「仮面ライダー大戦」製作委員会 様
人気エンタテインメントムービーの撮影にCineAlta 4KカメラPMW-F55を採用見せ場のVFXシーンに4K映像やスロー&クイックモーション機能をフル活用
俳優・藤岡弘、さんが仮面ライダー1号役で約38年ぶりにスクリーンで復活することでも大きな話題を集めた東映映画の人気シリーズ「仮面ライダー」劇場版最新作「平成ライダー対昭和ライダー大戦feat.スーパー戦隊」の撮影に、CineAlta 4KカメラPMW-F55が使用されました。
この作品の製作に参画された株式会社東映テレビ・プロダクション 業務部 部長 八木明広様、映画監督 柴﨑貴行様、撮影監督 いのくままさお様、撮影助手・VEの株式会社アップサイド 撮影部 植竹篤史様、ビデオエンジニア 石川友一様、照明技師の株式会社共立ライティング 照明制作部 斗沢秀様に、作品の内容や見どころ、PMW-F55を使った撮影シーンや、性能・機能・使い勝手についての評価、今後の映画撮影での可能性などを伺いました。
人気の「仮面ライダー」シリーズ劇場版の最新作として2014年3月29日、全国東映系で公開。仮面ライダー1号・本郷猛役で藤岡弘、が約38年ぶりに出演した作品としても話題を集めるなど、平成ライダーと昭和ライダー、計30人のライダーによる掟破りのライダー対決、さらにスーパー戦隊も加わる、まさに豪華オールスター作品となっている。派手なアクションシーンはもちろん、各世代のライダーが登場することで子供たちはもちろん、幅広い年代のファンにも楽しめる作品に仕上げられている。
監督:柴﨑貴行、脚本:米村正二、撮影監督:いのくままさお
製作:「仮面ライダー大戦」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映AG・東映ビデオ・東映
「平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦feat.スーパー戦隊」
歴代平成ライダーと昭和ライダーの雄姿が存分に楽しめる作品。爆発シーンなど、激しいアクションシーンが見所どころ。
「仮面ライダー」シリーズは、テレビ・映画を含めて、何より観てくれる子供達に楽しんでもらえることをコンセプトにしています。今回の作品でもそれは一貫していますが、平成ライダー15人、昭和ライダー15人、計30人のライダーが登場することで、どの世代の方々にも楽しんでもらえる作品になっていると思います。仮面ライダー1号の本郷猛をはじめとした、それぞれの時代のライダーの変わらぬ勇姿と、同時に成長した変化も合わせて楽しんでもらえるように構成・演出に配慮しました。
見どころの一つとなっているのは、やはり変身、対決、爆発といったVFXによるアクションシーンです。今回は、平成ライダーと昭和ライダーの対決シーン、さらにスーパー戦隊も加わるなど、これまでにないアクションシーンが満載となっています。さらに、最新の機材やテクノロジーを活用することで、より洗練された映像に仕上げることを目標としました。もちろん、一人の子供にフィーチャーした形での家族愛など、ヒューマンドラマとしての要素も盛り込んだエンタテインメント作品に仕上げたつもりです。
撮影には、CineAlta 4KカメラPMW-F55を採用しました。以前より4K撮影ができる最新鋭カメラとして注目しており、機会があればぜひ使ってみたいと考えていたのですが、さすがに当初の予定では納期を守るうえでも従来作品で使用してきたカメラをメインに、F55はサブカメラの位置付として運用する予定でした。
ところが、実際に運用を開始していった結果、ほぼ全編をPMW-F55で撮影することになりました。理由として、画のクオリティーを含めた性能・機能の高さは勿論なのですが、F55の場合はこれに軽量・コンパクトさ、つまり機動力を兼ね備えている。これが一番のポイントでした。
アクションシーンでは、様々な状況での撮影できるようなフットワークが求められる。本体が、コンパクトかつ軽量であることが、特殊な撮影でも威力を発揮。
今回の作品のような、いわゆる特撮映画では、合成などのVFXシーンを数多く撮る必要もあって必然的にカット数が多くなります。今回もクランクインからクランクアップまで実働41日の撮影で、2000カット以上を撮影しています。多い日には、1日65カットも撮影した日もありました。これだけのカット数を撮影するためには、カメラに機動性が求められます。サイズや重さを含めて使いやすく、撮影ポジションを次々に変えながら撮影に入れる使い勝手の良さ、信頼性・安定性の高さが求められます。PMW-F55は、こうした点で従来のカメラより優れていました。
