社会福祉法人函館厚生院 函館中央病院 様
北海道函館市の市街地に位置する函館中央病院は、昭和5年に設立され、90年以上の歴史を持つ病院です。一般病床527床/透析ベッド7床/手術室11室を備え、26の診療科を展開、函館市と近郊の基幹病院として急性期医療に取り組んでいます。また、小児・周産期医療や救急医療に力を入れ、北海道がん診療連携指定病院として高度ながん医療の提供も行なっています。
2024年2月にX線TV室の装置やシステムの入れ替えを行い、その一環として、ソニーの医療用55型4K液晶モニター『LMD-XH550MD』を導入しました。それまで複数使用していた小型モニターを大画面モニター1台に集約して、業務やスペースの効率化と高画質化を実現しました。今回は、導入検討を進め、日々の運用を担当している診療放射線技師のお二人にお話を伺いました。
当院のX線TV室では、通常のX線検査に加え、内視鏡を併用した検査も行っています。特に、胆管や膵管を造影するERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)検査や治療を数多く実施しています。また、救急対応では肝破裂、肝損傷、腸閉塞などの緊急検査にも対応できるようにしています。
被検者や検査に関わる従事者の被ばく防護の重要性を強く認識しており、放射線の安全管理に注力して低被ばく化を進めています。今回のX線TV室の刷新では被ばく線量の低減をしながら、高画質なX線TV装置の導入検討にあたり、高画質かつ業務効率・利便性の向上が期待できる大画面モニターを導入したいと考えました。
これまでは、同じサイズの小型モニター4台にそれぞれモダリティ画像を出力して、1つの台車に並べて使用してきましたが、見たい画像を拡大したり、モニターのレイアウト位置を変更したりすることはできませんでした。
また、ERCPではガイドワイヤーが見えづらいという医師からの指摘もたびたびありました。
検査の準備のために台車を移動させるのは技師の仕事で、4台分の電源や配線ケーブルが複雑に絡み合い、束になった太いケーブルを持ち上げながらモニターを移動させなければなりませんでした。限られたX線TV室のスペースで、4つの小型モニターを周囲の機器にぶつけないように慎重に移動させるこの作業は非常に煩わしく、ストレスを感じていました。
今回のX線TV室の装置やシステムの刷新にあたり、このようなモニターの課題を解決して、高画質かつ効率的に業務ができる環境を実現したいと考えました。複数の小型モニターを1台の大画面モニターに集約することを検討していましたが、予算が増えるのではないかという懸念もありました。
そこで、大画面モニターを実際に活用している現場を見てみようということになり、低被ばく化の意識が高く、効率的な運用を実現している道内の病院を見学させてもらう機会を得ました。
見学者である私たちは検査室内には入室できなかったのですが、操作室からでも大画面モニターはとても見やすく、鮮明に映し出された映像にこれまでにはない衝撃を受けました。施設見学をしたのは2023年9月上旬でしたが、そこで、大画面モニター導入の意向を固め、選定を進めて、2024年3月に稼働開始しました。
大画面モニターを導入したことで、実際にそれを目にした医師からは「画面が大きく見やすくなり、画質が良くなった」と評価する声がたくさん上がりました。
透視画像では、これまでの白黒画像に比べ、白から黒へのグラデーションが豊かに表示されるようになり画像の視認性があがりました。モニターのシステム設定を変更して見やすいコントラストにすることで、暗い箇所の黒は締まって見えるように、明るい箇所は白飛びせずにより明るくなりました。旧来のシステム環境では、検査室から一旦出て操作室のモニターを確認し直すこともたびたびありましたが、新しいシステムになってからは検査室で確認できるので、その出入りの行き来が少なくなりました。その分、検査も早く終わるので、被検者の負担を軽くすることにもつながっているのではないでしょうか。
内視鏡画像では色の再現性が高く、特に消化管で多く見られる肌色のような中間色の視認性が向上しました。目的の部位が鮮明に見えて、以前は黒くなって見えづらかった奥の内腔部分も明るく確認できるようになりました。ERCPの際にガイドワイヤーが見えづらいというクレームもなくなりました。内視鏡本体に付属している専用モニターよりも大画面モニターの方が綺麗に見えるようになり、他の検査室で実施している内視鏡検査もこのX線TV室で実施したいという要望があったほどです。
高画質化の要因は、ソニーが採用しているローカルディミング方式*と独自のリアルタイム技術との組み合わせによるものです。高輝度かつ自然な色表現の実現により、コントラストの高いX線透視画像と、正確な色再現が求められる内視鏡画像という異なる表示特性の画像を一台のモニターで同時に表示できるようになりました。モニター側で明るく鮮明に表示できるようになったことで、将来的には線量を抑えた、より低被ばくな検査・処置につながる可能性も期待されます。
* 暗い部分は黒を引き締め、明るい部分の輝度を高く持ち上げるバックライト制御技術
ローカルディミングOFF
ローカルディミングON
写真左上に比べて、ローカルディミングをONにした右下では、白黒のグラデーションやカラーの再現性が豊かになった
操作室からでもよく見える大画面モニター
4台の小型モニターを1台の大画面に集約したメリットとしては、医師がその時一番見たい画像を大きくして、すぐには必要ない画像は小さく表示させるなど、タッチパネルで瞬時に切り替えることができるようになったことです。以前は、同じサイズの小型モニターを並べているだけで位置が固定されていましたが、大画面モニターでは、表示方法をいくつもの分割パターンから選ぶことができるようになりました。
当院のX線TV室は広くはないので、「狭い部屋に大きなモニターは必要なのか?邪魔になるのではないか?」との懸念もありました。しかし、実際に導入してみるとその逆で、大画面モニターを天吊りにしたことで、それまでは意識もしていなかった頭上の空間を有効活用することができ、さらには台車を置いていた床のスペースを空けることができ、空いたスペースには超音波装置などを置けるようになりました。
また、天吊りになったことで台車から出ていた複雑に絡み合った電源コードや配線は意識することもなくなり、軽く手を添えるだけで大画面モニターをスムーズに動かすことができるようになり、私たち技師が煩わされていたモニター移動の取り回しが断然よくなりました。
写真左上は以前の台車、写真右下は天吊りになり移動が格段にやりやすくなった
導入研修で、理事長や院長をはじめ各科の責任者からも大画面モニターは高い評価を得られました。今後、院内の他の部屋にも増えていくと良いと思います。被ばくリスクを下げるために、X線の線量を抑えた上でどれだけ高画質にできるかが引き続き最重要なポイントです。それは画像を撮影するX線装置の性能が向上すると同時に、モニターの画質表現をさらに高めていくことでもあるので、ソニーにはそこに期待しています。また、当院には市内の病院から、指導のために医師に出向いてもらうことが多いので、画像や伝送技術が発展して高画質・低遅延な遠隔指導が実現すれば、広い北海道ではとても便利になりますね。
55型4K液晶モニター LMD-XH550MD
HDR信号に対応し、独自のローカルディミング(部分駆動)技術により高輝度・高コントラストを実現した医療用の55型4K液晶モニター
※本製品は日本においては医療機器ではありません。
※本ページ内の記事・画像は2024年7月に行った取材を元に作成しています