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心をとらえるポートレート術

Vol.2 ステップアップ編

心をとらえるポートレート術 ステップアップ編

もっとポートレートを
楽しんでみませんか

気軽に楽しめるポートレートの撮影のヒントを
写真家 菅原ヒロシ氏にお聞きする「心をとらえるポートレート術」。
第2回目は、表情を美しく引き立てる光の捉え方や、
ポートレートにおけるレンズの選び方などをご紹介します。

1 ポートレートにとって
光とは?

“光で雰囲気や世界観が変わる。
一番美しいのは、その時間帯を
感じられる光”

α7R II, Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA, 35mm, F1.4, 1/640秒, ISO100

α7R II, Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA, 35mm, F1.4, 1/640秒, ISO100

写真の世界観や雰囲気は光によってつくられます。光の差してくる方向や強弱、色味、そしてどこまで光がまわり、どこに影が落ちるかなどによって作品の印象は大きく変わります。プロの現場ではライティングで光をコントロールすることもありますが、それには知識やテクニック、そして機材・設備が必要です。そこで、まずは一番身近な光源“自然光”を生かした撮影から始めてみましょう。

α99, Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM II, 45mm, F8, 1/320秒, ISO400

α99, Vario-Sonnar T* 24-70mm F2.8 ZA SSM II, 45mm, F8, 1/320秒, ISO400

自然光の場合、一番美しいのはその時間帯を感じられる光です。例えば夕方であれば、黄色味掛かった柔らかい光で、あたたかい雰囲気が生まれます。それが昼間であれば、強い光で濃い影が落ち、また違う雰囲気になります。この時間帯の光ならこんな雰囲気で撮ろうと、考えながら撮影してみましょう。最初のうちは、光の向きや当たり方が被写体にどう影響するか分かりづらいものですが、写真集や絵画などを見て勉強するのもおすすめです。

“まずは手軽に
やわらかい光で撮れる
ノースライトを試してみよう”

α7R II, FE 85mm F1.4 GM, 85mm, F2, 1/200秒, ISO400

α7R II, FE 85mm F1.4 GM, 85mm, F2, 1/200秒, ISO400

自然光での撮影で迷ったら、逆光や半逆光を試してみてください。光が被写体を包み込み、印象的な写真に仕上がります。屋外撮影で直射日光が強すぎる場合は、木の下や軒下など撮影する場所を移動しましょう。室内撮影では、自然光が十分に入ってくる窓際、特に、柔らかな光が室内全体にまわる北側の窓から入ってくる光(ノースライト)での撮影がおすすめです。絞りを開けて(F値を小さくして)逆光で撮るだけでも、ふわっとした雰囲気が表現できます。顔が暗く写る場合は、背景が白とびしてもいいので、露出を明るくしてみましょう。

2 “おうちスタジオ”で
こだわり写真を撮ろう

スタジオで撮るようなこだわり写真を、家でも手軽に楽しむ方法をご紹介します。特別な機材やライティングの知識がなくてもできるのでぜひ試してみてください。

α7R II, Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA, 55mm, F7.1, 1/60秒, ISO200

α7R II, Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA,
 55mm, F7.1, 1/60秒, ISO200

この作品は、直射日光の入る窓に紗幕(しゃまく:薄い布地でつくられた幕)を垂らして撮影したもの。光を透過するものであれば、トレーシングペーパーなどでもOK。ライティングは不要です。紗幕は、余計なものが写りこまないようにする効果もあり、生活感を隠してくれます。あとはF値を小さくして明るく撮れば、ふんわりとした写真に仕上がります。

3 レンズの選び方

“相手との距離感から、
最適なレンズを考えよう”

[ 被写体との距離感の違い ]

※バストアップ撮影の場合

人物撮影では、被写体となる相手との距離がコミュニケーションに影響し、結果的に作品に表現されることとなります。そこで、レンズの焦点距離を目安に、被写体とどのくらいの距離感で撮影するか考えながらレンズを選んでみましょう。

