SONY

α7R II OPENED A NEW FIELD

Railroad

突き抜けるような青空と一面に拡がる麦畑。そこにローカル線と農作業をするトラクター。
僕が思い描く、夏の北海道らしいワンシーンのひとつです。でも実際に撮ろうとすると、
シャッターチャンスは本当に極限られた瞬間になります。山手線のように次から次とはきてくれませんし、
そうそう都合良く農作業のトラクターも同じ画面の中に来てはくれません。
それに肝心の一面に拡がる麦畑と青空との配置バランスもあります。
そんな時、先ず重要になってくるのはファインダーの見え具合です。
クリアに抜けが良く僕が想像した構図を違わずに見せてくれるような広々としたファインダー。
これがダメだと、たとえ僕が想像した光景が目の前で現実になったとしても、
撮れる写真はガッカリということになってしまいます。僕は、「写真創造力」という言葉を提唱しています。
つまり行ってみたら撮れちゃった!では無く、撮る前から自分が撮りたいイメージを明確にして撮影に臨もう!
ということです。果たしてこのカメラは、本当に気持ち良く僕の写真創造力を存分に発揮させてくれました。
それから撮れた写真を見てみて唸ったのは、空の微妙な青色の諧調と麦畑の細密な写りでした。
もちろん期待していなかったわけではありませんが、それでも思わず唸ってしまいました。
これ凄いですよね。そう思われませんか?

中井 精也
鉄道写真家

中井 精也氏 Seiya Nakai

1967年、東京生まれ。鉄道の車両だけにこだわらず、鉄道にかかわるすべてのものを被写体として独自の視点で鉄道を撮影し、「1日1鉄!」や「ゆる鉄」など新しい鉄道写真のジャンルを生み出した。2004年春から毎日1枚必ず鉄道写真を撮影するブログ「1日1鉄!」を継続中。広告、雑誌写真の撮影のほか、講演やテレビ出演など幅広く活動している。株式会社フォートナカイ代表。 著書・写真集に「デジタル一眼レフカメラと写真の教科書」「DREAM TRAIN」(インプレス・ジャパン)、「ゆる鉄」(クレオ)、「都電荒川線フォトさんぽ」(玄光社)などがある。甘党。
■TVレギュラー 「ひるまえほっと てくてく散歩」 NHK総合 /「中井精也のてつたび!」 NHK BSプレミアム / 中井精也の「にっぽん鉄道写真の旅」BS-TBS / カメラと旅する鉄道風景 CS各局

写欲を喚起する感応的なファインダー

構図を追い込むための広いファインダーをつくる

中辻:42メガのイメージセンサーの搭載が決まったときから、その解像感を最大限に生かせるスペックをファインダーでも考えていました。その一つが従来よりも広い0.78倍のファインダー倍率。広大な風景を撮ることも想定し、EVF(電子ビューファインダー)で構図に入って来るものを隅々まで高精細に確認できるようにしたいと考えたのです。倍率を上げるためには、ファインダーに搭載するレンズのパワーを上げる必要がありますが、同時に光学設計の難易度も上がり収差が悪化してしまいがちです。そこで今回は4枚のレンズ構成のうち3枚を非球面レンズにして徹底的に性能を追い込み、かつ高屈折率ガラスを1枚採用して視野角も稼いでいます。

今まで小さい画面で見ていたものを大画面で見るのと同じようなものなので、本当に細かいところまで確認でき、MFでもピーキングなしでピントを追い込みやすくなっているはずです。周辺まで解像力を高めた設計に加え、ファインダー内で目を動かしても収差変動や急激に像が劣化することのないよう配慮しているので、フレーミングも格段にしやすくなっています。さらに解像感が上がったことで、どこからぼけるのかが今まで以上に把握しやすくなっています。

ファインダー開発担当 中辻

EVFの強みを生かしながら
α900のぬけ感に近づける

中辻:いかに気持ちよく撮影できるかはファインダーにかかっていると思います。そのためには、やはり没入感を高めることが重要です。例えばファインダーの中の画に集中するとき、ゴーストなどがあるとわずらわしさを感じるものです。それをできるだけ抑えるようメカ的にも配慮した設計になっています。さらにT*コーティングを施すことで照り返しの反射を極力抑えました。透過率も上がるので、デバイスが発した光がすべて目に届き、よりクリアに見えるようになっています。

また、ファインダーの「ぬけ感」についてもこだわっています。ぬけ感はレンズ自身の面精度やヘイズ(もや、かすみ)をいかに少なくできるかで変わってくると考えています。これら、面精度およびヘイズをできるだけ少なくするためにレンズ一枚一枚を徹底的に追い込んで作っています。もちろんトータルのクリアさでT*コーティングも寄与しています。実はぬけ感に関しては、α900のファインダーを目指したいというのが開発陣のなかでありました。ただ光学ファインダーは、視野角を大きくするとアイポイントが下がってしまうのに対し、EVFはその制約が少ないため、広視野角とハイアイポイントを両立しながらα900に少しでも近づけるよう意識しながら開発していきました。

最終的には人の目で
ファインダーの感応的な部分を高める

中辻:ファインダーを覗いているときの、こういう風に撮りたいという気持ちが湧き上がってくる感覚は、私自身も趣味で写真を撮っているのですごく分かります。そういう意味では、ファインダーは感応的な部分がとても大きいと思っています。やはり見た目の表現なので、普通の光学レンズのようにMTFなどの数値では表れないところを、最終的にはファインダーを見慣れた人の目によって追い込んでいく必要があります。もちろん設計段階では数字で追い込むのですが、でき上がったものは必ずしも思い描いた見え方をしていません。それを例えばコンマ何ミクロンという単位でレンズを補正し、できるだけイメージ通りの見えになるように何度も調整しながら作り上げるのです。今回我々が目指した見えに、中井先生が共感してくださったのはとてもうれしいですね。