ビビッドな発色の液晶ディスプレイ、臨場感たっぷりのサウンド、約270gの世界最軽量(*1)の筺(きょう)体は防水・防塵(IPX5/8、IP6X)に対応。さらには約15時間(*2)のロングバッテリーライフ。充実したAV性能と使いやすさを両立したXperia Z3 Tablet Compactは、どのようにして生みだされたのでしょうか。Xperia Z3 Tablet Compactの設計に携わった斉藤、松原、松本の三氏に話を聞きました。
*1 8インチクラスの液晶を保有するタブレット製品において。2014年10月1日時点
*2 連続ビデオ再生時で約15時間
──Xperia Z3 Tablet Compactのディスプレイが映し出す白色は“白”の純度が高く、ウェブサイトの小さな文字や写真のディティールをくっきりと映しだしているように感じます。透き通るような白色を表現するうえで鍵となったこととは?
松原:多くの液晶ディスプレイは、白色LEDを光源とするバックライトの光を透過することで、映像を画面へと映しだしています。一般的に、白色LEDは青色LEDに黄色の蛍光体を加えて白い光を作ることが多いのですが、Xperia Z3 Tablet Compactが採用する「Live Color LED」では黄色の蛍光体の代わりに赤と緑の蛍光体を採用しています。従来この技術は輝度が低めに出てしまうというデメリットがありましたが、蛍光体を含むLED技術の進歩により明るくすることができ、これが綺麗な白色を出す鍵になっています。
──バックライトの白さが際立っているから、画面に映しだされる白も美しく見えるんですね。
松原:そうですね。そして「Live Color LED」が効果を発揮するのは白だけではありません。赤や緑をはじめとするすべての色はバックライトと液晶パネルによって表現されるので、白以外の色の純度や鮮やかさを高めることができます。
「Live Color LED」はXperia Z2から採用している技術ですが、Xperia Z3 Tablet Compactではさらに改良を加えています。白さに磨きをかけると同時に表現可能な色数を増やすことで、夕陽の赤やエメラルドグリーンの海の色など、微妙に変化する色彩の自然な表現が可能になりました。
──バックライトで画面を映し出す液晶ディスプレイは、強い光を受けるとライトの明るさが打ち消されて画面が見えにくくなりますが、Xperia Z3 Tablet Compactは太陽の光がまぶしい屋外でも画面をクッキリと見やすく表示することができますね。
松原:よく晴れた日の屋外のような強い光の下で画面を見やすくするためには、画面全体を太陽光に負けないくらい明るくするのもひとつの方法です。しかし、バックライトの光は強くすればするほど消費電力が増えてバッテリーのもちが悪くなりますし、黒い文字や映像の影部分が見えにくくなってしまいます。
Xperia Z3 Tablet Compactは照度センサーと連動して画面の明るさだけでなく、ピクセルごとにコントラストを自動調整することで、まぶしさを感じる場所でも明るく、それでいて少ない消費電力で細部までくっきり見える画面を表示します。
──ビビッドな色彩や高コントラストな表示によって、Xperia Z3 Tablet Compactの映像はフルHD以上の精細さを感じますね。
松原:映像の美しさ、いわゆる“高画質”というのは液晶の明るさや解像度などハードウェアの性能や数字だけで決まるわけではありません。Xperia Z3 Tablet Compactは豊富な色彩と鮮やかな発色、明るい画面、斜めから見ても色の変化が少ない広視野角の液晶ディスプレイ、そしてソニーの映像技術が結集した「X-Reality for mobile」と、画質を構成するいろいろな要素の実力を高めることで、高解像度などの数値だけでは得られない、ソニーらしい鮮鋭さを感じる映像を実現しました。
──Xperia Z3 Tablet Compactは外出先でも臨場感たっぷりのハイレゾ音源を楽しむことができます。ヘッドホンでハイレゾが聞けるXperia Z3 Tablet Compactのオーディオ回路と、従来の回路の違いについて教えてください。
松本:ハイレゾは人の聴感を超えるとされる20kHz以上の超高音を再生できますが、超高音域の信号はステレオの左右チャンネルが混信しやすかったり、わずかなノイズに影響を受けたりと、回路の設計/製造には通常の音源向け以上の厳密さが必要になります。
Xperia Z3 Tablet Compactの回路はオーディオにとってノイズ源となる通信などの回路と電気信号レベルで分離するとともに、オーディオ回路でも、各信号の周囲をシールドし、さらに左右チャンネルの信号経路の分離を徹底するなど、ノイズの侵入や信号の混信を可能なかぎり防いでいます。さらに信号経路に入る部品でもなるべく特性や音質に悪影響を与えないものを選定するなど、高音質対策を徹底しました。
──Xperia Z3 Tablet Compactの内蔵ステレオスピーカーは音が大きく明瞭に聞こえ、まるでテレビを見ているかのように動画を視聴できます。しかし外観からはスピーカーがどこにあるのかわかりません。いったいどこに搭載しているのでしょうか?