PMW-F55の機動性の高さは、撮影スタイルにも柔軟に対応してくれます。見せ場となるライダー対決などのアクションシーンでは、一緒に走り回って撮影するケースも少なくありません。また、今回の作品ではありませんが、撮影監督自ら宙吊りになって撮ったこともあります。コンパクトで軽いPMW-F55は、こうした特殊な撮影でも威力を発揮してくれました。同時に、キャメラマンをはじめとしたスタッフの負担軽減にもつながり、数多い撮影、長期間の撮影にも向いていると実感することができました。
PMW-F55の特長の一つに、様々なマウントのレンズを使用出来る点があります。F55は元々FZマウントで、PLマウントアダプターを付けて多様なシネレンズを使用出来る事は勿論、FZ-B4レンズアダプターの使用により豊富な放送用ENGレンズが使用できる点も大きなメリットです。今回はソニー純正のレンズマウントアダプター『LA-FZB2』を使用する事で、従来の撮影でも活用していたB4マウントのズームレンズなどを構図や目的に応じたレンズを手軽に使用することができ、演出意図の反映や効率的な撮影に大きく貢献したと思っています。
FZ-B4レンズアダプター「LA-FZB2」の使用により豊富な放送用ENGレンズも使用できる点が高評価。
今回、結果的にほぼ全編をPMW-F55で撮影することになった背景には、もちろんクオリティーの高さ、機能性、ワークフローを評価したこともあります。その一つが、XAVCフォーマットです。従来、4KといえばRAWによる収録が一般的ですが、F55ではXAVCを収録フォーマットとして選択する事で、ビデオライクに4Kの収録を行う事も可能です。基本的に本作はフルHD 1080/24pで収録していますが、VFXシーンなどでは4K収録も数多く行っています。爆発など、仕掛けや複雑な合成を必要とするシーン撮影は、一発勝負で失敗が許されません。また、カメラの見きれがあっては台無しとなりかねません。そこで、4Kで画角を広く撮影し、ポストプロダクションでHDリサイズすることで、解像度を落とさず、最適な画角を切り出して迫力の爆発シーンに仕上げることができます。これも、4KのHD制作への有効な活用方法の一つです。
最大240コマ/秒のハイフレームレート記録によるスロー&クイックモーション機能もPMW-F55の魅力です。最大10倍速のスローモーション映像に注目が集まりがちですが、今回の作品で有効活用したのは、クイックモーション撮影でした。仮面ライダーの魅力の一つは、人間離れした身体能力を現す、特殊な動き方などにあります。こうしたシーンの撮影で、クイックモーション撮影が威力を発揮しました。撮像フレームレートを、たとえば22コマとすることで、仮面ライダー特有の素早い動き、移動などを表現できます。しかも、撮影現場でコマ数をバリアブルにしながら、動きや表現を確認しながら撮影に臨める点も魅力です。
Custom Modeでハイパーガンマを活用し、ホワイトバランスを修正しながら撮影。
シネマオペレーションにも、ビデオオペレーションにもワークフローに応じて対応できる点はF55の特長とも言える。
F55の、基準感度ISO1250という高感度と、トータル14stopという広いラチチュードという特長も有効に活用できると思います。S-Log2も魅力的ですが、今回は、ポスト処理でのグレーディングにあまり大きな時間を割けない部分もあったため、撮影時にホワイトバランスを細かく設定できるCustom Modeを選択し、ハイパーガンマの中から理想的なガンマカーブを選択しました。それでもISO1000の高感度と12stopの広いラチチュードを確保しており、十二分に余裕を持った映像表現が可能でした。撮影現場でモニターを見たスタッフも、色域の広さ、輪郭のキレの良さ、暗部の階調などで従来のカメラを凌いでいると評価していましたし、グレーディングや合成などのポストプロダクション工程でも有効に活用できると思いました。
XAVCは、ワークフローの観点でも利便性の高いフォーマットでした。サポートメーカーが揃い、使い慣れたノンリニア編集ソフトウェア上でネイティブに開くことができ、更にデータサイズも効率的に扱えるものなので、クラウドコンピューティングによるデータマネジメントで合成や編集においても効率的なワークフローを構築することができました。結果、公開に合わせて余裕を持って仕上げ作業を進めることができました。
