「Life Space UX」は、リビングや寝室をはじめとする空間と機器の持つ力を合わせることで、新たな体験を創出するソニーの新しいコンセプトです。
Life Space UXはオーディオ、ビジュアルと機器のジャンルを超えて展開しています。2015年には4K超短焦点プロジェクター「LSPX-W1S」とLED電球スピーカー「LSPX-100E26J」が登場しました。2016年春には新たにグラスサウンドスピーカー「LSPX-S1」、ポータブル超短焦点プロジェクター「LSPX-P1」が加わります。
谷村:Life Space UXは居住空間における新しい体験の創出を目標としてプロジェクトがスタートしました。AV機器の開発は多くの場合、“透明感のある音を鳴らす”、“精細な映像を映し出す”といったように、作ろうとする“製品”を中心にして進みます。Life Space UXはこの製品中心の発想から角度を変えて、製品がおかれた空間が作り出す体験に着目しそこから生まれる新しい体験(UX:User Experience)に焦点を当てました。
「グラスサウンドスピーカー LSPX-S1」を手にとることで暮らしはどう変わるのか。「ポータブル超短焦点プロジェクター LSPX-P1」があることで今ある空間での体験をどのように変化させることができるのか、Life Space UXは人間の生活の中心である居住空間での新しい体験を考えの中心に置いています。
リビングや寝室をはじめとする居住空間は、リラックスできる場所、自分の“素”を出して裸になれる居心地のいい場所だと思うんです。気持ちのいい空間は、ソファーや趣味のものとお気に入りのアイテムを部屋に加えていくことでできあがっていきます。
この自分好みの空間に、もともとそこに属していない各種デバイスを持ちこむことを想像してみてください。「この壁際にこのデバイスを置くからよく見えるように反対側にはソファーを置いて」と、部屋の印象が変わってきます。おそらく作り上げてきた心地よさも今までとは違ったものに変化するでしょう。空間が変化することにより本来のたたずまいが阻害されて違和感が生まれるのです。
Life Space UXはユーザーが作り上げてきた自由で解放感のあふれる空間にとって理想的な製品のありかたを追求してきました。先進的な技術を盛りこみながら、存在を極力主張しない外観にもこだわり、ユーザーがコンテンツとの直接的な関係性を築けるように配置しています。音と映像で空間の魅力を引きだします。機器の存在が部屋の中に溶けこむことで、スピーカーや映像機器と真正面から向きあうのとは異なる、コンテンツそのものが感じられる、景色や音そのものが部屋の中に存在するような感覚が味わえるはずです。
──有機ガラスを振動させることで音を発する「グラスサウンドスピーカー」は、スピーカーであることを感じさせないデザインが印象的です。
伊藤:グラスサウンドスピーカーのルーツは2008年に登場した“Sountina(サウンティーナ)”「NSA-PF1」にあります。サウンティーナは有機ガラスならではの透き通ったデザインと、ボーカルと弦楽器のつやのある響きで人気を集めました。グラスサウンドスピーカーは有機ガラスで音を奏でる技術、“バーティカル ドライブ テクノロジー”を“アドバンスド バーティカル ドライブ テクノロジー”へと進化・発展させています。有機ガラスを振動させる加振器を新しく開発し大幅に小型化すると同時に、歪(ゆが)みの低下と応答性を高めることでポータブルサイズと透明感のある音を同時に実現しました。
──有機ガラスのチューブからは360度均一に音が広がりますね。包み込むような音の響きを聞いているだけでは、グラスサウンドスピーカーが音を発しているとは思いませんでした。
伊藤:既存のスピーカーとはまるで違うデザインであることと、特長的な音の響きかたから、初めて見る人はグラスサウンドスピーカーがスピーカーだということに恐らく気づかないでしょう。音量調節などの操作ボタンを普段は見えない底面に配置するなどして、スピーカーであることを感じないたたずまいを目指しました。AV機器であるという主張を抑えることで、スピーカーから音が聞こえるのではなく空間に音そのものがあるという感覚で音楽を聞くことができます。音楽が自然と耳に入ってくるこの感覚は、ぜひ一度味わってほしいですね。
──バッテリーを内蔵していることで、グラスサウンドスピーカーは電源がない場所でも使用することができますね。
伊藤:普段はスピーカーを食事のテーブルに置くことはしませんが、グラスサウンドスピーカーなら料理といっしょに置くことができます。音が 360度に広がるので、テーブルのどこに座っても、グラスサウンドスピーカーならではの濃密かつ透明感のある音の響きが楽しめます。そのとき、電源ケーブルが見えてしまうと電化製品であることを意識してせっかくの雰囲気が台無しになってしまいます。
それに電源のない場所でも音楽が聞きたいときもありますよね。開発中はバッテリーをなくしてもっと小型化するという方向性も考えました。でも、バッテリーがあるからこそ体験できる音もありますから。
──最大80インチの画面を片手で持ち運べるポータブル超短焦点プロジェクターはどのようにして誕生したのでしょうか。アイデアの源とコンセプトを教えてください。
村澤:大画面テレビやプロジェクターは設置すると、ほとんどの場合画面が部屋の中心になります。しかし、もっと自由に、自分と家族が中心になって映画やドラマが見られないだろうか、と。そこでコンパクトなプロジェクターに注目しました。ポータブルタイプなら部屋の中の好きな場所で映像が見られますし、好きな場所に画面を映し出せば家具の置き場所も自由に決められます。
──開発中とくに印象に残ったことはなんでしょう?