松本:スピーカーは画面の上下に搭載しています。大音量の再生には大きなスピーカーユニットが必要になりますが、部品が密集している中にどうやってユニットを搭載するのか、スピーカーの音を出すための開口部はどうするのかは難問でした。筺体の上下幅を大きくして内部スペースを広げ、さらにスピーカー用に大きな穴を開ければ、問題は簡単に解決しますが……。
──大きな穴を開けてしまうと、デザインとの相性があまりよくないように思えます。
松本:そうですね。わたしもそう思います。大きな穴は見た目がよくないですし、上下に長い筺体は持ち運びにくくデザインも間延びして見えます。デザインと音質を両立する開口部の構造やスピーカーユニットの配置など、シミュレーションと試作を何度も繰りかえしながら、機構設計担当者やデザイナーと最適な設計を模索し、完成しました。スピーカーユニットはこの製品に搭載しうる最大の大きさです。またスピーカーユニットだけでなく、スピーカーの背面を囲む空間の大きさも音質には重要です。これについては、少しの空いた空間でも有効に活用するため、空間の最適な配置を機構設計担当、アンテナ担当と協議して詰めていき、美しいデザインはそのままに実現しています。
──タブレットは、手に持った状態、液晶を上にして机に置いた状態と、さまざまなスタイルで使用できますが、使うスタイルによってスピーカーの向きも変わりますよね。オーディオ機器とは異なる、タブレットならではの音響チューニングがあるのでしょうか?
松本:Xperia Z3 Tablet Compactのような薄型タブレットやスマートフォンを机の上に置くと、机の天板が中低音を反射・増幅するため高音の存在感が薄れてこもったような音になりがちです。ただ、実際にそれらの機器で“音を聞く”シーン、たとえば動画を見たりPlayStation(R)4のリモートプレイで遊んだりする場合ですね、そういったシーンではXperia Z3 Tablet Compactをスタンドに立てかけたり、両方の手で持って画面を眺めるような使いかたが多いと思います。ですから音響のチューニングとしては、手で持った状態を基準としつつ、高音をわずかに強めにすることで、机にベタっと置いた状態でもバランスの取れた自然な雰囲気の音となるようにしています。
音作りは測定機器を使って周波数特性(周波数ごとの出力バランス)の確認などもおこないますが、最後の決め手はやはり“耳”を使ったチューニングです。これはオーディオ機器もタブレットも同じです。 Xperia Z3 Tablet Compactの開発時は、さまざまな音源を使用して、筺体の置きかたを変えたり、大きさや壁の材質の違う部屋で試聴するなどいろいろなパターンで実際に何度も音を聞いて、もっとも“心地いい”音を追求しました。
──Xperia Z3 Tablet Compactは厚さ6.4mm、重量約270gの持ち運びやすい筺体にもかかわらず、防水・防塵構造も備えていますね。
斉藤:薄さと軽さを追求するうえでは、専用バッテリーの開発とミクロン単位で管理している内部構造、そして液晶ディスプレイの薄型化という3点が決め手となりました。
たとえばバッテリーを例にあげると、Xperia™ Z2 Tabletのときには2つのユニット(セル)を結合して1基のバッテリーとしていましたが、Xperia Z3 Tablet Compactでは1セルのみのシンプルな構造で半分ほどのサイズにおさめました。Xperia Z2 Tablet(約10.1インチ)とXperia Z3 Tablet Compact(約8インチ)とでは本体サイズが異なるため、バッテリー容量は6000mAhから4500mAhと小さくなっていますが、容量の差以上にバッテリーサイズが小さくなったことで、逆に駆動時間は伸びているんです。
──厚さ6.4mmを達成するにあたって、開発前に具体的な数値目標はあったのでしょうか?
