Special Interview

心ふるえる、癒される……あの映像の感動が甦る。
2000年の第1作以来、毎年コンスタントにリリースを積み重ね、シリーズ累計350万枚のセールスを記録しているリラクシング・ミュージック・コンピレーションの決定版「image」のスペシャル・チャンネルが、Music Unlimitedに初登場!
15周年を機に実現したチャンネル開設を記念して、アーティストとして、そして「live image」音楽監督として、シリーズスタート当初から深く「image」に関われている羽毛田丈史さんのスペシャルインタビューをお届けします。

———人気コンピレーション・シリーズ「image」が2015年で15周年を迎えようとしています。
羽毛田さんはその看板アーティストの一人でもあり、そのライヴ版である「live image」では音楽監督もおやりになってきて、あらためて「image」の魅力がどんなところにあるか、教えていただけますか?まずそのスタートの経緯はどんなものだったのでしょうか?
最初CDで始まったんですが、そのライヴでは音楽監督を依頼されたわけでして、初めてのことだし、右も左もわからずという感じでした。収録アーティストもお互いジャンルも違うし、この企画がなければ一緒にやることなんてないと思っていた人たちがライヴでは一同に会したわけですよ。「image」という映像音楽みたいなところで括られた音楽家たちが集まったわけですから、これは面白いことが出来るんじゃないかということになったんです。
———「live image」では音楽監督としてどんなところに魅力を感じておいでですか?
「live image」はステージ上ではバック・ミュージシャンが同じで、フロントに立ついろいろなジャンルのアーティストたちを伴奏するという形になっているのが、一番大きな特色だと思います。
通常のフェスだと、それぞれのアーティストが自分のバックバンドを連れてくるので、いろいろなジャンルの人がいたとしても、それが横で繋がることがあまりないと思うんですよね。インストルメンタル音楽の世界ではそういう繋がりはほとんどありえないことなんですよ。たとえばバンドネオンの小松(亮太)くんであればタンゴという音楽をやるにはその音楽に精通しているミュージシャンが必要ですし、クラシックを母体にしている人はクラシックに精通している人とでないと出来ないし、ラテンやジャズ、フュージョンも同様で、専門性の高い音楽はみんなそれぞれの音楽に長けた人たちだけで演奏することが多いです。
———「image」を実演するのはジャンルレスなだけに音楽をひとつのものとして聴かせる部分では大変なことも多かったのでしょうか?
ありましたね。一番最初に苦労したのはそこでした。ジャンルが多岐にわたっている上、専門性の高いジャンルのミューシャンがそろっていたので。
歌だと、あくまで主役は歌なので、そのジャンルがいろいろだったとしても、ある程度の伴奏は出来るんですよ。ところが「image」の場合、実力のあるミュージシャンたちを集めて、どんな音楽でも対応できるオーケストラを作らなければならなかったという。でも、それが出来ているのか、どのメンバーも最初、よくわからないままやっていたと思うんですよ。いつもの自分のメンバーとではないし、いつものステージでもないわけだし。また、いつもの自分のバンドが出す音と違うところで弾かなければならないし。
でも、そういう部分で、ステージの音楽としては統一性が出てきて、それがお客さんに伝わったわけです。そこに、いわゆる「image」的な音楽が出来上がったと思うんですよ。
———なるほど、「image」的な音楽ですか。
ええ、それがお客さんにとっては非常に聴きやすく、またそれにより、その音楽に入りやすかったりしたと思うし。ステージをみるとゴンチチがいたり、小松くんがいたり、加古(隆)さんがいたりして、ただそのアーティストたちがフェスみたいな形でそれぞれのバンドを伴ってやってきて、それぞれの音楽を披露しても、そこまで聴きやすくはならなかっただろうし、まったく違うものに聴こえたと思うんです。やはりバックのバンドが全部一緒だったというところで、お客さんには聴きやすく、いろいろな音楽に入れるように提示できたのでは、と思うのです。
  • image

