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Netflixオリジナルドラマ「野武士のグルメ」2017年8月掲載

Netflix株式会社 様/株式会社共同テレビジョン 様/株式会社IMAGICA 様

PMW-F55による高品質な4K HDR制作。
初めてのHDR制作でも、想定通りの仕上がりを達成。
16bit RAW収録による表現のゆとりも大きく実感。

「野武士のグルメ」

久住昌之のグルメエッセイ「野武士のグルメ」を
原作にした漫画版「野武士のグルメ」が実写化。

出演(順不同):

  • 竹中直人    /  香住武
  • 玉山鉄二    /  野武士
  • 鈴木保奈美 /  香住静子

配信開始日時:2017年3月17日(金)(日本時間)

監督:藤井道人/宝来忠昭/星護

原作:久住昌之/土山しげる
   「漫画版 野武士のグルメ」(幻冬舎刊)

脚本:田口佳宏/和田清人

美術:フジアール

音楽:ザ・スクリーントーンズ

制作プロダクション:共同テレビジョン

製作:Netflix

コピーライト:Netflix

Netflix株式会社様は、4K/HDRを含めた最高品質のサービスを提供するため、ワールドワイドで自社製作コンテンツの拡充を進められています。今回、日本発のNetflixオリジナル4K/HDR作品として2作品目となる「野武士のグルメ」においてはCineAlta 4KカメラPMW-F55の16bit RAWデータ収録による4K/HDR制作を行われました。同社 メディアエンジニアリング&パートナーシップ エンジニア 宮川 遙様ならびに、制作を担当された、株式会社共同テレビジョン 制作センター第3制作部 プロデューサー 菊池武博様、同社 技術センター 映像制作部フィールドエンジニア 赤松比呂志様、ポストプロダクションを担当された株式会社IMAGICA 映像事業本部 プロデュース部第1プロデュースグループ チーフテクニカルディレクター 石田記理様に、PMW-F55ならびに16bit RAW撮影の選定の経緯、HDR制作におけるワークフローの概要や現場におけるシステムの運用、制作を経てのご感想などを伺いました。

なお、記事は4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

  • 宮川 遙様
    宮川 遙様
  • 菊池武博様
    菊池武博様
  • 赤松比呂志様
    赤松比呂志様
  • 石田記理様
    石田記理様

4KやHDRの視聴環境普及に合わせてコンテンツ充実を加速

すでに市場では4Kテレビや4Kモニター搭載PC、4K HDR対応の家庭用テレビなどの製品が出揃い、視聴環境の普及が進んできており、4KやHDRのコンテンツのニーズも急速に高まってきています。

その中で、Netflixでは、最高の映像体験をご提供するために、自社製作のオリジナル作品における、4KやHDR作品の制作に積極的に取り組んでいます。4Kで視聴できる環境をお持ちのお客様に、視聴環境を生かした均一で質の高い作品をお楽しみいただけるよう、推奨機材やワークフローも含めた制作ガイドラインも作成し、標準的なワークフローや納品規定を映像制作会社に提示したうえで、4KやHDRの作品制作を一層加速させています。

すでにHDR作品としては世界各国で18タイトルを配信してまいりましたが、今回の「野武士のグルメ」は日本国内で制作したHDR対応作品の第2弾となります。作品の配信は3月17日から開始しており、すでに世界190カ国でお楽しみいただいています。本作品制作のメインカメラとしては、Netflix制作ガイドライン推奨機材の中から、ソニーのPMW-F55を使用しています。

PMW-F55で16bit RAW撮影、RAWデータからダイレクトコンフォーム

今回のワークフローを簡単に説明しますと、メインの収録フォーマットとしてPMW-F55とRAWレコーダーAXS-R5によるF55RAW(16bit シーンリニア)を採用しており、オフラインデータはRAWからQuickTimeを生成しました。メインフォーマットでF55RAWを採用した理由としては、将来のリマスタリングや加工を見据えているからです。現在は技術的にできない事も、5年後はワークフローやツールの改善により実現できるようになっている可能性があり、それに備えて撮影素材も最高の画質で残しておく事は重要と考えています。Netflixのオリジナルコンテンツの制作では、完パケ以外に、マスター素材も含めてアーカイブしておくという要件を順守しています。