斉藤:Xperia Z2 Tabletの厚さ(約6.4mm)がもっとも大きな目標のひとつでしたね。厚さだけでなく幅と奥行きにも目標とする数値を作り、そこにおさまるように液晶ディスプレイなど各デバイスの設計を進めました。Xperia Z2 Tablet以上の性能を、さらに小さな筺体に収納するわけですから目標はかなり厳しく、最初は実現不可能かもしれないと感じていました。
──不可能と思われていたことを可能に変えた要因とは何でしょう?
松原:Xperia Z3 Tablet Compactの液晶ディスプレイは“メモリーオンディスプレイ”という技術を採用しています。この“メモリーオンディスプレイ”は今回必ず実現したかったことのひとつで、今までの液晶ディスプレイは画面表示をおこなっている間は、常にCPUとデータのやりとりをしていました。“メモリーオンディスプレイ”は映像データを液晶が備えるメモリーに蓄えることでCPUとの通信を減らし、表示の変化が少ない写真やウェブサイト、待ち受け画面の表示をする時などの消費電力を削減でき、省電力を実現しています。
斉藤:純度の高い白で細かな部分をクッキリと表現する「ライブカラーLED」や、照度センサーと連動したコントラスト補正も消費電力の低減に役立っています。液晶まわりの省電力化が大きく進んだことで、バッテリーの薄型・小型化を実現できました。
──Xperia Z3 Tablet Compact内部はさまざまな部品が整然と配置され、髪の毛一本すらも入りこむ余地がなさそうに見えますね。
斉藤:部品単位の小型化も、薄く、軽い筺体の実現に貢献しています。たとえば背面パネルにあたるユニボディ構造のキャビネットは厚さ約0.4ミリととても薄く、黒や白の塗装がないと内部が透けて見えるほどなんです。また、カメラモジュールや信号ケーブルなど、すべての部品は0.01ミリ単位で大きさを管理しています。大量生産される部品というのは厳密にはそれぞれわずかに大きさが異なるのが一般的です。Xperia Z3 Tablet Compactの内部は立体的に部品が配置されているので、わずかなズレでも重なると最終的に完成しないことにもなりかねません。“もしも”を確実に防ぐためにも0.01ミリ単位での管理が必要になるんです。
松原:ホワイトモデルでは液晶画面を囲むフレーム部分の塗装の厚さも管理しています。白色は色の特性上、光が透けやすくそれを防ぐために重ね塗りが必要になります。重ねれば重ねるほど白の質感が高くなりますが、筺体(周囲のフレーム)の色味と乖(かい)離しないよう、メカ担当、デザイナーとギリギリまで塗り重ねる回数や微妙な色の配合を決定しました。
斉藤:0.01ミリ単位で大きさを管理しているなかで、大きなスピーカーユニットを搭載して音質と音圧にこだわれたのはほんとうによかったです。こっちから0.1ミリ、あっちから0.2ミリといったように、開発の終盤までいろいろな部署の担当者と相談していました。
──ハイレゾ音源の再生や最先端の液晶技術と、Xperia Z3 Tablet Compactはソニーの技術の集大成ともいえる存在です。Xperia Z3 Tablet Compactの開発にあたって皆さんが心がけていたこと、指針としていたこととは何でしょうか?
