ブラビアX9000Cシリーズが実現した世界最薄(*)の画面でテレビはどう変わるのでしょう。開発者の声から薄さの秘密と魅力に迫ります。
* 20V型以上の家庭用液晶テレビとして。最薄部のみ。2015年9月7日時点
4Kテレビ ブラビアX9000Cシリーズは、ソニー独自の技術により約4.9mmと世界最薄(*)の画面を実現しました。付属の壁掛けユニットを使用すれば、壁との 隙間をなくした壁掛け設置も可能。壁掛け時は壁から本体前面までの奥行きがわずか約40mmと、ポスターや絵画を飾る感覚でお部屋に大画面テレビを設置できます。
フルHD以上に精細な4K映像は、映像の種類やシーンの内容を瞬時に判別する4K高画質プロセッサー「X1」が映し出します。精細感と色彩、コントラストを最適化し、映像が持つ美しさを引き出します。本体背面には豊かな低音表現が可能なバスレフ型スピーカーを搭載。クリアで迫力のある音は人の声などを聞き取りやすく再現します。
* 20V型以上の家庭用液晶テレビとして。最薄部のみ。2015年9月7日時点
──指先で隠れてしまうほど薄い画面は、X9000Cシリーズの大きな特長のひとつです。テレビが薄型化することで、リビングルームをはじめとする部屋の中でのテレビのあり方はどのように変わるのでしょうか?
坂本:大画面テレビは映像を迫力たっぷりに楽しめます。しかし、お部屋の大きさや家具とのバランスであきらめてしまうこともあるでしょう。世界最薄を実現したX9000Cシリーズは、今まで以上にテレビを壁によせて設置できます。また、壁掛けで設置すれば、これまで使用していたテレビ台のような家具は不要になります。すると家具のチョイスも変わっていくと思うんですね。テレビが薄型化することで、リビングルームが心理的にも空間的にも広く使えるようになると思います。
──X9000Cシリーズは、2008年に登場したブラビア ZX1シリーズの9.9mmを越える約4.9mmの薄さを実現しました。大幅な薄型化はどうして可能になったのでしょうか?
藤井:ひと言で“液晶画面”と言っても、液晶そのもののほかに、バックライトの光を画面に導く導光板(*)や光学シート、さらに液晶や導光板のたわみを防ぐシャーシなど、複数の部品で構成されています。単純にこれらの部品の奥行きを縮めることでも、画面全体を薄くすることはできますが、液晶画面はすでに限界近くまで薄くなっていて、今までと同じ構造ではZX1シリーズを大きく超える薄型化は困難でした。
* 導光板:画面エッジに配置したLEDバックライトの光を液晶パネルの裏側全体に導くための光学部品
坂本:従来の構造で大幅な薄型化をねらうと、画質や強度に悪い影響が出やすくなって、薄型化そのものが成立しません。そこで液晶画面の構造そのものに注目しました。ひとつの部品が複数の役割を担当すれば、役割が重なる部品を減らしてさらなる薄型化ができます。
そのなかで注目したのが導光板です。従来型の液晶のほとんどは導光板の素材に柔らかいアクリルを用いています。いっぽうアクリルに見た目が近いガラスは、光の屈折率がアクリルとほぼ同じで、しかも同じ厚さのアルミに匹敵するほど高い強度を備えています。導光板をガラスに変えることで、大画面を支える補強用のシャーシが不要になります。
──部品点数が減れば、さらなる薄型化が可能になる。
坂本:ただ、一般的なガラスは導光板に使用できません。ガラスは無色透明に見えますが実際は無色じゃないんです。ガラスの成分には光の波長の一部を吸収する金属が含まれています。このためガラスを通った光はわずかながら緑がかってしまいます。一般的なガラスでは、導光板を通る距離が長い画面上部の発色が緑がかるんです。