  • image2

  • image3

  • image4

  • image5

  • image6

  • image7

  • image8 ★

★Music Unlimitedにて配信中
※パッケージ収録曲のうち、権利の関係により一部配信されていない楽曲があります。ご了承ください。
———ある意味「image」の名のもと、前例の無い音楽の形を提供したわけですが、そのことが次の年、そして翌年へと続く大きな要因となっていったわけですね。
1回目の爆発的な反響のおかげでスタッフが次もいけるぞ、2年目もやらなきゃ、と。1回目の時というのは、出演者たちは、あまりに初めてのことが連続していたので、そんな実感がなく、手ごたえを感じている余裕もないし、何でこんなにうけているのか、わからないという状況だったんですよ。どこ行っても満員で最後はスタンディング・オベーションで、僕なんかはかなり戸惑っていましたし、ほとんどの人がそうだした。「なんでみんなこんなに喜んでくれているんだろう」と。それで2年目を迎えるにあたり、スタッフは冷静に状況を見ていて、お客さんに対し、いいものが提示できると思ったんでしょうね。ツアーもどんどん規模が大きくなっていき、最初東名阪だったのが2年目から全国へという具合に。今思えば、いろいろな意味ではじめの立ち上げは無茶だったりしたんですけど、そういう前例のない音楽の作り方をしていたから、そのことが推進力になって、結果として新しいものが生まれたということなんでしょう。
———その最初の反響から、「image」がここまで長く続くと思っていましたか?
僕は「image」のものすごい反響を得たという実感がわくのに10年ぐらいかかったんですよね。それまでは毎年これで終わりだなと思ってやっていましたよ、どこかで流行りものだからとか、毎年イベント的なものとして思っていたので。10年になって、こういう風にお客さんが支持してくれているんだなと認識できてきたという。それで、11年目からはこういうところをさらに伸ばしていこうみたいな。
———そもそも「image」の音楽のジャンルレスな魅力はどんなところにあると思いますか?
僕らは音楽をその特性やジャンルで考えがちなのですが、「image」の音楽って、最初にCDや映像ありきで、映像音楽としてその時にみんなの耳にとても馴染んだ曲っていうのがあって。基本的にはインストルメンタルなんですけど、時にヴォーカルものも入ってくることがあったりと、たとえいろいろな音楽性があっても、それが聴く人にとって全然抵抗のない感覚で聴けるというのが特徴です。最近、音楽の聴き方自体がボーダーレスになってきているように思うんですよ。昔は「ロックしか聴かない」とか「ジャズしか聴かない」なんて人も多かったんですが。自分でもiTunesでスクランブルに音楽を聴く習慣があって、J-POPのあとに、いきなり1940年代のジャズが出てきて、なんていう風です。
ドラマの音楽の制作現場でも同じようなことが起っていて、以前はピアノ系とか、ストリングス系とか、ロック系とか、統一感のある音楽を提供してきたものですが、今は打ち込みもののあとに生オーケストラがきたり、へヴィ・メタル風な曲がかかったと思えば、弦のバラード曲がかかったりと、ノー・ジャンル化が進んでいますね。自分には中学生の娘がいるのですが、携帯に入っている曲目リストを見ると、アリアナ・グランデやファレル・ウィリアムスみたいな洋楽の一番新しいものの他、ビートルズ、カーペンターズ、ももくろ、僕の劇伴音楽、ゴスペルとか入っていて、時代もジャンルも関係ない聴き方をしているのがわかるんですね。
———ボーダーレスな音楽志向が強まる中で、「image」のお客さんは特にジャンルにとらわれず、自由な聴き方をされている傾向が強いのでしょうか。
それはありますね。「image」は結局お客さんに作られているというところが大きくて、そういうものって自分が知る限りでは他にあまりなくて。音楽って基本的にアーティストありきの世界ですから。アーティストがあって、そこにファンがついてきて、という。僕らの場合、来てくれている人たちが作っていってくれて、アーティストが後からついて行っているという。10年超えたあたりからはそのことに自分の使命みたいなものを感じて、「この曲、「image」のお客さん、絶対聴きたいんじゃないかな」となったら、いかに喜んでもらえる楽曲選びやアレンジをするかをまず考えたりしますし、そこにジャンル云々は関係なくなりますよね。そういう意味では「image」って、お客さんが作ってきた音楽の世界であり、コンサートなんだなと思います。
———かつては「image」と同類のコンピレーションが他社でも出ていたと思うのですが、現在はシリーズが続いているものはありませんね。「image」のシリーズが最高のクオリティをキープし、長く続いてきた理由は何でしょう?
「image」でずっと心がけていることがあって、それは楽曲の選択と演奏力。そこの質だけは落とさないようにしています。楽曲の完成度はすごく大事ですし、そうでない曲はアレンジで完成度を高めたり。それからミュージシャンの質。単純な曲や誰でも演奏できるような簡単な曲をミュージシャンとしての技量が高い人が演奏するのではまったく説得力が変わるんですよ。あと、コンピレーション・アルバムとライヴがリンクしていることが大きいでしょうね。完成度の高い楽曲を選びつつ、新たに収録された曲を新曲としてライヴでやっていかなければならなかったり、さらに新しいアーティストを迎えたりとか。また、その新曲を聴いた人が「あ、このドラマ見ていたよ」みたいな反応を示すことは映像音楽主体の「image」ならではの現象でもあります。
———いろいろ「image」の音楽の世界観を語っていただきましたが、Music Unlimitedで「image」チャンネルが出来るということで、より広がる期待感もあるのですが、いかがでしょうか?
チャンネルとして出来るというのはいいですよね。「image」ってジャンル分けが明確じゃなかったりするじゃないですか。New Ageだったり、Easy Listeningだったり。宮本笑里さんはクラシカル、葉加瀬太郎くんはNew Age、でもそのアルバム単位ではまた別のジャンルになっていたりとか。こういうインストルメンタルのアーティストの受け皿みたいな形として「image」というジャンルになっていって、ロックやジャズと同じようにチャンネルとして存在するようになるといいなと思いますし、「この音楽?あ、「image」でしょ」っていわれるようなジャンルを定着させる上でものすごく意義があると思いますね。
———「image」チャンネルのスタートに際し、羽毛田さん自身、こんな風にしてみるといいのでは、というアイデアは何かありますか?
楽曲にテキストのようなものをつけられるといいなと思います。2014年に自分のソロ・ライヴを始めたんですけど、演出家の人に言われて、曲を演奏する前にその曲の成り立ちや作曲された背景なんかを話したら、演奏後のお客さんの反応が全然違ったんですよ。だから「image」チャンネルでは、そういう情報みたいなものが、あったりするとすごく面白いと思います。
つまり映像を思い浮かべられるような情報を、実際に映像が流す必要はなく、こんな映像の場面につけた曲です、みたいなコメントがあるだけで、聴く人は自分から想像して聴きますよね。
たとえば僕の“地球に乾杯”という曲があるんですけど、地球に生きている人々の営みをテーマにしたドキュメンタリー番組の音楽で、そこでは山岳に住む人々、アフリカの灼熱の大地や赤道直下に住む人々みたいないろいろな人たちが生きているという地球上の出来事を扱っていた、ということを伝えると、聴く人はいろいろなことを想像すると思うんですよね。特に「image」チャンネルだから、そういう聴き方をしてくれるともっと楽しめるし、楽しみ方が変わると思うんですよ。
———最後に。15周年を迎える「image」の今後の展望やご自身としてのかかわり方などをお聞かせください。
2015年で15周年を迎えられるのは感無量ですね。CDも15枚ですし。自分でやっている仕事でひとつのことが15年続いたものってないので、アーティストも含めて、思いもかけず、自分の中で大切な仕事になっているので、20周年、30周年とやっていければいいなと思います。
またお客さんも2世代から3世代になっていることもあるんですよ。おばあちゃんからその娘さんとそのお子さんのお孫さんでいっしょに来てくれたりとか、アーティスト側でも宮本文昭さんと笑里さんの親子がステージに立ったりとかありますし、そのうち葉加瀬くんの娘さんがヴァイオリン弾いたりすることもあるかもしれないですよね。そういう世代がどんどん進んで横の広がりも出てくればいいかな、と思っています。
この15周年を境にして、自分のソロ・ライヴを「image la plume」という名前をつけて「image」のひとつの派生したコンサートという位置づけで始めたんですよ。それ以外にも「live image nouveau」とか、来年「live image cinema best」というのもやるんですけど、そういう感じでいろんなアーティストと共演したり、視点をかえた活動もやってゆきます。あとは「image」関連の人たちがいろいろなところで活躍してゆくみたいなことが、どんどん出来てくれば「image」というジャンルとして確立できたりとか、楽器をやっている後進の人たちが「image」で弾いてみたいと、ちょっとした憧れの場になったりとか、そういう風になっていくといいなあ、と思っています。
interview & text by: 馬場雅之
プロフィール