中望遠 85mm前後

ポートレートで多用される85mm前後の中望遠レンズは、被写体と付かず離れずのちょうどよい距離感を保つことができ、背景もぼかしやすく人物が引き立ちます。

標準 50mm前後

50mm前後の標準レンズは、人の目の画角に近いと言われ、見たままの自然でリアルな人物像を撮りたいときに有効です。

準広角 35mm前後

35mm前後の準広角レンズは、背景をぼかそうとすると被写体とかなり近づかなければならず威圧感を与えかねません。しかし、引いて撮ることで周りの風景も一緒に収めることができ世界観を切り取るのに向いています。

中望遠 85mm前後 人物を印象的に際立たせる
中望遠レンズ

α7R III, FE 85mm F1.4 GM, 85mm, F1.6, 1/80秒, ISO400

α7R III, FE 85mm F1.4 GM, 85mm, F1.6, 1/80秒, ISO400

これはFE 85mm F1.4 GMを使ってF1.6で撮影したものです。絞りを開放付近で撮れば、当然ぼける範囲が大きくなります。その際に、ピントの合った部分がしっかり解像していないと、全体的にぼやけた印象になってしまいます。このレンズは、柔らかなぼけとピントの合った部分の解像感が素晴らしく、好きなレンズの一本です。F1.6ともなると、背景までの距離がわずかでもぼけるため、このようなシーンでも立体感が生まれ被写体が際立ちます。

α7R II, FE 85mm F1.4 GM, 85mm, F1.4, 1/1600秒, ISO400

α7R II, FE 85mm F1.4 GM,
 85mm, F1.4, 1/1600秒, ISO400

この写真は、ちょっと引いて全身を撮ってみました。これも開放F1.4で撮ることで、背景の建物をぼかして被写体を際立たせています。さらに、ガラスの壁を取り込み前ぼけを生かすことで構図を整理しています。

α65, Planar T* 85mm F1.4, ZA 85mm, F1.4, 1/200秒, ISO200

α65, Planar T* 85mm F1.4,
ZA 85mm, F1.4, 1/200秒, ISO200

AマウントのPlanar T* 85mm F1.4 ZAで撮影した作品です。こうした逆光シーンでは、オートモードで撮影すると顔が暗く写ってしまいます。しかしαの場合、多くのモデルで電子ビューファインダーを搭載しており、事前に写りを確認できるので、M(マニュアル露出)モードで絞りとシャッタースピードを調節すれば最初からイメージ通りに撮影できます。このときは、窓際に立ってもらうだけで特別なセッティングは何もしていません。

α7R II, FE 85mm F1.8, 85mm, F1.8, 1/5000秒, ISO200

α7R II, FE 85mm F1.8, 85mm, F1.8, 1/5000秒, ISO200

旅行でスリランカのジャフナという都市を訪れたときの一枚。たまたまボクシングの練習風景を眺めていると彼が話しかけてきたので、ちょっと構えてみてくれと伝えて撮影したものです。旅先では、いい瞬間に出会ったときに、すぐにシャッターが切れることが重要です。レンズは、携行にも負担にならず、写りも信頼できる一本をあらかじめ装着しておくことをおすすめしたいです。FE 85mm F1.8はとても軽く、持ち歩きに最適。ぼけもきれいで写りがいいのでとても重宝しました。

α6000, E 50mm F1.8 OSS, 50mm, F1.8, 1/200秒, ISO200

α6000, E 50mm F1.8 OSS, 50mm, F1.8, 1/200秒, ISO200

冬の太陽は低く、斜めからの光はどこかヨーロッパを思わせます。夕方近くになり、わざとフードを外して逆光をそのままレンズで受けるように撮りました。前景と背景の緑に輝きを持たせ、フレアが柔らかな雰囲気を作るように、また被写体にかかり過ぎないように、電子ビューファインダーで確認し調整しながら撮影。E 50mm F1.8 OSSは、APS-C対応レンズなので35mm判換算で75mm、開放F値が1.8と、ぼけ表現にも期待のできるレンズです。