村澤:持ち運べるサイズの実現にはとくに苦労しました。ポータブル超短焦点プロジェクターの幅は約8センチですが、この幅は片手でつかんだときの持ちやすさから決定しました。
小型化の目標として8センチはかなり厳しかったですね。レーザー光源は、小型で明るいぶん発熱量が多いんです。さらに映像と部屋の調和を壊さないように、排熱口や映像端子といったAV機器や電化製品をイメージするものをパンチングメタルで包んで見えないようにしています。そういった処理で排熱効率は下がるのですが、それでも動作騒音も22dB以下と木の葉がふれあう程度の大きさに抑えています。
オートフォーカス機能を搭載しつつソニー史上最小(*)を実現した超短焦点レンズと、新たに開発した「SXRD」、レーザー光源を採用しながら、試行錯誤と実験を繰り返して最適化した冷却風の量と流路を組み合わせることで、新しい映像体験を創出する理想のサイズを実現しました。
* 2016年1月時点
──ポータブル超短焦点プロジェクターは画面を壁に投射できるほか、90度倒して設置することで、机の天板や床に画面を映し出すこともできます。
村澤:ポータブル超短焦点プロジェクターにパソコンを接続して机の上に画面を投射すると、写真やデジタルデータの資料と紙の資料を並べて表示することができます。こういった今まで使えなかった場所にコンテンツを表示することで、新しい空間の使いかたを出来るのではないかと思っています。
加えてポータブル超短焦点プロジェクターは、片手で持ち運んで気に入った場所に置けば、ピント合わせなしですぐに映像が見られます。気になる場所を見つけたらどんどん映像を映し出してほしいですね。意外な場所から新しい使いかたが生まれるかもしれません。
──照明とスピーカーを組み合わせた、ユニークな「LSPX-100E26J」のアイデアが誕生したきっかけを教えてください。
保田:ある日、机の上を見て「どんなに整理しても、雑然とした雰囲気が残るのはなぜなんだろう」と感じたんです。机にはパソコンやスマートフォンなどいろいろな機器があって、そこで使う何本ものケーブルが見えているのが雑然とした雰囲気の原因だったんですね。このゴチャゴチャからまるケーブルや雑然としたイメージをなんとかしたい。けれどもAV機器には電源が欠かせない。そこでケーブルに気づきづらいけれども電気が通っている場所は? と探して、電球にたどりついたんです。
──「LSPX-100E26J」は従来の電球とほぼ同じサイズに、照明としての機能はもちろんスピーカーやBluetoothレシーバーと数多くの機能を搭載しています。
保田:電球としての汎用性を保つために、口金をE26口径にして、通常の電球サイズと同等の大きさを保つことが必要でした。
照明の明るさを重視すると、LEDは電球の先端に搭載するのがベターです。けれどもオーディオ機器メーカーとして第一に音の響きを考えました。スピーカーを障害物のない電球の先端に備えることで、「LSPX-100E26J」はクリアで自然な音の広がりを実現しています。奥まった位置にあるLEDは導光板で光が適切に拡散するように誘導しています。電球という見慣れたかたちと影のない均一な明るさから、言われなければスピーカーの存在に気づかないと思います。
面倒な配線や設定も不要、電球を取り換えればいいだけなので、キッチンや廊下、お手洗い、洗面所など普段は音楽を聴かない場所で楽しんでいただいているお客様も多いです。
──100インチを超える大画面を床から壁へと投射する「LSPX-W1S」からは、どんな体験がもたらされるのでしょうか。
中島:ご自宅で100インチ以上の大画面を楽しむと聞くと、ホームシアターを連想するかと思います。映画館のように部屋を暗くして非日常の中で映像に集中するホームシアターも楽しいのですが、「LSPX-W1S」は、日常の空間で大画面に触れることで、現実とバーチャルの映像が混ざり合う体験ができます。