羽毛田丈史 Takefumi Haketa

1960年5月23日生まれ。
ドラマや映画など、映像音楽の作曲を中心に、ゴンチチ、葉加瀬太郎、中島美嘉、JUJU、高嶋ちさ子など、ジャンルを問わず幅広いアーティストのプロデュース、アレンジも手掛ける。
最近作は、NHKスペシャル「人体〜ミクロの大冒険」「病の起源」「宇宙の渚」などのドキュメンタリー番組の音楽、映画「銀の匙 Silver Spoon」、TBS日曜劇場「とんび」、日本テレビ「明日、ママがいない」などのドラマ音楽を手掛けている。
2001年から毎年春に開催されている、葉加瀬太郎、高嶋ちさ子、ゴンチチ、小松亮太など国内外のアーティストが多数出演するコンサートツアー「live image」の音楽監督とピアニストを務めている。昨年までの13年間で180公演以上、累計50万人動員の人気コンサートとなっている。コンサートでは、音楽監督だけではなく、作曲家として最新の作品を映像とともに演奏している。
2014年、live imageの感動をより身近に、そして気楽に音楽を感じてもらいたいと、live imageの姉妹シリーズとしての初ソロコンサート「image la plume」を立ち上げた。

http://www.haketa.jp/

imageシリーズ15周年記念企画
image 15

2015年2月11日(水)発売予定
[初回生産限定盤] Blu-spec CD2+15周年記念ボーナスCD
SICC30200〜30201
15周年記念ボーナスCD 内容:imageベストCD “15”曲入り

[通常盤] Blu-spec CD2
SICC30202