α7R III, FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 115mm, F2.8, 1/2000秒, ISO200

α7R III, FE 70-200mm F2.8 GM OSS, 115mm, F2.8, 1/2000秒, ISO200

FE 70-200mm F2.8 GM OSSは、かっちりとした描写の中にも、その写りから豊かさと柔らかさを感じられる、僕の好きなレンズのひとつです。ここでは人物と背景の大きさのバランスから、115mm相当で撮影しました。太陽の光が木々の枝を抜けてたくさんの陰影を作っていたため、撮影の難しい環境でしたが、このレンズは見事に深い描写をしてくれています。

標準 50mm前後 見たままの自然な
雰囲気を残す標準レンズ

α7R II, Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA, 55mm, F1.8, 1/800秒, ISO200

α7R II, Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA, 55mm, F1.8, 1/800秒, ISO200

この作品は、撮影を通じて被写体の方に自身と向き合ってもらうことがテーマ。そこで、見たままの素直な画角で撮影でき、相手に圧迫感を与えない小さな標準レンズSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAを選択しました。自分自身の気持ちや時間に向き合えるように、撮影中は音楽をかけず、話しかけることもせず、静かな状況を作りました。髪の揺れやボケを生かしつつ、顔にはピントを合わせることで、被写体の持つしっかりとした意志を写しとりました。

α7R III, Planar T* FE 50mm F1.4 ZA, 50mm, F1.4, 1/500秒, ISO200

α7R III, Planar T* FE 50mm F1.4 ZA, 50mm, F1.4, 1/500秒, ISO200

Planar T* FE 50mm F1.4 ZAと出会うまでは、あまり50mmのレンズを使ってこなかったのですが、このレンズを手にしてから変わりました。しっかりとした描写と立体感ある色。そして溶けている背景のぼけも心地よく、逆光気味な光の中で、なんとも言えないトーンの写真が撮れました。寒い森の中に光が差し、揺れる髪が逆光で綺麗に輝いています。50mmのレンズが生む被写体との距離感は、お互いが「ちゃんとそこにいる」という安心感を作ってくれます。

α7R III, FE 50mm F1.8, 50mm, F1.8, 1/60秒, ISO400

α7R III, FE 50mm F1.8, 50mm, F1.8, 1/60秒, ISO400

FE 50mm F1.8で撮る写真のトーンからは、どこか懐かしさを感じさせてくれます。描写が柔らかいからと言ってしまえばそれまでなのですが、これは確実にこのレンズの個性です。さらに、軽くコンパクトなので、フルサイズ機の日常使いにいいと思います。

準広角 35mm前後 被写体とともに世界観を
切り取る準広角レンズ

α7R II, Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA, 35mm, F1.6, 1/50秒, ISO400

α7R II, Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA, 35mm, F1.6, 1/50秒, ISO400

この作品は、人物だけでなく夕方の幻想的な光に包まれた世界観を切り取りました。35mmの良さは、周りの風景や空気感を取り込めること。特にDistagon T* FE 35mm F1.4 ZAは、準広角の画角で世界観を表現しながら、美しいぼけによって人物も際立たせられるのが魅力です。

α7R II, Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA, 35mm, F2.8, 1/100秒, ISO125

α7R II, Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA,
 35mm, F2.8, 1/100秒, ISO125

35mmのレンズでバストアップを撮るとなると、被写体との距離がとても近くなります。家族や友人であれば、この近さが一体感が生み出します。この距離感でこれだけぼけるのはF1.4の大口径ならでは。顔ではなく手にピントを合わせることで、人物像よりも楽しい雰囲気そのものを表現しました。

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