松本:Xperia Z3 Tablet Compactの音を耳にした人が「いいね」、「すごい!」と驚く音を目指しました。Xperia Z3 Tablet Compactにとってオーディオ機能は数ある機能の中のひとつです。しかし「オーディオ専用機ではないから」と言い訳をしているようでは、人を感動させるいい音は生まれてきません。自分が納得する、自分が欲しいと思うものをとことんまで追求することが大切だと思いますね。
松原:液晶ディスプレイは、画質とともにタッチ入力のしやすさにもこだわっています。画質やタッチのしやすさは数字に表わすことがむずかしい、使ってみて初めてわかる性能です。数字という明確なゴールのない開発は苦労も大きいのですが、じっくりとすみずみまでこだわりました。長く使っていても、ふとした瞬間に「高画質だな」、「気持ちよく操作できるな」と感じてもらえたらいいですね。
斉藤:Xperia Z3 Tablet Compactの薄さ、軽さは、この性能を保持するのであれば現時点でベストだと考えています。これ以上薄型化をするのであれば液晶のガラスやキャビネットを薄くする、といった方法がありますが、そのぶん壊れやすくなってしまいます。数字だけを追い求めて品質をないがしろにするのは、Xperiaの流儀ではありません。薄く、軽く、さらに高品質であること。これこそがXperiaだと考えています。
──最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
斉藤:最初の試作機を初めて手にとったとき、サイズと軽さだけを再現したモックアップかと一瞬、勘ちがいするほどでした。手にとったときのXperia Z3 Tablet Compactの薄さ、軽さの衝撃は数字や写真で見る以上のものがあります。ぜひ一度Xperia Z3 Tablet Compactを手にしてこの衝撃を味わってください。
松原:Xperia Z3 Tablet Compactのタッチ入力は画面に触れると同時に指先にスッと追従し、画面に多少の水滴がついていても快適に操作できるところまで突き詰めました。店頭やソニーショールームで画面の見やすさ、映像の美しさとともに、指先に吸い付くような心地よいタッチを体験してください。
松本:Xperia Z3 Tablet Compactはハイレゾとともに内蔵スピーカーの音質にもこだわりました。動画を見る時、ゲームを遊ぶ時は一度スピーカーを使ってみてください。コンパクトなタブレットのサイズ感を超えた音と映像を楽しめるはずです。
ネットワークレコーダー&メディアストレージ「nasne(ナスネ)™」やソニー製ブルーレイディスクレコーダー(*)に録画されたテレビ番組を、Xperia Z3 Tablet Compactへ転送して外出先で楽しめます。
また、対応するブルーレイディスクレコーダー、もしくはシステムソフトウェアが Ver.2.50以上のnasneであれば、Xperia Z3 Tablet Compact の「TV SideView」アプリを使って、放送中や録画した番組を外出先で視聴することも可能。旅行先の海外でも、日本のテレビ番組を楽しめます。
* ソニー製ブルーレイディスクレコーダーの対応機種については、こちらをご確認ください
※ Xperia Z3 Tablet Compactと対応機器を同一ネットワークに接続する必要があります
※ 転送した番組はレコーダーに戻すことはできません
※ nasneでの「外からどこでも視聴」のご利用には、TV Side Viewプラグインプレイヤー(463円+税)が必要です
Xperia Z3 Tablet Compactはハイレゾ音源のダウンロードと再生に対応。ハイレゾ対応ヘッドホンと組み合わせれば、楽曲を購入したその場で臨場感たっぷりのハイレゾサウンドを楽しめます。また、Bluetooth®対応機器と組み合わせるとワイヤレスで楽曲の再生が可能に。ポータブルAVプレーヤーとして、自由なスタイルで音楽の世界にひたれます。
家庭内ネットワーク経由でPS4™にアクセスして、PS4™のゲームをPS VitaやXperiaでプレイできる“リモートプレイ”にXperia Z3 Tablet Compactも対応しています。たとえば急な来客でPS4™のあるリビングが使えなくなっても、寝室ですぐにゲームの続きに集中できます。また、Xperia Z3 Tablet Compactの防水機能を活かせば半身浴で温まりながら、ゆったりゲームを楽しむことも可能です。
* 専用アプリは年内リリース予定です
※ 画像の使用イメージはワイヤレスコントローラー(DUALSHOCK(R)4)(別売)との組み合わせです
※ リモートプレイは家庭内のWi-Fi環境での使用を推奨しております。外出先Wi-Fi環境での使用は推奨しておりません
※ XperiaはSony Mobile Communications AB の商標または登録商標です
※ サイバーショット、WALKMAN®、ウォークマン®およびそのロゴは、ソニー株式会社の商標または登録商標です
※ 「PlayStation」、「プレイステーション」、「PS3」、「nasne(ナスネ)」、「PS Vita」は株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの登録商標です。「PS4」は同社の商標です
※ Wi-Fi, the Wi-Fi CERTIFIED logo, WPA, WPA2 and Wi-Fi Protected Setupは、Wi-Fi Allianceの商標または登録商標です
※ YouTubeは、Google Inc.の商標または登録商標です
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