この問題を解決するために、ガラスメーカーさんと共同で徹底的に無色透明なガラスを開発しました。この新たなガラスの開発には2年半くらいの期間をかけています。このガラスがなければ約4.9mmの世界最薄画面は実現できなかったでしょう。
また、従来は画面の強度などを高めるため、液晶の前面と液晶を囲むベゼルとの間に特殊な樹脂を封入していました。X9000Cシリーズは部品どうしの貼り合わせを工夫することでベゼルをなくして、さらに液晶の周囲のみに樹脂を封入しています。ベゼルをなくしたことと液晶前面の樹脂の厚みをゼロにすることで、薄型化と画面前面の段差をなくしたスッキリした見た目を追求しました。
──薄型化の原動力はガラスの導光板だったんですね。
藤井:ガラスの導光板は薄型化のカギとも言える革新的な技術です。とはいえ薄型化を導いたのはガラスだけではありません。私はブラビアZX1シリーズの開発にも携わっていて、当時は9.9mmより薄い画面の実現は不可能だろうと考えていました。X9000Cシリーズはガラスの導光板をきっかけに、ガラスの特性にあった波長の光を放つバックライトLEDや部品の貼り合わせの工夫と、多くの分野で新しい技術を開発しました。これらのさまざまな技術がパズルのピースのようにかみ合うことで、ZX1シリーズのほぼ半分の薄さと、4倍の精細感をもつ4Kの明るく鮮やかな画質が両立できたんです。X9000Cシリーズにはソニーの最新技術とともに、長年培ってきた映像と小型・薄型化の技術の粋がつまっています。
──X9000Cシリーズはテーブルトップ用のスタンドとともに壁掛けユニットが付属し、2つの設置方法を選べます。
坂本:壁掛け時もデザイン性を保つため、X9000Cシリーズの壁掛けユニットは付属しました。専用の壁掛け金具と逆U字バーで設置することで壁掛け時も厚みを増さずスリムな形状のまま設置が可能です。さらにバックライトなどから出た熱を逃がす放熱口をテレビの背面方向ではなく上方向に配置することで、壁面に密着するようにぴたりとよせた“壁ピタ”での設置ができるようになっています。
藤井:従来の壁掛けユニットは吊り下げ用のバーを使わずに、壁掛けユニットが液晶テレビを背負うように接続する方式でした。また、液晶テレビも背面に放熱口があったため、換気用の空間として壁面との距離を確保する必要がありました。
坂本:今までの壁掛けは壁から本体前面までの距離があったので、画面が飛び出して見えてしまい、テレビそのものが映像と同じくらいに存在を主張していました。約40mmと壁との距離が大幅に近づいたX9000Cシリーズは、壁に備わった窓から外を見る感覚で映像が見えます。また、バーを使って吊り下げているので、壁掛けユニットを支点にブランコのように画面を傾けて持ち上げれば、テレビの左右に配置されたHDMIなどの入力端子にすぐ手が届くのも特長のひとつですね。
──X9000Cシリーズは薄さを追求しつつ、画面の背面には大きなスピーカーを搭載しています。
坂本:画面の背後には2.2chのスピーカーを搭載しています。音は空気の振動ですので、迫力があって伸びのいい音を出すには、スピーカーボックスの容積をたっぷりとって、空気を大きく動かすことが必要です。X9000Cシリーズは画面下部の、厚さ39mmの部分のスペースを最大限に利用したスピーカーボックスを搭載しています。
藤井:ソニーはオーディオ機器メーカーなので、音に妥協したくないという思いがあります。テレビは迫力ある映像と音を家で気軽に楽しめるのが魅力です。スイッチオンですぐ映像の世界に入り込めるよう、画質と同じくらい音にもこだわっています。
──音は画面の下方向に向かって出るんですか?
