『俺の屍を越えてゆけ2』(『俺屍2』)は、ひとりの英雄の物語をなぞるのではなく、“一族”が世代交代と冒険を繰り返す中で悲願の達成を目指す、数多くあるゲームのなかでもとりわけ異彩を放つRPG(ロールプレイングゲーム)です。
主人公の一族は全員“呪い”によってわずかな期間しか生きられません。そのいっぽうで、冒険や子孫を残すこと、次世代の教育、街の振興と、短い人生の中で“やるべきこと”は多数あります。わずか数度の冒険で訪れる寿命を前に、あえて冒険を中断したり、育ちきっていない若手とともに強大な敵に戦いを挑んだりと、当主としての決断が迫られるさまざまなシチュエーションが発生。ひとつの決断が、その先の一族の運命を左右する、この独特な緊張感も『俺の屍を越えてゆけ2』の魅力のひとつです。
冒険を進めていくなかで、なぜ一族に呪いがかけられたのか、一族の敵の目的とは、復讐とは、といった物語が少しずつ明らかになっていきます。『俺の屍を越えてゆけ2』は、さまざまな謎が絡みあった重層的なストーリーと同時に、一筋縄ではいかない人生を繰り返して一族が発展していくさまを楽しむことができるのです。
プレイステーション向けに発売された前作『俺の屍を越えてゆけ』は、世代交代を繰り返して主人公一族の悲願を達成するという特徴的なゲームシステムが支持され、1999年の発売以来、今なお熱狂的なファンが多いゲームです。わずか2年ほどという限られた寿命を生き、自分の特長をもった子孫を残し育てる遺伝的要素を取り入れたシステムは、何度も遊べる奥深さがあります。
RPG「俺の屍を越えてゆけ」シリーズを手掛けてきたゲームデザイナー・桝田省治さん。数々のゲーム作品の誕生に立ち会ってきたほか、自身で小説の執筆も手掛ける桝田さんに、人の心を動かすアイデアの源、そしてゲームデザイナーという仕事についてお聞きしました。
長男が生まれたとき、一番喜んでいたのは当時まだ元気だった僕の祖母で、僕や僕の両親よりも泣いていました。僕にはこれが不思議でなりませんでした。
この涙の理由に対して僕がたてた仮説は、とくに功績を残すでもなく平凡な人生を送った人にとって、ひ孫は自分の人生を目に見える形で肯定できる存在だからではないか、でした。
次に僕自身が祖母の感涙を体験できる年齢を計算してみたところ、結論は99歳。軽く絶望したのを覚えています。
その後、現実には無理でもゲームの中ならば祖母の感激を疑似体験できるのではないかとぼんやりと考えていました。システムの大枠に目途が立つと同時に、世代交代をテーマにしたゲームには普遍的な需要があると確信したのも祖母の葬式だったと思います。
僕にとってひとつの企画が形になるのに10年以上かかることは、とくに珍しいことではありません。僕の要求を満たすまでハードの性能が上がる、あるいは価格が下がるのを20年以上待っている企画もあります。なので15年という期間に関しては、開発時期に生まれた次男がもう大学生だ、以上の感慨はありません。
僕の企画には「こういう楽しみかたもゲームでは成立するはずだ」という仮説に対する実験という側面が常にあります。そのため発売されれば結果がどうあれデータは残るので、大きなやり残しがない限りは続編に興味が持てません。
ですが、その原則を一度くらい曲げてもいいかなと思える反応が前作ではありました。ユーザーから「おもしろかった」ではなく「作ってくれてありがとう」とお礼が大量にかえってきたのは初めてだった気がします。
こんな嬉しいことを言ってくれる方たちのためなら、僕の余命の数年間を費やしても僕は後悔しないだろうと判断したのです。
こんな嬉しいことを言ってくれる方たちのためなら、僕の余命の数年間を費やしても僕は後悔しないだろうと判断したのです。
前作では「あなただけの唯一無二の一族史を創ることができる」をセールスポイントに掲げました。そのため、どの相手と子どもをもうけるか、どんな職業に就くか、何を目標にどこから攻略するか、いつ引退するかなど、人生における大きな選択をプレイヤーはゲーム中で何度も行ない、その結果をできるだけ残す設計にしました。
今作『俺屍2』では、このコンセプトをさらに強調するためにネットを介して「自分の一族を簡単にお披露目できる」「他のプレイヤーの一族と簡単に比較する」機能を搭載しました。
また前作では一族の顔は2Dデータを大量に用意していました。が、今作では3D化し、能力だけでなく顔や体型も両親に似る機能を追加したのも同じ趣旨です。
今作では「自分の一族を簡単にお披露目できる」「他のプレイヤーの一族と簡単に比較する」機能を新たに搭載しました。この機能を加えるきっかけになったのは、前作の発売後に無数にネット上にアップされたユーザーのブログやニコ動(ニコニコ動画)の実況プレイでした。それらは自分の一族の生き様を外に向かって発信する楽しみ、それを見る楽しみにあふれていました。
これは僕の予想を超えた反応でした。僕の仕事あるいは喜びは、ユーザーに今までに経験したことがない楽しさを提案することだと思っていましたが、ユーザーから逆に提案されているようでとても刺激的でした。
そこで、そういう楽しみかたをユーザーが志向するなら、最初からそれを支援する仕組みをゲーム内に組みこもうと考えました。そうすれば、もっと多くの方が自分の一族を披露する楽しみを体験できるはずです。
柱になる大きなコンセプトは、僕個人の思いつきです。誰にでも喜怒哀楽、心が動かされる瞬間はあります。僕の場合は、その事象について成立要因をしつこく洗い出し、同じ状況を再現可能か延々と試行し、最後に娯楽商品として需要があるかをなるべく冷静に検証する。だいたいそんな流れです。これは職業上の習慣だと思います。
