SONY

α7R II OPENED A NEW FIELD

Landscape

私が深い森の中に足を踏み入れたのは、鬱蒼と生い茂る林と地面を覆い尽くす苔の深遠なる森を写し止めるためでした。
撮りたいと思える場所を探しながら歩くこと数時間。ふいに目がくらむほどの強い光が、深い森の中を照らし出しました。
それは神々しく、つい先ほどまでの光景を一瞬で別の光景に変えてしまいました。
「この煌めく太陽の光と、それによって浮かび上がった幻想的な世界を残したい。」
ちょっと考えれば、この両方をイメージ通りに美しく残すことが難しいことは容易に判ることですが、
その時の私には、そんなことを考えている余裕はありませんでした。
とにかくこのシャッターチャンスを逃してなるまいと、ひたすらシャッターを切りました。
撮りながらファインダーの中で確認する限りは、驚くほどに美しく写ってはいましたが、
撮影後にモニターで確認してみて改めて驚きました。明部も暗部も実に克明に描写されていたのです。
そして主役の太陽の光の荘厳な煌めきまでも見事に描写してくれていました。
日本に限らず、私は世界中の自然を撮り歩いています。自然は待てばどうにかなる相手ではありません。
だから撮りたいと思えるシーンとの出遭いは、いつも千歳一隅のチャンスなんだと思っています。
決して二度目は無いその時に絶対的に応えてくれるカメラとレンズは、
自然写真家にとっては単なる道具では無く、愛しくも頼もしい相棒といえます。
これからの私の相棒はこのカメラです。

柏倉 陽介
ネイチャーフォトグラファー

柏倉 陽介氏 Yosuke Kashiwakura

1978年山形生まれ(神奈川在住)。2004年頃から独学で写真を学び始め、2007年に世界二大自然写真コンテストの一つに入賞。米国立スミソニアン自然史博物館に展示される。ほか、写真界のアカデミー賞とも呼ばれるインターナショナル・フォトグラフィー・アワードにて、アンダーウォーター部門3位入賞、自然風景・動物・人々・文化部門で入選多数。自然で暮らす人々や風景・動物など、自然分野を幅広く撮影している。

解像感とダイナミックレンジの絶妙なバランス

目指すべきは、カメラとしての
トータルな完成度の高さ

町谷:実はα7R IIのイメージセンサーに裏面照射型を採用することは、最初から決まっていたわけではありません。「R」を冠するモデルなのでより解像感を研ぎ澄ませることは決まっていましたが、さらに画素数を増やして行けば感度や処理スピードなどが犠牲になってしまいます。しかしα7シリーズは、お客様が体験したことのない新たな表現を切り開くカメラでなければなりません。我々のなかでも議論を重ね、やはり目指すべきはカメラとしてトータルで完成度の高いものであるべきだという結論に至りました。解像感だけを伸ばして何かを犠牲にするのではなく、従来機と同じかそれ以上の感度やスピードを保ち、その上で解像感を伸ばすことを開発の命題として掲げたのです。

ただし従来のアプローチのままでは不可能。そのため裏面照射型を採用し、従来の24メガや36メガといったセンサーにあらゆるパラメーターで負けないことを基準にイメージセンサーの開発を進めていきました。そしてダイナミックレンジも、そのパラメーターの一つに含まれています。「R」のモデルは風景撮影で使われることも多いので、自然を相手にするなら逆光などの明暗差の激しいシーンは避けては通れません。これまで以上に広いダイナミックレンジが必要だと考えました。

プロジェクトリーダー 町谷
世界初の35mmフルサイズ裏面照射型
センサーを開発し有効約4240万画素を実現

画素数と画素サイズの
最適なバランスを設計する

宮下:ある意味矛盾したようなミッションなのですが、今回のイメージセンサーの開発は画素数を上げながらうまくバランスをとったというのが一番大きいですね。画素数を上げることによって、どうしても一画素あたりの面積が小さくなってしまいます。画素が小さくなるとダイナミックレンジが狭くなって黒潰れや白飛びといったことが起こりがちになります。そこで、画素数と画素サイズのバランスがとても重要になってきます。解像感をはじめ、感度、スピード、そしてダイナミックレンジのすべてで高い性能を発揮できるところを探っていき、最終的には42メガでの画素サイズが最適だというのが我々の導き出した答えです。もちろん裏面照射型構造による集光率の向上も大きく寄与していますが、それに加えてイメージセンサーが画素で得られる信号電子数の違いをより細かく画として表現できるようになったことも広いダイナミックレンジを可能にした一つの要因です。

イメージセンサー開発担当 宮下

42メガの解像感を最大限に引き出すために
機構をすべて刷新

町谷:こうして42メガの裏面照射型イメージセンサーが完成したものの、試作段階でこのイメージセンサーと従来のシャッターを組み合わせてテストしてみたところ、我々が求めていた解像感にはまだ届いていませんでした。シャッター振動対策が重要なことはもちろん承知していましたが、改めて42メガという高画素にはより高い制振性能が必要だと分かったのです。そこでシャッター振動を抑えるブレーキ機構を採用した低振動シャッターを新たに開発しました。そしてシャッター振動がなくなったら今度は手ブレです。ここでも画素数が増えたことから、より高い手ブレ補正性能が求められました。手ブレ補正制御アルゴリズムを徹底的に見直し、チューニングを繰り返しました。結局イメージセンサーだけでなくシャッターや手ブレ補正機構まで新規で創り直すことになりましたが、柏倉先生が撮られた作品を見ると、我々としても一切妥協せずに42メガの裏面照射型イメージセンサーの実力を引き出すことにこだわって設計したかいがあったと本当に思いますね。

α7R II専用の低振動シャッターを新規で開発