画面は部屋の壁に直接投射するので、風景の映像を映すとまるで大きな窓から外を眺めているような感覚が味わえます。また、床に近い低い位置に画面があることから、映像に登場する人物の目線が自分の目線とほぼ同じ高さになります。視界いっぱいに広がる大画面と目線が合っていることがあわさって、「LSPX-W1S」の人物表現はとても迫力がありますね。登場人物が歩み寄ってくるようなシーンには映画館でも感じたことのないぞくぞくするようなリアリティを感じます。
──ローボードのような低くワイドなデザインも特長的です。
中島:「LSPX-W1S」の筺(きょう)体は中央にプロジェクターがあり、左右にスピーカーとブルーレイディスクレコーダーなどを収納するキャビネットを配置しています。テレビ番組の録画や映像の再生にはプレーヤーが必要です。でも、プレーヤーを収納するためのAVラックなり棚なりを部屋に導入しようとすると、色やデザインの微妙な違いから空間の様子が乱れてしまいます。「LSPX-W1S」はAV機器を収納するキャビネットをプロジェクターと一体化したことで、部屋のデザインを統一することができます。電源や映像ケーブルも筐体の下部に通すことで、部屋からAV機器の影を消して、映像と居心地のいい室内の雰囲気だけを体感できるようになります。
──最後にLife Space UXの機器のおすすめの使いかたと、読者へのメッセージをお願いします。
伊藤:グラスサウンドスピーカーは、玄関をはじめ今までスピーカーを設置するのが難しかった場所でも音楽を聞くことができます。ガラスならではの透明感のある、そして360度に音が広がる特長的な響きをぜひ一度体験してみてください。グラスサウンドスピーカーは2基1組とすることでステレオ再生が可能になります。通常のスピーカーとは異なる全身を包み込むようなステレオサウンドも魅力のひとつです。
村澤:今までのプロジェクターには、仕事で使うもの、ホームシアターでじっくり映画を見るものというイメージがありました。今回開発したポータブル超短焦点プロジェクターは、持ち運んで壁や机に映像を映し出すので、仕事や趣味、生活の中での活用と、使う人ごと使う場所ごとに新しい使いかたと楽しさがあります。同梱の「ワイヤレスユニット」を使えば、パソコンやスマートフォン、ブルーレイディスクレコーダーなど、いろいろな機器の映像を投射することができます。ぜひ一度手に取っていただき、自分好みの使いかたを探ってみてください。
中島:壁に映像を映しだす4K超短焦点プロジェクターは、現実と映像の境界が薄いのが特長です。だまし絵の原理で不思議な体験ができるアート映像を再生すると、テレビやパソコンで再生したとき以上に不思議な感覚が味わえます。また、4K超短焦点プロジェクターは起動が早く、日常の生活空間でも映像が見られることと相まって、部屋の雰囲気そのものを変えてしまう力を持っています。読書をしているとき、仕事から帰ってきたときと、そのときどきの気持ちや雰囲気にあった映像を大画面で楽しんでください。
保田:LED電球スピーカーは、明るさを32段階で調整できるほか、スリープタイマーで自動的に照明と音楽をオフにすることができます。抑えめの光は眠る前の読書にぴったりです。うっかり眠ってしまった、──寝落ちしてしまったときもスリープタイマーで電気をムダにしません。お気に入りの空間で、光とともに降り注ぐ音のシャワーを体験してください。
谷村:映像と音楽にはいろいろな楽しみかたがあります。Life Space UXは機器と日常の空間をなじませることで、機器からではなく空間から自然とコンテンツが立ちのぼるような感覚で音楽や映像の世界にひたることができます。皆様も“Life Space UX”で、お気に入りのコンテンツを空間の雰囲気とともに味わう楽しさを、ぜひ一度体験してみてください。
※ 4K超短焦点プロジェクター「LSPX-W1S」は、ソニーストア 銀座のみの展示です
※ 本ページに掲載している情報は2016年1月21日現在の情報であり、予告なく変更される場合がございます