藤井:そうです。下方向に音が出るので壁掛け設置したときも音が濁ることはありません。実は、テレビの内部には、基板などのたくさんの構造物が詰まっているんです。それらは、決して自由に動かせるわけではないんです。その中で、この左右のスピーカーボックスは画面の背後で大きく広がっているのですが、この面積を確保するために、非常に苦労しました。内部構造の設計者とスピーカーの設計担当とはどのように配置するのがベストか何度も話しあいましたね(笑)。最後は、構造物も適切な場所に配置しながら、十分容積のあるスピーカーボックスを採用することができました。この薄さからは想像できない音の響きを体感していただけると思います。
──X9000Cシリーズは壁掛け使用がキーワードのひとつになっています。壁掛けでテレビの映像体験はどう変わるのでしょうか?
坂本:私が初めて壁掛けにしたX9000Cシリーズの映像を見たとき、映像の立体感に驚きました。奥行き感がとても強く感じられて、まったく新しい感覚がありました。壁掛けテレビの映像はほかにも見ていますが、このような体験をしたのはX9000Cシリーズが初めてでした。
藤井:テレビを壁掛けにすることで映像の見え方がこんなにも変わることは、じつのところ開発段階では予想していませんでした。ただ、単に壁掛けにしただけではこのような感覚は得られません。壁面との距離が短いことだけでなく、X9000Cシリーズの狭額フレームと、液晶面に段差のないフラッシュサーフェスデザインによるところも大きいのです。実際、ベゼル(画面周囲の額縁部分)幅が太い試作機で映像を見ても、このような感覚は得られませんでした。
導光板のガラス開発に2年半くらいかかっているとお話しましたが、狭額フレームを実現するための接着技術や液晶セルに樹脂を封入する技術についても2年半くらいかけて準備してきたものです。また、LEDや光学シートといった部材も、X9000Cシリーズのために新たに用意しました。こういった数々の技術的なブレイクスルーがあったからこそ、壁掛けで視聴したときにまったく新しい感覚が生まれたんです。
坂本:テレビの映像を見ているとき、テレビのまわりに置かれたものやテレビそのものの影が見えてしまうと、現実を感じて映像への集中力や没入感が薄れてしまいます。しかし、壁掛け設置ならテレビのまわりにはなにもない。そこに窓のようにも見える“壁ピタ”と、狭額フレームで映像が空中に浮かび上がるように見えるX9000Cシリーズの特長が組み合わさることで、画面への集中力が高まって、コンテンツの中に入り込むような、映像が現実にあふれてくるような感覚があらわれるんだと思います。
──最後にMy Sony読者へのメッセージをお願いします。
坂本:世界一の薄さと狭額フレームの画面がもたらす、新しい映像体験をぜひ楽しんでください。壁掛けにすると感覚はさらに強くなりますよ。
藤井:X9000Cシリーズは壁掛けやテーブルトップと、設置方法を変えることでお部屋のようすを変えることができます。身近なテレビであると同時に、家具やインテリアの一部ととらえることもできるんです。画面に映し出される映像はもちろん、お部屋の中でのテレビそのもののたたずまいを楽しんでいただければと思います。
銀座 ソニーショールーム、ソニーストア 名古屋、ソニーストア 大阪ではブラビア X9000Cシリーズの壁掛けスタイル展示を実施しています。今回は銀座 ソニーショールームでX9000Cシリーズを体感しました。
実物を見て驚くのは、やはりその薄さ。どうやって4Kの高精細映像が映し出されているのかと不思議に思えてきます。壁掛けスタイルの展示では旧モデルと本体前面から壁までの距離をわかりやすく比較。壁にぴたっと吸いついているかのようなX9000Cシリーズを見たら、これまで壁掛けでのテレビの設置を考えたことがなかった方でも思わず「自宅に置くとしたらどの壁にしようか?」と考えを巡らせてしまうかも。
X9000Cシリーズと調和するホームシアターシステム「HT-NT3」との組み合わせも展示しています。ぜひ、ソニーショールームやソニーストアで、いろんな角度からX9000Cシリーズをご鑑賞ください。
※ 本ページに掲載している情報は2015年10月15日現在の情報であり、予告なく変更される場合がございます