今回の作品では、4K for HDという観点で、PMW-F55のXAVC 4K撮影を有効に活用できたと思います。同時に、こうした使い方は今後も「仮面ライダー」シリーズや「戦隊シリーズ」などの特撮映画の撮影に幅広く使えるのではないかと感じました。フル4K制作は、コストやポストプロダクションを含めた環境の制約もあり、もう少し時間を必要とするとは思いますが、今回の撮影などを通して経験とノウハウを積み上げて、来る時代にも即応できる体制は少しずつ整えていきたいと考えています。
今回の撮影ではレンズアダプターや放送用レンズを使っていることもあり、果たしてどこまでこのカメラが持つ4Kの魅力を発揮できたのか不明のところはありますが、見た画の色域や解像度、あるいは迫力といったものにその可能性の一端は実感することができました。特に意識はしていませんでしたが、激しいカメラワークの中でもローリングシャッター歪みや、フラッシュバンドといった画の乱れもありませんでした。フレームイメージスキャン機能が有効に働いていたのだと思っています。
また、ハンドリングなどのしやすさや高感度に加え、有機ELパネルにより外光の強い場所での見やすさ、バッテリーの持ちの良さといった点もロケーションの多いコンテンツの撮影で威力を発揮します。もちろん、現場感覚から言いますと、ケーブル接続をもっと簡単にして欲しいとか細かな要望はいくつかありますが、それらを考慮しても撮影しやすい4Kカメラです。
ぜひ、多くの観客の皆さんに、作品のおもしろさとともに、迫力と臨場感に富んだ映像美も併せて楽しんでいただけたらと思っています。
株式会社東映テレビ・プロダクション 業務部 部長 八木明広 様
やぎ・あきひろ●株式会社東映テレビ・プロダクション 業務部 部長。日本を代表する映画製作・配給会社、東映グループの一翼を担い、主にテレビ製作事業を担当する部門でコンテンツ制作の進行・管理を管轄している。特に、今回の作品を含め「仮面ライダー」シリーズ、「戦隊」シリーズはテレビ、映画、ネットムービー、メディア用と年間100本超を製作するドル箱コンテンツの一つとなっている。
映画監督 柴﨑貴行 様
しばさき・たかゆき●映画監督。1978年生まれ。専門学校在学中から撮影現場に演出部として参加。卒業後、「仮面ライダー クウガ」から助監督として本格的に参画し、以後数多くの「仮面ライダー」シリーズで助監督、監督を務める。「仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダーTHE MOVIE 超・電王トリロジー」(2010年)で映画監督デビュー。「劇場版 仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル」(2011年)に続き、今回の作品が劇場版の監督作品5本目となる。子供たちを楽しませる、キレのある演出で定評がある。
撮影監督 いのくままさお 様
いのくま・まさお●撮影監督。1939年生まれ。テレビ番組の「特別機動捜査隊」で映像の世界に入り、「花と蝶」(1969年)でキャメラマンとして独立。「人造人間キカイダー」(1972年)以後、主に東映の特撮番組を多く撮影している。「スーパー戦隊シリーズ」に加え、「仮面ライダー」シリーズも数多く手がけ、「仮面ライダークウガ」から「仮面ライダーウィザード」までの平成仮面ライダーシリーズのすべてで撮影監督を務める。特に、特撮シーンでのカメラポジションや構図決めの速さ、演出意図を反映した画づくりで高い評価を得ている。
撮影キャメラマン 植竹篤史 様
うえたけ・あつし●撮影キャメラマン。2006年に設立された、テレビ番組を主体に幅広い映像コンテンツのプロフェッショナル集団である株式会社アップサイド 撮影部に所属。今回の作品では撮影助手として参画しており、2000カットに及ぶ撮影・収録をサポートしている。
ビデオエンジニア 石川友一 様
いしかわ・ゆういち●ビデオエンジニア。株式会社アップサイド所属。今回の作品を含め、多くの「仮面ライダー」シリーズ制作でビデオエンジニアを務めている。このシリーズのコンセプトの一つとなっているシネマライクな画づくりにおいても、長年の経験とノウハウをフルに発揮している。
照明技師 斗沢 秀 様
とざわ・しげる●照明技師。株式会社共立ライティング LDルーム所属。数多くの映像コンテンツ制作で活躍。「仮面ライダー」の映画製作でも「劇場版 仮面ライダー龍騎EPISODE FINAL」(2002年)から今回の作品まで、20作品超で照明技師を務めている。