ゲームを構成する部品の取捨選択については、僕が提示したコンセプトに沿って、要求されるおもしろさの性能を決め、それを実現するために僕を含めて大勢のスタッフが知恵を絞ることになります。
最低限の性能を保証するプランは、企画の段階で僕がいくつか用意します。しかし、多くの場合、僕のアイデアよりもユーザーにわかりやすく効果的で、かつ作るのに手間がかからず管理や調整も簡単な、お得なアイデアがスタッフから出ます。
開発現場においては、「俺屍」のスタッフたちは間違いなく僕より優秀です。
現在のコンシューマーゲームは、声優や演奏家、アニメーターまで含めれば数百人が制作にかかわります。開発期間も企画から完成まで数年を要することが珍しくありません。
このような巨大プロジェクトで最も重要なことは、この作品はどんな楽しさをユーザーに約束するかを開発スタッフ全員が共有すること。言い換えれば、プログラムコードが1行も書かれていない段階で、発売後にユーザーがどんな風に遊んでいるか楽しんでいるか、そのイメージを見てきたようにスタッフに伝えることが僕の使命です。
この伝達がうまくいったプロジェクトでは、スタッフのアイデアが必ず僕の予想を上回ります。それは何度経験してもおもしろく、興奮する瞬間です。
絶対に死守すべき要求性能と、捨ててもやむなしな諸機能。その線引きをスタッフが常に意識して時間やお金をやり繰りしている現場は程よい緊張感があり「強い」と思います。
どんな職業でも同じだと思いますが、ユーザーに満足してもらえることが最大の喜びです。中でも「元気が出た」「励まされた」といった感想は、僕のほうが元気をもらい次への励みにもなっています。
最近では、僕が過去に企画したゲームを遊んだことをきっかけに、ゲームだけでなくさまざまなアミューズメント業を仕事に選んだという方の話がちらほらと聞こえてきます。彼らがまだ誰も体験したことがない新しい楽しさを生みだしてくれたなら、それもまた僕はうれしいです。
My Sony Club会員には僕と同年代の男性も多いと聞きました。仕事が一番楽しくて同時に辛い時期でしょう。それに今この国の経済を支えているのは、間違いなくこの世代です。心からエールを送ります。
それでも、ときには仕事から離れて純粋に娯楽に浸りたいときもあるでしょう。そんなときは「俺の屍を越えてゆけ」というゲームを思い出してください。遊んでいる間は、嫌なことを忘れて没頭できるよう細心の注意を払って作りました。酒やギャンブルよりずっとコストパフォーマンスに優れていると保証します。
15年前(PS版)と3年前(PSP®版)に公開されたCM。前半のPS版と後半のPSP®版は、似た雰囲気のシーンの中に12年間の時間の流れを感じることができます。
思いの丈をこめた強い叫びに心が奪われます。ラストのふっきれたようなシーンはひとつの世代が終わっても物語が続いていくことを意識させられます。
撮影シーンの裏側はもちろん、15年を経てつながっているCMへの感想や、親の世代から託された思いを振り返る岸部さんたちの言葉も必見です。
※ 動画の放映期間は2014年10月10日(金)までとなります
15年前のPS版、3年前のPSP®版、そして今回のPS VitaのTVCMは、すべて同じ家族という設定で制作しています。
キャストも一緒なので、連続して見ると、途中でお孫さんが加わったり、会話の内容ひとつとっても時の流れを感じてもらえると思います。
命は尽きようとも、その意思や血は永遠であることや、人の愛が永遠に続いていくことなど、ゲームのTVCMで謳(うた)うには、やや大げさなテーマのような気もしますが、「俺の屍を越えてゆけ」の根底にあるテーマが人間賛歌でもあることから、このような企画となりました。
ちなみに、「学生」「社会人」「親」、ご自分の立場が変わったときに遊んでみると、このゲームから感じられるものも変化していくと思います。実際に「親の世代になって、あらためて遊んだら、受け取りかたがぜんぜん違った」というご意見もいただくように、長きにわたり愛されてきた普遍的なゲームなのです。
一連のTVCMは、この普遍的なテーマを表現しようとした結果であり、15年前から狙ってできたものではありません。それゆえの奇跡的なつながりが、結果として自然と話題になっていったのではないかと思います。
なお、岸部一徳さんのご出演されているTVCMだけではなく、もう1本別のTVCMも作っていますが、そちらは初代『俺の屍を越えてゆけ』のパッケージ写真に登場してくれた方を起用しています。小学生だった彼も、いまや大学生です。
当時の関係者たちが、いまだに「俺の屍を越えてゆけ」の最新作に力を貸してくれるのが本当に嬉しいことです。もちろんファンの皆さんも。15年前から熱い声援を送ってくださったからこそ、こうして最新作が登場したのだと思います。
初めての方も、興味をもってくれた方々はぜひ遊んでみてください。
これぞ大人が遊ぶゲームです。
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※ 「PlayStation」、「プレイステーション」、「PS3」、「PS Vita」は株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの登録商標です。「PS4」は同社の商標です
※ 本ページに掲載している情報は2014年7月17日現在の情報であり、予告なく変更される場合がございます