Adobe Premiere Pro を用いてオフライン編集を終えたら、XMLでEDLを出力し、Blackmagic Design のDaVinci Resolveでコンフォーム後、30型4K有機ELマスターモニターBVMX300を用いてグレーディングを行いました。グレーディング環境としては、納品規定に即してカラースペースはDCI P3、EOTFはSMPTE ST.2084に設定し、毎回の作業は、同じモニター、同じ部屋、同じ照度を維持して行いました。

仕上がった作品については、Dolby Vision対応のメタデータを付加したHDR IMFパッケージで、Netflixが提供するポータルサイト経由でアップロード納品という形を取っています。Dolby Visionに対応できる会社は国内に2社あり、IMAGICAはそのうちの1社です。

ガイドラインの推奨機種から、フットワークとクオリティーに優れるF55を選定

制作を担当した共同テレビジョン社内では、Netflixのガイドラインで定められているカメラのうち2機種を保有しており、そのひとつがPMW-F55でした。また、ガイドラインにおいて、記録方式として16bit RAWが要求されていますが、PMW-F55はRAWレコーダーをドッキングして一体化運用が可能な事から、フットワークの面で非常に優位なので、第一選択肢としてPMW-F55を考えました。特にテスト撮影をしてみて、使い勝手の良さを強く実感し、画質面も含めてPMW-F55だと思いました。今回の監督や撮影スタッフは全員HDRが初体験で、さらに撮影現場にはHDRモニターは持っていけませんでしたが、事前にカラーグレーディングまで含めたテストを行い、撮影素材と、そこからの仕上がりを学んでから制作に入ったことで、イメージしていた表現で仕上げることができました。

PMW-F55による撮影風景。RAWレコーダーはカメラ本体とドッキングで一体化、こちらで16bit RAWを記録。

HDRには16bitデータが威力を発揮すると実感、SDRでもbitの多さはわかる

結論から言って、HDRを前提とした場合、やはり16bitは高い優位性を持っていると思いました。数多くシーンを撮影していくなかで、もちろん10bitでカバーできる場面もあるかも知れませんが、16bit RAWだからこそできた表現がありました。特に今回は料理をテーマにしたドラマです。食べ物のシズル感などの再現では、この16bitが大きく役に立ちました。16bitならではの色数、階調が、微妙な色の差をグレーディングにて素直に出すことができるので黒の伸びなども良く、グレーダーも「ゆとりがあった」と感想を述べていました。また、これはSDRにコンバートしても実感できました。4Kの映像をHDにダウンコンバートしても美しさがわかるように、ビット数が多い映像はSDRでもその美しさを実感できました。

もちろん、4Kで16bitというのは、まだデータサイズなどの観点からストレスなく扱えるデータとは言えないですが、PMW-F55による撮影では、RAWからダイレクトにその後のプロセスに進めるので、VFXやCGなどにおいて、DPXなどのフォーマットで16bitを扱うことに比べればだいぶ楽でした。

16bitを記録できる新たなフォーマットとしてX-OCNというものが出てきておりますが、こちらも今後テストをする中で、活用できる可能性が見えてくるのではと期待しています。

今後も4Kを基本に、HDR制作も積極的に

もちろん、作品性とも関係しますので、全てというわけではないですが、Netflixでは今後、HDR制作をもっと加速していきたいと考えています。また、解像度については基本的に4Kで制作していきたいと考えています。HDでご覧になるお客様にとっても、4Kで制作された映像は違いがわかりますから4Kで制作することは4Kでご覧にならない方にとっても価値のあることです。

今回、PMW-F55を現場で運用してみて実感したのは、16bit RAWでこそ発揮される高いポテンシャルでした。カメラ性能の点では、高感度である事は非常に有用である一方で、シーンによっては感度を落としたいような場面もあり、内蔵NDの枚数がもう1枚あればなど、性能の高さゆえに感じることもありました。フィルターワークは撮影現場のスピード感に影響が出てきますので、例えばXDCAMメモリーカムコーダーPXW-FS5やFS7 IIに搭載されている、電子式可変NDフィルターがPMW-F55に搭載されても良いかも知れません。

今後PMW-F55も、さらに磨きをかけ、そういった細かな部分のニーズに応えるようなバージョンアップを実現してもらえれば、と思います。また、収録素材のバックアップソリューションなど、新たな現場における課題に対応してくれる周辺製品なども期待しています。

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