後処理でメンバーの男臭さやカッコ良さを表現するために、かなり複雑なカラーコレクションを行い、あえてノイズを加えたカットもあります。また、別のカメラで撮影されたパフォーマンス部分の映像とカラーバランスの調整を行っていますが、かなりのレベルまで追い込んでも画自体が破綻するといったことが全くありませんでした。PMW-F55によるRAW収録素材のパフォーマンスの高さを実証するものだと思います。
PMW-F55のもう一つの大きな魅力が、標準ISO感度が 1250という高感度な所です。
とにかく画が明るいと、メンバーやクライアント、スタッフが集まった撮影現場でも話題になりました。今回使用したPLレンズは、最も明るいところでもF値が2.8ぐらいでしたが、この高感度と内蔵NDフィルターをうまく組み合わせて使うことで、暗いシーンなど、どんなシチュエーションでもストレスを感じることなく撮影に集中できます。また、レンズの選択肢もそれだけ広げることができますので、開放でボケ味を生かしたいとか、演出意図をより表現しやすくなる点も大きなメリットだと思いました。
機能面では、最大240コマのハイフレームレート機能は大いに威力を発揮します。アップグレードで、コマ数固定でなく、バリアブルにコマ数を選べるようになった点も魅力です。今回の「Run Away」では使用していませんが、「Oblivion (feat. LITHIUM HOMME)」のMVで有効に活用しています。画角が変化することがない、非常に高品質の画で、自然で滑らかなスローモーション映像を撮ることができます。また、ローリングシャッター歪みやフラッシュバンドのない映像が撮れるフレームイメージスキャン機能も便利で、ストロボを使った演出や、ドラムのスティックなど激しい動きでも歪みのない、きれいな映像を撮ることができました。
今回の収録は、RAWレコーダーAXS-R5を使用していますが、本体のメモリーカードでも同時に収録を行っています。このパラレルREC機能もマルチフォーマット対応と合わせることで、用途・目的に合わせたバックアップ収録に有効に活用できると思います。本体で、CM撮影でスタンダードになったHDCAM-SRと同じフォーマットで収録できる点も大きな魅力です。これれらの機能は安心感だけでなく、CM、WebとBlu-ray/DVDといったパッケージメディアなど、1回の撮影素材をマルチユースで使用するケースなどに威力を発揮するかもしれません。
そして、PMW-F55の最大の特長は4Kカメラである点です。現状では、オフライン編集の部分やアウトプットなど環境が整っていない部分もあり、PV/MV制作でも4K完パケの普及には至っていません。ただ、4K映像からのHD切り出し運用など、徐々に4K活用の機運が高まりつつあり、検証・検討を始めていく必要はあると考えています。PMW-F55は、一般的なRAW収録だけでなく、XAVC 4Kというビデオライクなワークフローにも対応しており、4K制作の可能性を広げてくれるツールとして注目しています。
PV/MV制作では、クオリティーやコストに加えて、ワークフローの安定性・信頼性、効率性が要求されます。何故なら撮影から納品まで、短納期であることが多く、納期が守れないという事は絶対に避けなければならないからです。そのため、カメラの選定でも使い慣れたもので、仕上げまでの工程を把握しやすいフォーマットを選択することになりがちです。
PMW-F55は、その高性能・高機能、使い勝手の良さが評価された結果だと思いますが、音楽ライブの収録でよく使われており、評価も高いと聞きます。今回の作品制作でPMW-F55を使ってみて、その評価・実績は、そのままPV/MV制作でも通用するものだと確信しました。
実際、「Run Away」では撮影からオフライン編集、フィニッシングまでを、ほぼ1週間で終えることができました。ソニー製のフリーソフトウェアである「RAW Viewer」を使って、F55RAWからProResに現像出力したのですが、数時間で終えることができたのは衝撃的でした。これまでに行ってきたRAW現像と比較して、想像以上の速さだと感じました。また、RAW ViewerがバージョンアップでProRes出力に対応したので、パフォーマー部分の映像を加えたオフライン編集、仕上げもスムースに行うことができました。
また、PMW-F55の色域やラチチュードの広さといったクオリティーの高さも、ワークフローの一層の効率化にも貢献するではないかと思います。PV/MVでは初見、パッと見た時の印象が極めて重要で、それがアーティストや楽曲のイメージを決めてしまうケースが少なくありません。そのため、撮影時に画づくりや色といった表現を可能な限り固めた方が完成度を高めることになります。この現場での追い込み作業にも、PMW-F55のポテンシャルの高さが威力を発揮しそうです。「RAW Viewer」の機能としてサポートされているトラッカーボールによるASC-CDL調整やユーザーガンマへの対応なども、この色や画づくりといった追い込み作業には非常に便利であり、これが結果的にトータルのワークフローの一層の効率化や、作品性の向上にも大きく寄与してくれると期待できます。